VOLTECHNO(ボルテクノ)

ガジェットとモノづくりのニッチな情報を伝えるメディア

2024年7月7日

トルクスビットとは【工具の特徴・選び方解説】

トルクスビットとは【工具の特徴・選び方解説】

高いトルク伝達効率を持つトルクス

トルクスビットとは、トルクス形状のビス・ボルトを締結する作業に使用するビットです。

トルクスは1967年 米国のテキストロン・カムカー社が開発した六角星型のネジ頭の規格です。英語では”Torx”と書きますが、同社の商標・ライセンスを回避する場合には “ヘクスローブ” の名称が使われます。

トルクスのネジ頭形状はマイナス・プラスねじでは解決できなかった「ネジ頭が潰れる」問題を解消するために開発されました。頭が潰れにくい特性があり、高トルクが必要な部品の締結に使われます

トルクスは米国製の産業製品にも広く採用され、Apple製のコンピュータは古くからトルクスを採用しています。

トルクスは従来の六角穴より駆動角が小さいため、加えた力に対する高い伝達効率を持ち、六角穴よりもネジ頭形状を小さくできる利点があります。

一般的な六角穴形状と比較するとトルクスは駆動方向(回転運動)とネジ頭に加わる力の角度差が小さいため効率的にネジを回すことができる。
引用 : ベッセル カタログ

トルクス形状のネジ頭にはトルクスビットを使用するのが一般的ですが、横幅が一致すればマイナスドライバーを使うこともできます。

日本ではいたずら防止のネジとして普及、しかし効果は形骸化

日本におけるトルクスねじは、00年代頃まで知名度・普及度共に高くなかったため、いたずら・分解防止のネジとして家電や精密機器の防止用のネジとしても採用されました。

しかし現在においてはトルクス形状のビットやドライバーはホームセンターや100円ショップ等でも手軽に入手できるようになったため、分解防止の効果は形骸化しています。

現在のいたずら防止のネジ頭形状としては、ペンタロビュラやTA型・トライウィング・Y型など六角形以外をベースとした形状が採用されます。

凹形状のセキュリティトルクス (Torx TR)

分解防止機能を持たせたトルクスの派生形状として”セキュリティトルクス”があります。別名ではTorx TR・耐タンパトルクスとも呼ばれ、ネジ頭の中央に丸い突起が付いており、凹形状のトルクスビットを使用するのが特徴です。

上が通常のトルクスビット、下がセキュリティトルクスビット

真ん中の突起によって通常のトルクスビットやマイナスドライバーが差し込めない仕様になっており、情報機器や家電の「製品設計や管理上分解していない場所」に使用されています。

ただしこのセキュリティトルクスについても標準でくぼみのついた形状のトルクスビットが広く普及していることもあり、いたずら防止に使う用途としては形骸化しています。

写真はANEXのカラー精密ヘクスローブビット。国内ではセキュリティトルクスが容易に購入でき、通常のトルクスネジにセキュリティトルクスを使用することも可能、

凹凸が逆の “E型トルクス”

トルクスの派生規格として、ネジ頭とビット形状の凹凸を入れ替えたE型トルクスもあります。英語圏では外側を表す英単語の ‘External’ の頭文字を添えて”E Torx”と呼びます。

E型のトルクスは車産業で多用されているネジ頭形状です。車産業以外での採用例はほとんどありませんが、国産車・輸入車分け隔てなく採用されているため、車整備に関わる方は複数サイズを準備しておくのがおすすめです。

トルクスの後継規格 ”トルクスプラス”

トルクスの後継規格としては “トルクスプラス”が存在します。

トルクスプラスはトルクス以上に鋭い駆動角を持ち、駆動角0度による高い伝達効率を実現しているのが特徴です。原理上カムアウトが起こらないネジ頭形状であり、ネジ頭形状をより小さくしてビットの摩耗寿命を倍近く伸ばします。

従来のトルクスビットとも互換性があるので、分解・再組立等の保守作業で支障が出ることもありません。

トルクスプラスの耐タンパ型 “ペンタロビュラ”

トルクスプラスに耐タンパ性を持たせた形状がペンタロビュラです。別名”Torx Plus 5-Point” “IPR” “Torx Plus 5point”とも呼ばれます。

ペンタロビュラは名前の通りの5角星形状が特徴で、こちらのビットはホームセンターのような一般的な工具購入販路での購入が難しく、いたずら防止として有効です。

トルクスビットまとめ

トルクスビット

高いトルク伝達効率を持つ。トルクスの派生規格も多数存在する

良い点
  • トルク伝達効率に優れる
  • ビットの入手性が良い
悪い点
  • トルクスの派生が多く複雑

トルクスビット

トルクスプラス

E型トルクス

ペンタロビュラ

Return Top