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マキタは自律走行ロボットの開発に着手する計画がある?
マキタは2024年夏に、株式会社マキタ採用情報サイトのキャリア採用情報ページ上で「自律走行ロボットのソフトウェア開発」に関するキャリア採用情報を追加しました。
①自律走行ロボットのソフトウェア開発
【必須】
※下記のいずれかに関するLinuxOS,RTOSソフトウェア開発の実務経験5年以上
・ロボット走行駆動モジュールのソフトウェア開発
・自己位置推定機能のソフトウェア開発
<希望する人材>
・SLAM、各種センシングモジュールに関する知識がある方
マキタは電動工具メーカーとして電気系の分野でモータやバッテリの回路設計やそれに伴う組込ソフトウェアエンジニアの募集は行っていますが、自立走行ロボットのソフトウェア開発と称して、エンベデッドLinux向けのソフトウェア開発経験を持つキャリア人材の募集は初めての事例と考えられます。
SLAMとはセンサを駆使してマップ作成と位置検出を実現する技術
SLAM(スラム)とは、サイマルテニアス ローカライゼーション アンド マッピングを略した単語で、直訳すると「地図と位置の同時推定」です。より砕いて説明すると、「動きながら周囲の地図を作って自分の位置を確認する技術」となります。
SLAM は電動工具市場に馴染みのない技術ですが、身近な例としてロボット掃除機がSLAMを搭載しています。
ロボット掃除機では、SLAMが搭載されたことで部屋マップの作成と自己位置の検出が可能になり、効率の良い清掃作業を行えるようになりました。さらに、部屋エリア認識や進入禁止区域などソフト的な付加価値も実現しています。
電動工具メーカーが展開する製品においても、ロボット芝刈り機のような自立走行を行う製品にSLAMを搭載することで、非効率的なランダム走行モードに頼らず効率的なルート走行を実現できるようになり、同面積あたりの作業時間を減らし1充電の作業面積を増やせるなどのメリットを得ることができます。
ロボット製品はマキタの新事業の柱になり得るか
電動工具の市場規模を見た場合の話ですが、筆者の見識として、これ以上の電動工具市場の拡大は限定的であり、脱エンジンとしてところ伸びているOPE分野に関しても、バッテリー技術の限界から見える範囲における売上規模の頂点がうっすらと見え始めている状況と見ています。
OPEはバッテリー技術の向上によって市場規模を飛躍的に伸ばせるポテンシャルはあるのですが、次世代の二次電池が登場し電動工具メーカーが気軽に採用できるようになるのは、どんなに早い場合でも2020年代末と想定しています。
マキタは電動工具事業とOPE事業を収益の柱とし、そこに、新しい事業の柱を模索し始めている状態なのかもしれません。
単発製品の開発案件であれば、SLAM技術開発を得意とする企業へ開発委託を行えば済む話ですが、マキタがロボット自立走行の経験を持つ人材を確保する狙いとしては、自社製品へのロボット自立走行搭載技術を確立し、新たな事業の柱を見据えているためではないか、と想定しています。
最近のマキタは、ロボット芝刈り機・産業用ロボット掃除機・ロボット鉄筋結束機など自立的に走行して作業を行う充電式製品をいくつか開発しており、今後、SLAMによるインテリジェントな自立走行を搭載するロボット作業機の必要性は高まってくることを見据えたものと考えられます。
市場の傾向としても、緑地管理における維持コストの削減や人材不足によって、屋外での自立走行ロボットの需要が増しており、道路公団であるNEXCO各社などでは高速道路の緑地管理としてロボット掃除機の採用を進めています。
ちなみに、国内業界における自立走行ロボット開発の動向としては、園芸機器を開発するやまびこが自立走行型の草刈機の開発を進めています。
2023年開催の農業Weekではラジコン草刈機 RCM600をベースとする製品にLiDARを組み合わせた自立走行システムを搭載したコンセプトモデルを展示しており、担当者に話を聞いたところ制御システムは内製で設計を進めており、試行錯誤しながら開発を進めているとのことでした。
昨今の電動工具メーカーは、電動工具のみに留まらずバッテリーとモーターを搭載する製品を幅広く取り扱うことで売上拡大を目指しています。そういう意味で、SLAM技術による自立走行ロボットの開発は、今後大きな事業として化ける可能性があるのかもしれません。