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マキタは構想中の新型大容量バッテリーに挑戦するか、超大型充電式工具の実現性

マキタは構想中の新型大容量バッテリーに挑戦するか、超大型充電式工具の実現性

本記事は、株式会社マキタ及び関連会社が保有する産業財産権の情報を解説・紹介するものであり、新製品発売を保証するものではありません。株式会社マキタ及びマキタ取扱店へのお問い合わせはお控えください。

マキタが特許内でさらに大きなバッテリーの構想を示唆

マキタは、2023年3月に大容量の72Vバッテリーを搭載する新型充電式電動工具の構想を含む特許を出願しました。

本特許は充電式インパクトレンチの高トルク化を実現するための内容ですが、その実現方法として18Vバッテリーを4本装着する方法や40Vmaxバッテリーを5本装着する方法、そして72Vバッテリーや80Vバッテリーを4本装着する方法を特徴としています。

例えば、特許に記載されている製品仕様の一例に見ると、定格電圧72Vバッテリーパックを1つ装着する仕様の充電式インパクトレンチの構想があるようです。

ただし、本特許の意匠図はシンプルなもので構想段階であり、本特許出願時点でも相当の初期段階にあると考えられます。2025年1月の時点においてもこのバッテリー構想に対応する関連特許や商標、UL認証などは確認できていません。

他社の大型充電式電動工具に追従できるか

2025年の現在において、72Vクラスの大型充電式電動工具で最も普及を進めているのはミルウォーキーです。

このクラスで先行するミルウォーキーはバッテリー面でも先行しており、MX FUELバッテリーのHD812は72V-12.0Ah (864Wh)もの大容量を実現しています。マキタ80Vmaxの最大容量となるBL4080F×2の72V-8.0Ah (576Wh)であることから、バッテリー仕様の違いによる性能差も発生してしまっている状況です。

また、製品展開数に関してもマキタ80Vmaxシリーズは6モデルですが、ミルウォーキーMX FUELは25モデル(海外市場)の展開を行っており、パワートロウェルやパイプねじ切り機などの製品展開も含め大型電動工具の分野に関してはミルウォーキーが圧倒的な製品数でシェアを獲得しつつある状態です。

とは言え、この辺りはマキタ40Vmaxの小型製品から大型製品まで使用できる汎用性の強みなどもあり、販路や商圏の違いも絡んでくるので、どのようなバッテリー方式が最適だったのか結論付けられるのは相当先になるのですが、少なくともマキタが新しく72Vや80Vバッテリーシリーズを展開すると、大型充電式電動工具の分野に一波乱起きることは間違いありません。

マキタの開発傾向を考えれば不思議ではない72Vシリーズ

現行のマキタ充電式シリーズにおける高出力大容量製品に関しては、40Vmax(XGT)とその拡張シリーズである80Vmax(XGTx2)シリーズがその役目を担っていますが、大型電動工具が必要とするバッテリーは容量や装着時の堅牢度など強固なバッテリーが必要であり、小型電動工具にも用いられる40Vmaxシリーズを大型製品に適応するには若干の不安があることは否めません。

そういう意味で、昨今の電動工具市場は貪欲に電源コード式電動工具や園芸機器市場、エンジン機器市場を電動化して取り込まないと成長が叶わない市場になりつつあるので、他社が勢力を拡大する中、マキタ程の企業が眺めているだけと言うのも経営判断的に無理な話だと思っています。

マキタの製品開発傾向としても、2017年にHiKOKIがマルチボルトを展開した際はその2年後の2019年に40Vmax(XGT)シリーズの展開を行っており、マキタの製品開発傾向は市場で存在感のある製品があれば積極的な追従を行う企業であるため、本当に72Vシリーズを展開したとしても不思議ではありません。

とは言え、40Vmaxとの兼ね合いや、64Vmaxは一体何だったのか、背負い式のポータブル電源は終わりにするのかなど製品シリーズの展開として色々と疑問もあり、またバッテリーシリーズを増やすと開発・流通リソースの不必要な消費や在庫の問題なども発生するので、本当に40Vmax以上のバッテリーシリーズ展開を行わなければいけないのかは時間をかけた検討が必要になると思っています。

さらに、このクラスの電動工具をバッテリー化するのは現状のリチウムイオンバッテリーでは圧倒的に容量が足りていないので、エンジン発電機とのコストや作業時間の比較で本当に優位となれるかは微妙なのですが、いざ次世代二次電池のバッテリー展開が始まった時に活かせる製品が無ければ出遅れてしまうため、そういう意味で少し気の早い段階でも製品化を行わなければいけないのは仕方のないことだとも思っています。

仮にマキタが72Vシリーズに参入する場合においては、大容量で高出力な点もあるのでかなり息の長い製品シリーズになると想定しています。リチウムイオンバッテリーに変わる次世代電池が普及したとしても、4.2Vの電池になるとは限らないので、万が一 5V系の電池になっても同じバッテリーシリーズで使えるように良い感じの駆動回路やファームウェアアップデートによって、将来的に現行のリチウムイオンバッテリー以外のバッテリー動作も見据えた製品仕様にしてほしいなと考えています。

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