DIYユーザー憧れのプロ向けブランド電動工具ですが、安い価格で売られている電動工具との違いについて知らない方も多いと思います、今回はそんなプロ向け、DIY向け、格安ブランドの違いについてのコラムです。
目次
ホームセンターや通販サイトで存在感を増す格安電動工具ブランド
ホームセンターへ電動工具を選びに行くと、マキタやHiKOKI(旧日立工機)を始めとしたプロ向けブランドが数多く展示されていますが、その横には半額以下のプライベートブランドやノーブランドによる電動工具も陳列されています。
さらに通販サイトのAmazonやディスカウントストアのドン・キホーテの工具コーナーには、中国メーカーのインパクトドライバなど数多く陳列されており、ユーザーレビューなどを見てもそこそこの高評価を受けているようです。
ホームセンターで販売される電動工具の中には、DCMグループブランドで販売される電動工具シリーズや、コーナンと高儀の提携で展開されるBOSSPOWER(ボスパワー)など、プライベートブランドを前面に押し出す販売店も数多く見かけるようになりました。
今回は、このような格安の電動工具が普及しつつある中で、プロ向け電動工具との違いはどの点にあるのかなどを解説します。
日曜大工やDIYでは、十分な実用性を持つノーブランド電動工具
「聞いたこともないメーカーより有名メーカーの電動工具の方が良いんじゃ」と考える方は多いと思います。実際にプロ向けの電動工具の方が格安で売られている電動工具より使いやすく、耐久性も優れています。
しかし、プロ向けの一流メーカーに劣る部分の多い格安電動工具ではありますが、日曜大工やDIYなどであれば十分なスペックを持っているため、用途によってはプロ向けのモデルと大きな差を感じられない部分もあります。
具体的な例として、常に身に着けて十数ミリもあるコーチボルトを打ち込んだり、細かい内装工事などに多用するならプロ向け電動工具は作業を快適にしてくれますが、月に1,2回しか使わないであろうDIYや日曜大工でのウッドデッキやベンチを作る程度であれば、ノーブランドの電動工具であっても作業性や耐久性に価格差程の大きな違いは発生しません。
最大の違いは「バッテリー」の価格差
現在の電動工具は、バッテリーで動作する充電式が一般的になっており、プロ向けブランドや格安電動工具でもコードレス電動工具が一般的となっています。
プロ向け電動工具と格安ブランドの電動工具の価格差の最大の違いは、バッテリーの価格差が原因となっています。
過去記事の検証などでは互換バッテリーは安価なバッテリーセルを流用して販売している点を示唆しましたが、高出力を必要としない電動工具であれば、安価なバッテリーセルを使用しても問題は発生しません。
プロ向け電動工具のバッテリーでは、軽負荷なインパクトドライバから重負荷の丸のこまで対応可能としなければならず、急速充電にも対応する高性能なバッテリーセルが求められています。そのため、バッテリー2個同梱の電動工具セットの場合、電動工具価格の約6割はバッテリーが占めています。
ですが、格安工具ブランドには重負荷な電動工具のラインナップも無く、急速充電も必要としないため安価なバッテリーセルを使用する事ができ、電動工具の価格もバッテリー込みで安く販売する事ができます。
プロ向け電動工具メーカーでもDIYモデルはバッテリーを分けている
この安価なバッテリーを使用する傾向は一部のプロ向け工具ブランドでも見られます。
代表的なのはマキタのプロモデルとDIYモデルのバッテリー形状の違いです。これらのモデルのバッテリーには互換性が無く、それぞれ専用の充電器とバッテリーを必要としています。この方式はDIY向け展開を行っているプロ向け電動工具メーカーに多く見られ、RYOBIやBLACK&DECKERなども同じ製品展開を行っています。
中には例外もあり、HiKOKI(旧日立工機)ではプロ向けとDIY向け電動工具のバッテリーで差別化を行っておらず、電圧と端子が共通であればプロ向け・DIY向けで同じバッテリーを使用する事ができます。
電動工具のサイズは大きく、付加機能はなし
現在のプロ向け電動工具はブラシレスモーターによる軽量化コンパクト化が進んでおり、一昔前のブラシモーターの電動ドライバと比べると全長が半分近く短縮した取り回しの良いモデルとなっています。
価格の安い電動工具では、変速を行う制御回路とブラシモーターを接続した最小限の構成となっています。モーターやギアなども安価な部品を採用しているため全長も長く、ソフト制御によるテクスモードや静穏モード、ソフトスタートなども搭載されていません。
格安電動工具の機能的な水準は、10年前のプロ向け電動工具と同程度のスペックに近いものと言えます。
ノーブランド電動工具のアフターサポート面は
基本的にノーブランドやプライベートブランドの電動工具の修理対応依頼は難しく、バッテリー寿命やモーターのカーボンブラシの摩耗に至った場合、本体ごと買い替える消耗品と割り切る必要があります。
寿命以外の故障であれば販売店による交換対応等も可能な場合もありますが、ノーブランドやプライベートブランドの工具は購入してから数年の間に製品自体が廃盤になる事も珍しくなく、製品入手の継続性に難がある場合があります。
プライベートブランド電動工具はバッテリーの共通化で存在感を増す
プロ向けの電動工具の強みは「フィーリング」「バッテリーの製品展開」「耐久性」「アフターサポート」に集約されていると考えています。ですがこれらは電動工具を肌身離さず使用するプロユーザーが要求する事項であり、DIY中心のライトユーザーにとっては無関係もしくは過剰なスペックとなって価格に反映されることとなります。
例えば、組立て家具のネジ締めやベンチの自作、ウッドデッキの制作であればノーブランド電動工具であっても十分に作業を行うことができるため、プロ向けの電動工具は過剰なスペックとなります。DIYや日曜大工でのコストパフォーマンスや実用性を考えるのであれば、格安工具ブランドはある意味での最適解と言えるのかもしれません。
また最近では、プロ向け電動工具の強みである「バッテリーの製品展開」を取り入れたプライベートブランドも展開され始めています。代表的ブランドとしては「男前モノタロウ」「EARTH MAN S-Link」「DCM」などがあり、バッテリーを共通にしてインパクトドライバから電動のこぎりまで使用できるようになっています。
これらのプライベートブランドでは予備バッテリーなども販売しており、電動工具のバリエーションも展開されている事から、ライトユーザー向けのモデルとして有力な選択肢となるのかもしれません。