ドイツの電動工具メーカーBoschは2019年3月、ディスクグラインダーに装着するディスクの新しい固定方式『X-LOCK』シリーズのグラインダーとアクセサリを発表しました。
現在のディスクグラインダーはナット止めが主流となっていますが、新構造のX-Lockではどのような点が変化しているのかを紹介します。
X-LOCK. The ultimate changing system for grinders | Bosch Professional
目次
X-Lockはツールレスでワンタッチ固定できる新構造
ディスクグラインダーは電動工具の中で最もシンプルな構造の電動工具です。それ故、新しい機能を盛り込む余地がほとんどなく、10年以上に渡りグラインダーの基本的な構造は変わることがありませんでした。そんな中、Boschが提案するのは新構造はディスクの取り付け方法を大きく変更したワンタッチ取付け構造『X-Lock』です。
『X-Lock』とは、これまでのナット締め構造によるディスク固定方式からワンタッチの固定方式に変えた新しい方式のディスクの固定方式です。
X-Lockはグラインダーとディスクで共に新しい構造を採用しているため、ナット締めで固定するディスクをX-Lockグラインダーに装着することはできません。
X-Lockでは押し付けるだけでディスクが固定されるツールレスなワンタッチ構造になっています。今までのナット締め固定のように、ディスク脱着時にナットやレンチを用意する必要がありません。
ディスクを取り外す時もツールレスです。ヘッド部分のレバーを引くとディスクの固定が外れ、簡単に取り外せるようになっています。
ディスク交換のワンタッチ化が現場を変える
ディスクグラインダーで切断や研削仕上げまでを幅広く行う現場などでは、作業に合わせた何種類ものディスクを使うため、ディスク付け替えの手間を省くために複数台のグラインダーを用意して使っている現場も多いと思います。
それもX-Lockでワンタッチでディスク付け替えができるようになれば、1台のグラインダーで全て済んでしまうかもしれません。
使用するグラインダーが少なくなれば、コンセントのコードの煩雑さも無くなり、保管する場所のコストや工具を持ち運ぶ量も減らすことができます。
フラットな面でより深い平面切削が可能
X-Lockではディスクの固定にナットが不要となったため、ディスク側のナットの出っ張り部分が無くなっています。
ディスクグラインダーで平面研磨している時などに、相手材とナットを接触させてしまってキズをつけてしまったためにリワークした経験がある方もいると思いますが、X-Lockでは固定部分がディスクより出っ張らないため、リワークの心配もありません。
X-Lockはブレーキ付きグラインダに適した構造
現在のディスクグラインダーは、現場からの要求や作業能率の向上のために「ブレーキ機能」の搭載が望まれています。ブレーキ機能とは、電源を切ると惰性で回る砥石が素早く停止する機能なのですが、単純にブレーキを働かせるだけではディスクが緩んだり脱落する可能性があります。
メーカー各社は対策として、ブレーキを搭載しても固定ナットが緩まない構造を採用していますが、X-Lockはツメによってディスクを回転軸方向に固定しているため、強いブレーキを入れてもディスクが緩むことはないため、安全性の高い構造と言えます。
X-Lockディスクはナット締め固定も可能
新しいスタンダードを作れるBoschの強み
Boschと言えば電動工具に使われる消耗品の規格化に何度も成功しているメーカーであり、古くはジグソーブレードのBタイプ、最近ではマルチツールのOISなど、独自の規格を電動工具メーカー共通の規格として普及させてきた実績があります。
既に普及しているディスクグラインダーに対して、どこまで普及するのかは不明ですが、作業の効率化や省スペース性を考えれば、とても魅力のある新規格でもあります。勿論価格次第ではありますが。
この記事の執筆時点ではX-Lockは販売されておらず、日本へも展開されるかなどは未定ですが、マルチツールのOIS規格のように、Boschから好条件で各メーカーへパテントが解放されるのであれば大きく普及するものと考えられます。
X-LOCK. The ultimate changing system for grinders | Bosch Professional