北米地域を中心に展開する溶接機ブランドESABは2023年11月に、DeWALT FLEXVOLTバッテリー装着対応のコードレス溶接機 ESAB Renegade VOLT ES200iを発表した。AC電源とバッテリー電源による2電源での動作に対応し、バッテリーアシストによる出力アシスト機能AMP+モードによりブレーカ落ちを防止する機能も備える。
目次
ESAB コードレス溶接機 Renegade VOLT ES200i
北米地域を中心に展開する溶接機ブランドESABは、Stanley Black & Decker と共同開発したコードレス溶接機 Renegade VOLT ES200iを発表しました。
Renegade VOLT ES200iは、史上初の電動工具バッテリーで動作するコードレスタイプの溶接機です。
被覆アーク溶接(SMAW)とTIG溶接(GTAW)の2種の作業に対応し、120V/230VのAC電源での動作のほかDeWALT FLEXVOLTバッテリー×4本装着によるコードレスでの動作を可能としています。
溶接機の動作モードでは、AC電源をバッテリー電源でアシストするAMP+ ハイブリッドモードを備えており、AC電源使用時にブレーカーの動作を抑えることが可能です。
DeWALR FLEXVOLTバッテリーは溶接機本体下段のバッテリーボックスに装着する構造になっており、必要に応じて分離することも可能です。
Renegade VOLT ES200i 製品仕様
製品名 | Renegade VOLT ES200i |
---|---|
外観 | |
動作電源 | AC 120V/230V DeWALT FLEXVOLT |
定格出力 | 2.7kVA(120V) 6.0kVA(230V) |
GTAW (AC) 溶接出力 | 140 A15.6 V (120 V) @ 25% 90 A13.6 V (120 V) @ 60% 70 A12.8 V (120 V) @ 100% 200 A18.0 V (230 V) ) @ 25% 129 A15.2 V (230 V) @ 60% 100 A14.0 V (230 V) @ 100% |
GTAW (AMP+) 溶接出力 | 180 A17.2 V (120 V) @ 25% 130 A15.2 V (120 V) @ 60% 100 A14.0 V (120 V) @ 100% 200 A18.0 V (230 V) ) @ 25% 129 A15.2 V (230 V) @ 60% 100 A14.0 V (230 V) @ 100% |
GTAW (DC) 溶接出力 | 150 A16.0 V (80 V) @ 18% 115 A14.6 V (80 V) @ 25% 90 A13.6 V (80 V) @ 60% 70 A12.8 V (80 V) ) @ 100% |
SMAW (AC) 溶接出力 | 110 A24.4 V (120 V) @ 25% 70 A22.8 V (120 V) @ 60% 55 A22.2 V (120 V) @ 100% 200 A28.0 V (230 V) ) @ 25% 129 A25.2 V (230 V) @ 60% 100 A24.0 V (230 V) @ 100% |
SMAW (AMP+) 溶接出力 | 150 A26.0 V (120 V) @ 25% 90 A23.6 V (120 V) @ 60% 70 A22.8 V (120 V) @ 100% 200 A28.0 V (230 V) ) @ 25% 129 A25.2 V (230 V) @ 60% 100 A24.0 V (230 V) @ 100% |
SMAW (DC) 溶接出力 | 140 A25.2 V (80 V) @ 18% 110 A24.4 V (80 V) @ 25% 80 A23.2 V (80 V) @ 60% 60 A22.4 V (80 V) ) @ 100% |
エンクロージャクラス | IP23 |
バッテリー装着本数 | 4本 |
重量 | 24.5 kg |
寸法 | 480 x 220 x 485 mm(電池ボックスあり) 460 x 200 x 320 mm(電池ボックスなし) |
販売年月 | 2023年11月 |
製品の特徴
「DeWALT FLEXVOLT×4本で動くコードレス溶接機」
Renegade VOLT ES200iは、史上初の電動工具バッテリーで動作するコードレスタイプの溶接機です。
DeWALTの20V-60V切り替えの大型バッテリーシリーズ FLEXVOLTの装着に対応しており、AC電源コード無しでも動作するので電源ケーブルや発電機などを用意しなくてもどこでも溶接作業を行うことができます。
FLEXVOLTバッテリー 12Ah×4本装着時では、1充電最大で溶接棒30本の溶接作業が可能です。
バッテリーボックスは分離式、取り外して運搬も可能
FLEXVOLTバッテリーを装着するバッテリーボックスは溶接機本体と分離できるので、車載時や持ち運び時など分離して持ちやすい状態で運搬できます。
溶接機とバッテリーボックスは専用の電源ケーブルで接続する方式なので、分離した状態のままでも溶接可能と推測されます。
AC電源単体でも稼働可、AC動作時は最大出力200A
Renegade VOLT ES200iはAC電源だけでの動作にも対応します。
230V電源接続時では、最大200A(25%)の動作に対応するので太い溶接棒での作業にも対応します。
AMP+ ハイブリッドモードでAC電源のブレーカ落ちをアシスト
AMP+ ハイブリッド モードでは、AC電源をバッテリ電源で補って、小さなブレーカー サイズ (10A、16A など) での迷惑なブレーカー遮断を防止し120V電源入力で溶接するときにより多くの出力を実現する機能です。
AC120V入力時では140Aが最大出力ですが、バッテリーでアシストするAmp+ハイブリッドモードでは最大180Aでの作業に対応します。
TIG溶接(GTAW)作業にも対応
Renegade VOLT ES200iはTIG溶接(GTAW)もサポートします。
鮮やかなTFT LCDパネル搭載で視認性に優れるインターフェース
視認性に優れるTFT LCDパネルを搭載しており、バッテリー容量や残作業時間、設定電流値などリアルタイムで表示できます。
10個のプログラム可能なメモリ設定機能を搭載しているので、作業に応じた適切なプリセットを保存していつでも呼び出すことも可能です。
電動工具用バッテリーを使う利点は未知
バッテリー内臓の充電式溶接機は国内メーカでも実績あり
今回紹介したコードレス溶接機は、北米地域で発売している製品であり日本国内での発売予定はありません。一応、FLEXVOLTバッテリーは国内でも正規品が購入可能なので、Renegade VOLT ES200iを個人輸入で調達すればコードレス状態でのみ使用可能です。AC電源やAMP+ハイブリッドモードに関しては、120V動作に対して100Vでしか動かせないため、正常には動作しないものと考えられます。
個人的に素晴らしいと思っている点が、本機はESABと言う溶接機メーカーが開発販売している製品でありDeWALTブランドの製品というわけではないのですが、DeWALTの公式HP内に製品ページがあり、正式にDeWALTブランドの製品として扱われている点です。これはバッテリーを他社に使わせるアライアンスとしてユーザーを誘導する上で有意義な方法だと考えています。
さて、本機は電動工具用バッテリーを搭載することが最大の特徴なのですが、筆者の個人的な見解として、この手の製品に電動工具用バッテリーを搭載する利点はそこまで大きくないのではないと考えています。
と言うのも、直感としてバッテリーを交換できることは魅力的に見えるものの、高価な製品であるリチウムイオンバッテリーパック転用してまでこの手の製品に搭載する利点はそこまで大きいものではないと考えているためです。
この辺りは意見が分かれると思いますが、この手の大型製品に装着するバッテリーはその製品専用のバッテリーになりがちで、そうなるとバッテリーを取り外して別製品に活用するシーンは多くない、と想定しています。また、いちいち本体からバッテリーを外して充電器に装着するのも手間であるため、それならばバッテリー内臓式でもコードレスの役目は十分役目は果たせるものと考えています。
この辺りの考え方に関しては、作業者の使用シーンや内臓バッテリーの品質にもよるので一概には言えないのですが、IKURAをはじめとする国内の溶接機メーカーはリチウムイオンバッテリー内臓の溶接機シリーズも展開しており、恐らくそう遠くないうちにマキタも80Vmaxシリーズで充電式溶接機の開発を始めると考えています。実際の製品が市場に出揃ったあたりで市場の答え合わせが始まるのでしょう。
ちなみに、AMP+ハイブリッドモードに関しては、AC電源をバッテリ電源で補うことで小さなブレーカー接続時の遮断を回避する機能で、最近の事例としては工機HDがコンプレッサで似たような機能を開発しています。筆者はモータ負荷に対する補助的な用途しか考えていなかったので、溶接機で活かす方法もあったのかと感心しています。