工機ホールディングス株式会社(本社:東京都港区)は、電動工具ブランド HiKOKI(ハイコーキ)から新型のマルチボルトバッテリー BSL36A18X/BSL36A18BXを全国の電動工具取扱販売店などを通じて発売する。発売時期は2022年12月上旬頃を予定。本体希望小売価格は25,800円(税別)
目次
HiKOKI BSL36A18X 新型マルチボルトバッテリーを発表
HiKOKIは、2022年12月上旬から新型マルチボルトバッテリー BSL36A18Xを発売します。
今回の新型マルチボルトバッテリーは、2017年8月に販売を開始した18Vと36Vを切り替えられるマルチボルトバッテリーに、2色成形エラストマケースにより堅牢性を高め、さらに耐水シートをケース内側に追加したことで耐水性を向上させたリニューアルモデルです。
バッテリー性能仕様は従来バッテリー BSL36A18Bと同等です。製品展開では、Bluetooth接続機能を搭載するBSL36A18BXも同時発売します。
希望小売価格は、BSL36A18X 25,800円(税抜)・BSL36A18BX 26,800円(税抜)です。
- BSL36A18X 通常仕様 希望小売価格25,800円(税抜)
- BSL36A18BX Bluetooth接続機能搭載 希望小売価格26,800円(税抜)
製品仕様 (前機種 BSL36A18バッテリー比較)
製品名 | BSL36A18X | BSL36A18 |
---|---|---|
外観 | ||
電圧 | 18V/36V | |
バッテリー構成 | 5S1P×2 | |
バッテリー容量 | 90Wh (18V : 5.0Ah/36V : 2.5Ah ) | |
残量表示 | 〇 | 〇 |
Bluetooth対応 | BSL36A18BX | BSL36A18B |
大型バッテリー | × | BSL36B18 (144Wh仕様) |
重量 | – | 0.7kg |
寸法 | – | 116×69×76mm |
本体価格 | 25,800円(税別) | 24,800円(税別) |
販売年月 | 2022年12月予定 | 2017年8月 |
製品の特徴
「底面エラストマで耐久性+防水性の向上」
今回のリニューアルしたマルチボルトバッテリーは、外形ケースの変更とそれに伴うデザイン変更が大きなポイントになっています。
ケース底面に2色成形エラストマ(ゴム弾性を有する工業用素材・材料)を採用し、内部に耐水シートを追加することで耐水性が向上しています。IPX規格の適合はありませんが、屋外雨天時の作業時でも安心して使用できるようになると予想されます。
今回発売が予告されたのは単品販売の情報のみですが、今後、電動工具のバッテリーセット品の付属バッテリーについても、在庫が捌け次第少しずつ”X”仕様のマルチボルトバッテリー付属仕様に置き換わっていくものと予想されます。
バッテリーのリニューアル自体は市場への大きな影響なしと予想
今回のマルチボルトバッテリーリニューアルについては、バッテリー性能それ自体に従来品との違いはなく、外観ケースのマイナーチェンジのみに留まる変更です。正直なところ、積層セル採用の小型18Vバッテリー DeWALT PowerStackや21700セル採用10S2P構成のマキタ BL4080F程のインパクトがないのは残念と言えるでしょう。
堅牢性・耐水性の向上を謳ってはいるものの具体的なデータが開示されているわけではありません。規格適合や内部構造などの具体的なアピールが行われていない点を察すると、耐久性向上については眉唾程度に見た方が良さそうです。
BSL36A18X/BSL36A18として新しく展開した理由の予想としては、過去数度行ったバッテリー配布キャンペーンによるBSL36A18バッテリーの値崩れイメージを払拭したい背景があり、エラストマ追加と防水性向上で付加価値を付けることで、市場価格イメージを適正化して利益を上げたい思惑があるものと考えています。(ただの金型更新のついでかもしれませんが)
さて、キーメッセージの「もう、バッテリーは1つでいい。」はマルチボルトバッテリーの18Vと36V機を1種類のバッテリーで使いまわせる利点を短いフレーズで表した良いフレーズと言えます。とは言え、筆者の個人的な心情としては「1つでいい、と言いながらBluetoothバッテリー含め2種併売している」「最近発売した新型18Vバッテリー展開との整合性がない」「2種ある10.8Vシリーズは1つにしないの?」「就任2年目のCCOは今回活用しないの?」「バッテリーのリニューアル内容とキーメッセージが一致していない」など細かいツッコミどころも多々あるのが気になるところでしょうか。
今回の新バッテリーとキャンペーンについては、国内最大の競合 マキタ 40Vmaxシリーズを強く意識したものを感じます。マキタ 40Vmaxシリーズの18Vシリーズとの互換性の無いことを逆手に、マルチボルトの優位性さえアピールすれば間違いなく勝てると睨む工機HD側の意図もあるのでしょう。
とは言え、異なる電圧シリーズで使いまわせるマルチボルトバッテリーの利点は確かに大きいものの、その恩恵を最も受けられるユーザーは日立工機時代からの18Vユーザーから移行するユーザーであり、新規ユーザーや他社移行のユーザーにとって、マルチボルトシリーズ利点はそこまでの強みではありません。
例えば、HiKOKIの18Vと36Vの同カテゴリ品を除けば、マキタ 40Vmaxのここ数年の猛追によってラインナップ数による実用上の差はほとんどなくなっています。また18V-36V共用による製品ラインナップ数の多さを語るとするなら、初めから倍近い国内最大製品数を持つマキタ18Vシリーズを選ぶのが無難、とさえ言えてしまうのが現在のHiKOKIコードレスシリーズの現状です。
新バッテリーに沸く中での辛辣な意見となってしまいますが、超成熟市場でありプラットフォームや販路構造に強く縛られる電動工具市場は、小手先の製品リニューアルやキャンペーンで大きなシェア移行が発生するような産業構造ではありません。それに割く予算があるのなら、1台でも多くの新製品開発に努めてほしいと思ってしまうのが心情でしょうか。