電動・エア工具を製造・販売する工機ホールディングス株式会社(本社:東京都港区)は、電動工具ブランド HiKOKI(ハイコーキ)から⾼圧エアコンプレッサ EC4516HYを全国の電動工具取扱販売店などを通じて発売する。業界初となるバッテリー電源によるブースト回路の導入により2,000W相当のエア汲み上げ能力を実現する。本体希望小売価格は338,000円(税抜)
目次
HiKOKI ⾼圧エアコンプレッサ EC4516HY
電動工具ブランド HiKOKIを展開する工機ホールディングス株式会社は、⾼圧エアコンプレッサ EC4516HY(S)を発売します。
EC4516HYは、業界初のAC100V電源とバッテリー電源によるブースト回路を搭載した新方式の建設作業用コンプレッサです。
従来のAC100Vで動作するエアコンプレッサは、1,500W(100V・15A)制限のため、圧縮機の吐出性能向上は限界の水準にきており、圧縮空気をより多く必要とする建方工事や2×4工法などのユーザーにおいてはエアが不足することで作業効率の低下や釘浮きなどが発生する要因となっていました。
本製品は、AC100Vの電源入力に加えてマルチボルトバッテリーによるブースト回路を新たに搭載することで、理論入力を2,000Wにパワーアップしており、AC100V電源の1,500Wを超える業界最大の吐出能力115L/minを達成し、釘打ち作業能力の大幅な向上が実現しています。
使い勝手の面でも大型LCDパネルによる操作性能向上や、タンクを四方配置にした16Lモデルなど革新的な構造を加えており、スマホ接続による遠隔操作や自己診断機能も搭載しています。
販売仕様は、本体のみのEC4516HY(S)のみ販売します。
- EC4516HY(S) 本体のみ 希望小売価格338,000円(税抜)
EC4516HY製品仕様 ( EC1445H3(CS)比較)
製品名 | EC4516HY(S) | EC1445H3(CS) |
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外観 | ||
電源 | AC100V(50/60Hz共用) | AC100V(50/60Hz共用) |
消費電力 | 1,500W | 1,500W |
空気タンク内 最高圧力 |
4.4MPa(44.9kgf/cm2) | 4.4MPa(44.9kgf/cm2) |
運転制御圧力 | ON圧力:4.0MPa(40.8kgf/cm2) OFF圧力:4.4MPa(44.9kgf/cm2) |
ON圧力:4.0MPa(40.8kgf/cm2) OFF圧力:4.4MPa(44.9kgf/cm2) |
取出し可能圧力 | 0~約2.5MPa (0~約25.5kgf/cm2) |
0~約2.5MPa (0~約25.5kgf/cm2) |
最大回転速度 | 3,500min-1 | 2,300min-1 |
空気タンク容量 | 16L | 12L |
バッテリー | マルチボルト | × |
騒音値 | 59dB(オートモード) | パワーモード:59dB |
空気取出し口 | 高圧カプラ×4個 | 高圧カプラ×4個 |
重量 | 21.5kg | 15.8kg |
寸法 | 440×395×450mm | 328×615×337mm |
本体価格 | 338,000円(税別) | 224,700円(税別) |
販売年月 | 2024年02月 | 2020年 |
製品の特徴
「AC電源+DCバッテリーで動作する建築作業用コンプレッサ」
EC4516HY(S)は、マルチボルトバッテリーによるブースト回路を搭載することで理論入力を2,000Wにパワーアップしたモデルです。
業界最大の吐出能力115L/min@ブーストモード、2.3MPa(現行品比 約140%)を達成し、釘打ち作業能力の大幅な向上を実現しています。
ブーストモード動作時には、16Lのタンクを搭載しながらもタンク12Lサイズの製品とほぼ同等の充填時間を達成しており、その圧倒的なエア汲み上げ量によって従来製品比で約3倍の連続作業性を実現しています。
縦型タンク構造のスクエアデザインで設置面積が小さい
本製品は、車載効率や現場での搬入・設置場所そして操作性を考慮し、最も適した形であるスクエアデザインを取り入れました。
スクエア形状にすることで奥行が短くなり、収納空間にもスッキリ入り出し入れしやすいデザインを実現しています。
大型LCDパネルと操作ボタン搭載
圧力表示や、モード切替、異常検知、アプリの通信状態等が本体上部のLCDパネルに表示されるようになり、本製品の状態が分かりやすいようになりました。また、ボタンも従来のパネルから独立したボタンに変更し耐久性が向上しています。
バッテリー充電機能を搭載
当社従来製品より約25%減※の低振動を実現
従来製品より約25%の低振動を実現。床や壁に振動が伝わりにくく、より快適作業ができます。
HiKOKI TOOLSアプリでスマホから操作可能
スマートフォンに“HiKOKI TOOLS”をインストールすることで利用できる本製品専用のアプリを開発。
遠隔操作やセキュリティ機能の設定、さらに独自の“自己診断機能”を使うことで、製品の状態を手元で“見える化”できます。
HiKOKI TOOLS
Koki Holdings Co., Ltd.無料posted withアプリーチ
意外と良いところに落とした製品仕様、需要と耐久性は未知
今回の製品は、2021年12月に当サイトが紹介したHiKOKIの特許 バッテリーアシストコンプレッサを実現した製品となります。当初の意匠図から製品デザインも大きく変わっており、3年近い開発企画の間には色々と試行錯誤があったことを伺わせる製品となっています。
HiKOKIの最近の新製品単品カタログは長らく白っぽい1枚カタログでしたが、今回は重量感を感じられるHiKOKiらしい単品カタログになっていて本気度も伺えます。これは色々な邪推も含む発言ですが、今回の製品によって技術力の高さとユーザー支持を投資家にアピールすることで、困難な局面を乗り越えたいところなのだと思います。
製品仕様としては、特許出願時点で想定していたものから大きく洗練されており、製品そのものとしては良いところに落とし込んだのではないかなと思っています。とは言え、以前指摘した通りバッテリーによるアシスト動作はバッテリー容量があるうちの一時しのぎでしかなく、AC電源1,500Wの不足を根本から解決する技術ではありません。エア不足への対応方法という意味では、コンプ2台の並列稼働とは根本的に異なる考え方です。
さらに、建築作業用コンプレッサーは普及率100%の製品であり、実用における大半の要求性能は20年前の時点で満たせている製品です。EC4516HYは建築作業用コンプレッサーの方向性に新たな一石を投じる製品にはなりそうですが、コストや耐久性の観点からユーザー選択肢の1つに留まるのが良いところで、工機の現状打破には寄与しないだろうと考えています。
耐久性に関してですが、タンクと液晶パネルの配置については気を使うことになるかもしれません。大容量とコンパクトさを両立するために4本のタンクを直立する配置にしたものと考えられますが、円筒型タンクは側面部が弱く、その部分を露出する構造は運搬や作業時に気を遣うことになりそうです。また、大きく見やすい液晶パネルの操作性に優れる一方で、傷・割れは多少ながら発生すると考えています。
筆者的には、取り回しの良い細いソフトケーブル採用して肩掛けレベルのサイズでもエアをガンガン使える6~8Lクラスの小型コンプを高出力ハイブリッド化してくれたらなとも思ったのですが、小型高出力コンプは振動や耐久性の面で実現に難があることや、市場的な需要があまりにも未知であることから見送ったのかもしれません。この辺りはAC+DCハイブリッドとそれを取り巻く技術の今後の発展に期待しています。
今回の製品は形名に(S)がついている製品仕様となっています。HiKOKIでは製品に何かしらの修正が行われた場合に(S)がつけられ、過去にはコードレスライト UB18DGLのACアダプタ仕様変更やコードレスバンドソー CB18DBLの構造変更などに(S)がつけられたことがありました。今回のコンプレッサに関しても、発売前に色々と仕様を変えた経緯があるのかもしれません。
個人的にはマルチボルトバッテリーの充電機能周りが気になっており、1つがバッテリー冷却用ファンが非搭載であること、もう1つが36V専用充電器である点です。
今回のコンプはBSL36A18Xバッテリを約5分で使い切るほどバッテリー消費が激しい機器なのですが、バッテリー冷却ファンを搭載しておらず、夏場など自然冷却が追い付かない場合においては電池を充電できずにブーストモードが機能しなくなる可能性があると予想しています。
これに関しては、実用的にブーストモードをそこまで多用するユーザーはいないと判断して充電ファンを削ったのかもしれませんが、そうなるとAC+DCにした意味は…と本末転倒な感じがしなくもありません。
2024年2月22日追記:下記の懸念点は、製品発表時に公開された製品単品カタログのみの情報を元に推測して記載したものであり、後日公開された取扱説明書の内容を確認し、下記の内容は誤りであり、安全性には問題ありません。
もう一つが36V充電についてです。マルチボルトバッテリーは放電時に36V、充電時に18Vへと配線を組み替えることで充放電を行いますが、今回の充電機能は放電時36V、充電時36Vとなり常に36V動作での充放電が行われる仕様と考えられます。この場合、長期間EC4516HYを使用していたバッテリーにアンバランスが発生してそれが進行した場合、18V機器に接続したときに10S1P構成が5S2P構成に変わることで各バッテリーの電位差から逆流充電が起こり、過充電状態に至る可能性があるものと考えています。
この辺りは安全性を十分に検討した上でこの充電仕様にしたと予想しているので、今後、特許を検証しながらどのように対処したのか確認したいと思っています。