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電動工具を製造・販売する株式会社マキタ(本社:愛知県安城市) は 、2021年3月に新型の40Vmaxバッテリー BL4050Fを発売する。40Vmaxシリーズ最大のバッテリー容量5.0Ahを搭載し最大出力は2kWに達する。
目次
マキタ史上最大の大容量バッテリーBL4050F
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電動工具を製造・販売する株式会社マキタは、40Vmax新型バッテリーBL4050Fを発表しました。2020年2月から国内マキタ取扱店で販売が始まります。希望小売価格は37,200円(税抜)
BL4050Fは、大型バッテリーのBL4040よりも一回り大きいバッテリーサイズで、21700リチウムイオンセルを採用する36V-5.0Ah(180Wh)仕様の大型高出力バッテリーです。
BL4050F製品仕様 (BL4040比較)
製品名 | BL4050F | BL4040 |
外観 | ![]() |
![]() |
バッテリー容量 | 5.0Ah(180Wh) | 4.0Ah(144Wh) |
最大出力 | 2,300W? | 1,510W |
セル構成 | 18650×20本? | 21700×10本 |
重量 | 1.6~1.8kg? | 0.8kg |
寸法 | – | 125×85×80mm |
定価 | – | 21,890円 |
マキタ40Vmaxの大型バッテリーBL4050Fはどんな感じ?
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2021年2月に発売したマキタ 40Vmax高出力大型バッテリーBL4050Fをレビューします。
BL4050Fのバッテリー仕様は36V-5.0Ahです。バッテリーの中身のセルはBL4025に使われているセルを20本搭載した構成で、一部の高出力40Vmax電動工具に対しては高出力用途のF付バッテリーが推奨されています。
工具本体とのサイズ感や装着感
DC40RA 充電器
40Vmax用の急速充電器 DC40RAにBL4050Fを装着してみるとこんな感じになります。
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LEDインジケータ点灯1つ(電圧34.0V)時の実用充電完了は約30分、完全充電は約40分程でした。
バッテリー容量に対して充電時間が長くならないのは、2セル並列構成によって充電電流を大きく取っているためと推測されます。
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TD001G インパクトドライバに装着してみる
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小型電動工具のインパクトドライバにBL4050Fを装着するとバッテリーの威圧感が大きくなります。このバッテリーを付けるだけで締付トルク 300N・mくらい出そうな感じがします。(高出力バッテリーを装着しても性能は上がりません)
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ドライバ類にBL4050Fを装着すると重心バランスが下側に来るので、相対的にヘッド部分が軽くなります。
原理上、ヘッドが軽くなるとインパクト打撃時にヘッドが浮き上がりやすくなるのでカムアウト率が高くなります。
CL001G クリーナ
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BL4050FをCL001Gに装着したとき、最初に思ったのは「掃除し難いな…」でした。
BL4050Fを装着すると、パワフルモード時でも連続30分使用できる連続稼働時間が利点になりますが、重心がバッテリー側に寄ってしまうため先端ノズルが浮きやすくなり、動かしにくく感じてしまうのが大きな欠点です。
特に、でこぼこが多い屋外現場やカーペット掃除では手先に力を入れてノズルを押さえつけないといけないため、余計に疲れてしまいます。
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ホース先端に重りを付ければ重量バランスは改善しますが、そこまでしてBL4050Fを装着するかを考えると少し微妙なところです。
CF001G ファン
CF001GファンにBL4050Fを装着すると大きさ的にはしっくりきます。
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側面から見ると、でっぱりの部分が少し気になってしまうのが欠点。
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ちなみに、BL4050Fを差し込んだ時でもバッテリー底面と本体の下側にはほとんど隙間がほとんどなく、現行40Vmaxバッテリーのこれ以上の大型化は無さそうです。21700セル採用の20セル構成バッテリーの展開予定は無いのかもしれません。
※もっと大きいバッテリーのBL4080Fが登場しました(2021年10月27日追記)
BL4050F検証・分解
ケース外観
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ケースの開封にはT10のトルクスねじを使用します。BL4050Fは底面4本・上面2本のねじで固定されているのでねじを全て外してケースを開封します。
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BL4050Fの保護回路
保護回路はいくつかの回路変更が見られました。これは高出力(大電流充電)仕様に対応させるためと考えられます。
外観だけでもシャント抵抗やパワートランジスタの部品点数増が確認できます。
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セルホルダは4本のねじでケースと固定されているので、T8トルクスでねじを外して分解します。
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セル品名のチェック
BL4050Fのリチウムイオンセル品名を確認します。
マキタは長年VTCシリーズを採用しており、事前情報から18650セルを20本搭載している10S2P構成の可能性が高いと判断していたため、BL4050FはBL4025と同じくVTC5Aを採用していると推測しています。
40Vmaxバッテリーはセルホルダが堅牢で、運が悪ければセルホルダを切断して確認する必要もありますが、前回のBL4025の時と同じく風窓からセルの品名を確認できました。
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リチウムイオンセルのラベルを確認した結果、予想通り村田製作所のVTC5Aを搭載していました。
あとはリチウムイオンセルの配置構造とセルホルダの外観を確認します。
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下面端のセル配置が無く、楕円形にセルが配置されているのが特徴的です。大型バッテリーは落下等で端のセルに衝撃が集中するとセル故障・発火の原因になるため、それに配慮したセル配置にしたものと推測されます。
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ケース内側
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コストや実用性は悪くない高出力大型バッテリーBL4050F
マキタ 40Vmaxの大型バッテリーBL4050Fを分解してみましたが、BL4025をそのまま2並列構成にしたバッテリー構成でした。単純計算では約2kWの出力が出せる仕様なので、高出力用途の電動工具にはF仕様のバッテリーが必須となります。
今回のBL4050Fに対しては、積層ラミネート型LIBの搭載を期待していましたが、18650 セルを20本構成した10S2Pのセル構成だったのが少し残念でした。10S2P構成は昔ながらの36Vバッテリーと同じ構成であり、敢えて10S1Pにしたことが40Vmaxシリーズとも考えていたので、少し残念です。
バッテリー技術や製品展開的には否定的な論調になってしまいますが、実用的な面で考えるとBL4050Fは予備バッテリーとして意外と悪くない製品だったりします。
重量や大きさ的には不利な大型バッテリーですが、扇風機やライトのような設置型の製品であれば重量が問題になることはありません。また、高出力用途の製品では最大2kWものAC電源を超える出力も実現できるので、ACコード式の性能を超えるスペックを持っています。
大型バッテリーは価格の高さも気になるところですが、希望小売価格でで1Ahあたりの容量単価を計算するとBL4050Fは容量それなりの価格で比較的良心的だったりします。
バッテリー品名 | 定価 | 容量 | 1Ahあたりの単価 |
---|---|---|---|
BL4025 | 23,200円 | 2.5Ah | 9,280円/Ah |
BL4040 | 27,200円 | 4.0Ah | 6,800円/Ah |
BL4050F | 37,200円 | 5.0Ah | 7,440円/Ah |
実売価格になると各バッテリーの容量単価はだいたい大体同じくらいの単価で販売するだろうと予想しています。実際、今回手配したBL4050FもBL4025と同じくらいの容量単価で購入できており、「高いけど容量相当の価格差」と思えば、それなりに納得できます。
このあたりは、マキタ営業部がバッテリー容量の違いで価格に不公平さ生まれないよう配慮した結果かもしれません。「営業のマキタ」と言われるだけあって、この辺りのやり方は好印象です。
BL4050Fはハンマやグラインダで推奨されている高出力バッテリーでありながらも、価格的に考えれば割と良心的なバッテリーです。今後の40Vmaxシリーズ展開次第ですが、大型ライトや保冷温庫が展開されればより実用的な選択肢となるでしょう。