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AUTONOMOUS MOBILE TYING ROBOT (自律移動型結束ロボット)
マックスは北米ネバダ州ラスベガスで開催される商業建設向けの展示会 World of Concrete 2025でAUTONOMOUS MOBILE TYING ROBOT (自律移動型結束ロボット)のコンセプトモデルを展示しました。
このコンセプトモデルは、マックス初となる鉄筋結束ロボットです。
コンクリート建築において、床面の鉄筋結束は大量の結束作業が必要ながらも単純作業で労力を必要としていましたが、今回のような鉄筋結束ロボットを用いることで作業工程を機械化し、昨今の職人不足と省力化を実現できる次世代現場用ロボットとして各社研究が進められています。
これまでの鉄筋結束ロボットに関しては、作業者が用いる手持ちタイプの鉄筋結束機をロボットに取り付けて使用するタイプが主流でしたが、今回のマックスコンセプトモデルに関しては、鉄筋結束ロボットに結束機構を取り付けた構造となっており、さらに高度な制御システムや連係機能など従来の鉄筋結束ロボットには見られない意欲的な機能を搭載しているのが特徴です。
コンセプトムービー内では、今回の自律移動型結束ロボットについて下記のように説明しています。
自律移動式鉄筋結束ロボットその際立った特徴は自律性と適応性である。
スラブ現場において、最も効率的なルートを自ら生成し、指定されたエリア内でそのルートに従い、正確に鉄筋を結束します。障害物に遭遇すると、即座にルートを再計算し、適応させるため、途切れることなく作業が進みます。
高度な制御システムにより、複数のロボットがシームレスに連携。各ロボットは一体となって動作し、制御システムからの正確な指示に従い、効率的に作業を完了します。
自律移動式結束ロボットの動きは、複数のサーボモーターを同期制御することで、迅速かつスムーズ。
前進・後退は車輪で行い、横移動はスライド機構で行うため、移動から結束までスムーズで中断のない動作を実現します。さらに、主要な構造部品に「ジェネレーティブ・デザイン」を採用することで、軽量化と優れた耐久性を両立し、最高の技術基準を満たしています。
4台のカメラが毎秒30フレームで画像をキャプチャし、システムが鉄筋を検知してホイールの回転を制御し、正確な位置決めのために横方向の微調整を行います。
最先端の画像認識と機械的革新を統合することで、自律型移動式結束ロボットは常にミッションを成功に導きます。MAXは、自律走行型鉄筋結束ロボットの高度なインテリジェンスを通じて、未来の価値創造を推進しています。
Autonomous Mobile Tying Robot \ RB Business Planning
障害物を検知して自動的にルートを再計算する機能を搭載
マックスの鉄筋結束ロボットには高度な制御コンピュータを2台搭載しており、障害物の検知とルートの再計算を自動的に行います。
従来のロボット結束機は結束箇所のみを検知して自動的に作業を行うのみでしたが、鉄筋結束ロボットが自律的に障害物を検知しルートを変更する機能は初です。
複数ロボット連携による効率的な結束作業に対応
複数台運用した時の制御にも対応しており、各ロボットで結束作業を連携することで素早く作業を完了できます。
下記の画像は各ロボットの位置検出とロボットごとのルートを表している制御ソフトの画面と予想されます。
ジェネレーティブデザインによる軽量化
今回のコンセプトモデルには、フレームにジェネレーティブデザインによる筐体設計が採用されています。
ジェネレーティブデザインとは5年ほど前から話題になっているAIベースの自動生成技術であり、設計要件やパラメータを入力することで素早い設計と最小限の素材使用による最大限の強度を両立できる設計手法です。形状は有機的かつ骨格的な形状になるため、従来の射出成型や切削加工には向きませんが、3Dプリンタによる造形では有利となる方式です。
4台のカメラによる鉄筋検知と位置決め微調整
前後左右に4台のカメラを搭載しており、画像認識によって鉄筋を適切に検知しながら位置調整を行い結束を行います。
マックス鉄筋結束機事業の本気と未来を感じるコンセプトモデル
過去には現場作業のロボット化として石膏ボード張り用ロボットなどの実証実験も行われていましたが、2025年時点で最も機械化が進んでいる作業はスラブ面の鉄筋結束用途になるようです。
スラブ面の結束作業に関しては、下記写真のように基本的に作業者はかがんで腰を落とした状態で作業を行うため、単純作業の割に腰への負荷が高いため現状最もロボット化が進んでいる現場作業となっています。先行企業としては主にベンチャー系の新興企業が製品開発を進めており、香川県の建ロボテックや北米のSkymulなどが製品開発、研究を進めています。
鉄筋結束機のような工具の単価が高い製品は付加価値をつけやすいこともあり、先日紹介したツインタイア RB-442T-Cコネクティッドの展開も合わせて、マックスは建設向け電動工具分野において最もIoTやロボット分野において先行している企業と言えるのかもしれません。現状、採算が取れるプロダクトになるかは未知ですが、ロボットを中心としたIoTソリューションを中心とすればマネタイズできる可能性は見いだせるので、高収益な事業創生としても期待できる製品です。
話は逸れますが、最近のマックスは「マックス アクセラレーションプログラム 2024」と呼ばれる新規事業創出プログラムを行っており、「新規事業の事業化」と称してスタートアップ企業との共創を進めているようです。
その中の1社はロボットソリューション事業を持つugo株式会社であり、ugo社のDXソリューションの中には工場ロボットソリューションもあります。もしかすると今回のマックスが開発した鉄筋結束機ロボットへの関与、または今後の協業による新規事業創出なども期待できるのではないかと思っています。
勝手に憶測してしまう部分はあるものの、マックスの鉄筋結束機の展開に関しては技術的な開発の取組やベンチャー企業との協業などの具体的な経営レベルでの取り組みが目に見える形で確認できている点もあり、今後の展開に期待しています。