マックス株式会社(本社:東京都中央区)は充電式の新型ねじ打機に関する特許を出願した。ビット移動用とビット回転用の2機のモーターを備え、電動式ながらもエア式のねじ打機に近い操作性を実現する。
本記事はマックス株式会社が保有する産業財産権の情報を紹介・解説するものであり、新製品の開発動向を保証するものではありません。マックス株式会社及びマックス取扱店へのお問い合わせはお控えください。
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エア方式に近いネジ打ち込み構造を持つ充電式ねじ打機
マックス株式会社は、2022年4月に新型の充電式ねじ打機に関する特許を出願しました。
本特許は、石こうボード張り作業に使用する充電式の電動ねじ打機に関する特許です。ネジ締結用のモーターに加え、ビット打ち込み用のモーターも搭載しているのが特徴です。
現行の電動ねじ打ち機は、作業者自らがネジを押し込んだ後にクラッチの働きによって締結作業を完了するものでしたが、この特許ではビット打ち込み用のモーターが自らビットを押し込む方式であり、エア式に近い駆動方法となるため、エア式のねじ打機と同じような操作感での作業を可能にしています。
打ち込み用と回転用のモーター2機搭載が特徴
特許内では、ビット回転用のモーター40とビット移動用のモーター50を2つ搭載しています。
動作的には、ビット回転モーター40が回転しながらビット移動モーター50を駆動させ、ビットを回転させながら先端に装填されたビスを打ち込む方式となるようです。ビットが移動して打込むこの方式は、エア式のねじ打ち機に近い方式と言えます。
構造的にもクラッチを備える従来の電動ねじ打機械と異なり、作業者による押し込みを不要としているので、電動モデルながらも素早いネジ打ち込み作業が可能になるものと予想されます。
今回の充電式ねじ打ち機が実用化されれば、高圧コンプレッサが不要でバッテリーのみでの単体動作が可能になるため、ホース不要で取り回しに優れるようになるだけではなく、作業現場での工具稼働台数を手軽に増やせたり足元の配線が減って安全性が高められたりなど、さまざまなメリットがあります。
本方式の充電式ねじ打ち機の課題は本体重量とフィーリング
今回の特許は、コンプレッサー不要としながらもエア式と同等の使い勝手を実現する意欲的な内容ではあるものの、電動工具の根本であるバッテリーとモーター技術の面で登場が早すぎる製品のようにも思います。
根本的な問題として、現在のバッテリー・モータはエア式の工具の動力源にするには大きく重い部品であるため、エア式のねじ打ち機と全く同じような製品にはなりません。
例えば、主要部品のほとんどがアルミで構成されているエア式のねじ打ち機と異なり、電動式のネジ打ち機はモーターやリチウムイオンバッテリーを搭載しているので重量の面では不利になるものと懸念されます。特許意匠図から見た印象では、製品化の際にはバッテリー装着時重量で4kg前後になるものと考えられます。
さらに、エア式と異なりモーター巻き上げで動作する方式であるため、動作レスポンスもエア式には及ばないものと予想されます。高圧エアで動作するねじ釘打ち機に慣れたユーザーの方は、そのフィーリングの違いから敬遠されるのではないかと予想しています。
シェア奪取の可能性はあるものの、ゲームチェンジャーはもう少し先
現在、電動工具市場はエア式から電動式への移行が進んでおり、タッカーやフィニッシュネイラなど小さい釘を打つ製品での充電式電動化が進んでいます。
充電式釘打ち機に関しては、銃刀法の問題があるため日本市場での普及は法改正が必要なために普及は見込めないものの、ネジ打ち機についてはあくまでもモーター回転で打込む方式であるため、日本市場での販売は問題ないものと考えられ、実用化の期待も高い製品です。また海外市場においても押し込み式のドライウォールドライバーが広く普及しているため、製品としての完成度が高ければ世界的なシェアも確保できる製品になるかもしれません。
しかし、ネジ打ち機をはじめとする打ち込み工具を使用するユーザーは、フィーリングに対して特に厳しい評価を下す傾向が強い点がネックになると考えられます。例え今回の充電式ねじ打ち機が発売に至ったとしても、ユーザーがその使い勝手に慣れるには相当の時間が必要なものと予想しています。
市場の実態としても、高い完成度と実用性を兼ね備えた高圧エア釘打ち機が市場に多数普及している以上、例え革新的な製品であろうとも、性能不足や取り回しの問題から普及は限定的と予想されます。その点を考慮すると、本格的な買い替え需要を起こすためには、更なる技術革新と長い時間が必要になると考えています。