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工機HD(旧 日立工機)、遠心分離機事業「himac」を独エッペンドルフ社へ譲渡

電動工具、遠心分離機を開発・販売する工機ホールディングス株式会社は、2020年3月18日に工機ホールディングスの遠心分離機事業と“himac”ブランドを エッペンドルフ社への譲渡に合意したことを発表した。

工機ホールディングスは技術開発、製品開発を一層加速すべく集中投資し、電動・エア工具などを中心とした総合パワーツールメーカーとしてグローバルでのリーディングカンパニーへの成長を目指します。

本記事は、当サイトの業界研究や独自視点に基づく記事となります。本記事について工機ホールディングス株式会社、エッペンドルフ社日本法人、その他関係会社へのお問い合わせはご遠慮下さい。

工機HD 遠心分離機事業「himac」を独エッペンドルフ社へ譲渡

電動工具、遠心分離機を開発・販売する工機ホールディングス株式会社は、2020年3月18日に工機ホールディングスの遠心分離機事業と「himac」ブランドを エッペンドルフ社への譲渡に合意したことを発表しました。

電動工具メーカーの印象が強い日立工機(現 工機HD)ですが、1954年には遠心分離機の事業を開始しており「himac」ブランドとして遠心分離機の展開を進めています。製品ラインナップも広く、研究室用の卓上遠心分離機から生産用の連続式遠心機まで備えています。

今回の譲渡先となるエッペンドルフは、世界中の研究所で液体試料および細胞工学のための機器や消耗品とサービスの開発・販売をする大手ライフサイエンス企業です。エッペンドルフはドイツのハンブルグで1945年に創業しました。現在世界に3,500名を越える従業員を擁しています。同社は26か国に拠点を構え、その他の主要市場では代理店が事業を推進しています。

譲渡に関する売却額は公表されていませんが、「本合意に基づく譲渡は2020年7月を目途に、諸手続きが完了し次第速やかに行う」と公表しています。

独eppendrf社は1945年に医療機器メーカーとして設立されたライフサイエンス機器製造企業
今回、事業譲渡される「遠心機」の他にも「実験用消耗品」「細胞処理用機器」などライフサイエンス研究の幅広い機器の製造・販売を手掛ける。

電動工具事業には影響なし、経営資源を電動工具へ集中

今回の遠心分離機事業の譲渡に関しては「HiKOKI」ブランド 電動工具事業への影響が懸念されますが、遠心分離機の生産工場・販売ルート等は電動工具事業と独立していると考えられるため、今後の経営に大きな影響はないと予想されます。

特に、KKR傘下以降、工機HDは「マルチボルトシリーズ」以外の主要な電度工具新シリーズのリリースを行っておらず、肝心のマルチボルトシリーズそのものも新製品の開発が息切れ気味であり、電動工具事業への集中投資による新たな電動工具シリーズの開発やサービスの展開が期待されます。

遠心分離機事業は工機HD全体売上高の約5%

大きな影響が予想されるのは工機HD全体の売上高ですが、2018年3月期の事業別売上構成では全体売上高の95%が電動工具事業で構成されており、遠心分離機事業(ライフサイエンス機器)は5%程となります。

売上構成比で見る限り、今後の売上高もそこまでの影響はないものと予想されます。

日立工機、過去には「プリンタ事業」も譲渡

過去の日立工機は「電動工具事業」「遠心分離機事業」の他に「プリンタ事業」も保有していました。(画像は97年発売の日本語レーザプリンタ Typhoon24シリーズ)

1990年代までの日立工機は、これら3事業による順調な経営体制が続いていましたが、プリンタ事業強化の一環として1990年にコンピュータ周辺機器メーカー「米Dataproducts社」の買収と直後のバブル崩壊による経営危機の影響を受け、2002年にプリンタ事業を分社化・日立製作所プリンタ事業部門と統合、2004年にリコー株式会社へと売却しています。

日立工機時代のプリンタ製造工場は、現在も工機HD勝田工場 敷地内で「リコーインダストリー株式会社」として操業が続けられています。

事業規模の縮小が続く工機HD、今後KKRはどう動くのか

日立製作所売却直後の工機HDは「2020年度 売上高3,000億円」「最大で500億円規模のM&A(企業買収)1早期の業界売上高世界3位を目指す2と語っていましたが、KKR傘下後の経営状態を見ると下記のような経営の後退を表す動きが続いています。

  • エンジン工具の後継製品が無いまま、エンジン(OPE主要製品)分野の撤退3
  • 資本金の減少4
  • 単独売上高前年比割れ・赤字転落5、連結売上額 2017年以降非開示6
  • 中国生産工場「広州高壹工機有限公司」の閉鎖?7
  • 日立工機時代から続く「遠心分離機事業」独エッペンドルフ社への譲渡

これらの動きはKKR主導による事業再編・経営改革のようにも見えますが、同時期に買収されたカルソニックカンセイの動きと比較すると、経営悪化による事業縮小とも捉えられ、工機HDの経営は「企業価値を高めて売却する」PEファンドの基本方針に反する動きが続いています。

KKRが遠心機事業の売却を初めから予定していたのであれば、2017年の日立製作所からの売却時点で遠心分離機事業も売却し、新ブランドHiKOKIの展開直後から経営の一本化と電動工具事業への経営集中を進めるのが最も自然な流れであり、このタイミングでの事業譲渡は、KKRのイグジットプランに大きな変更があったものと推測されます。

工機HDは2020年でKKR傘下3年目となります。他のKKR企業買収の事例を見ると概ね6年前後で処理されており、工機HDはKKR資本から離れる折り返し地点を迎えています。

日立工機と同時期にKKRに買収されたカルソニックカンセイは、KKR主導による自動車部品メーカー2社の事業統合や組織再編を進めており、2022年の再上場を予定しています。8

今後、KKRが工機HDをどのようにイグジットするのか、事業規模拡大・企業価値向上の手法が注目されます。

脚注

  1. 日立工機のブランドが変わります|日立工機
  2. 日立工機、500億円規模M&A検討 KKR傘下入り後、成長戦略の一環 – SankeiBiz(サンケイビズ)
  3. 工機ホールディングスは電動工具および空気工具に注力します |工機ホールディングス株式会社
  4. 2019年5月9日「資本金の額の減少公告」による公告後、トップページから電子公告ページを削除
    https://www.koki-holdings.co.jp/ir/koukoku/pdf/20190509.pdf(リンク切れ)
  5. 工機ホールディングス株式会社 第97期決算公告|官報決算データベース
  6. 売上収益の推移(連結)|工機ホールディングス株式会社
  7. トップページから工場紹介リンクの削除
  8. カルソニックカンセイが新生「マレリ」で22年に上場へ|日刊工業新聞社
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