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数年前からハイブリットと呼ばれるイヤホンが注目されています。近年注目されているこのハイブリットイヤホンは、2つのドライバを搭載した高音・低音ともに優れるイヤホンして話題を集めています。今回はハイブリットイヤホンSIMGOTのハイブリッドIEM有線イヤホン「SIMGOT EM2」をレビューします。
- SIMGOTのハイブリットIEM有線イヤホン
- 0.76mm 2pin仕様でリケーブル対応
- DD・BAが共にフルレンジドライバ
- ボリュームゾーンの価格帯製品でありながら素晴らしい高音質を実現
目次
ハイレゾ対応の高音質有線イヤホン「SIMGOT EM2」
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最近のオーディオ事情はBluetoothデバイスの性能向上により、手軽に使用できるワイヤレスTWS Bluetoothが普及していますが、ハイレゾオーディオなどの高い解像度を求められる高級オーディオの分野では有線イヤホンが一般的です。
そんな中で数年前から注目を集めているのが、2つ以上のドライバユニットを搭載したハイブリッドイヤホンと呼ばれる方式です。ハイブリットイヤホンは、2つの特徴の異なるドライバを搭載することで広い音域を再現した比較的新しい方式です。
今回紹介するのはハイブリットイヤホンのボリュームゾーン 10,000円代で販売されているハイレゾ対応のハイブリット有線イヤホン「SIMGOT EM2」です。
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製品の特長「フルレンジドライバ×2のハイブリッドIEM」
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今回紹介するSIMGOT EM2は、ダイナミックドライバとバランスドアーマチュアドライバを1つづ搭載するハイブリッドイヤホンです。
ダイナミックドライバーには、SIMGOTのダイナミック型 最上位モデルEN700PROで搭載された10mmチタンコートダイナミックコアドライバーを採用しています。これはフルレンジドライバで音域の広い自然な音を鳴らすドライバーと評されています。
バランスドアーマチュアドライバには、KnowlesのRAF-32873を採用。こちらもフルレンジドライバです。
EM2はどちらのドライバもフルレンジを採用しています。よく見かけるハイブリットイヤホンは低音をダイナミック・中高域をバランスドアーマチュアにする構成が多いイメージがあるので、珍しい構成かもしれません。
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ハイブリットの実力に酔いしれる、見た目によらない実力派
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ここまでハイブリットイヤホンについて解説してきましたが、実際、私自身ハイブリットドライバのイヤホンは初体験です。
最近はTWS Bluetoothイヤホンの使い勝手の良さにハマってしまったこともあり、普通に使うならBluetoothイヤホンでも十分、と自分の中では一応の結論が出てしまっていますが、新しい方式のイヤホン「ハイブリット・インイヤー有線イヤホン」はどのようにきこえるかが気になるところです。
EM2には2種類のイヤーピースが付属しており、今回はバランス型イヤーピースを使用します。
EM2はハイレゾ対応イヤホンですが、最近のオーディオソースは専らAmazon Music Unlimitedばかりです。今回のイヤホン試聴に使ったのはこのアルバムです。
・el esperanka – Serph
・エイリアン☆ポップⅢ – Snail’s House
・鸚鵡- 日食なつこ
・You Are The Universe – Brand New Heavies
手始めにテクノ系のインストゥルメンタルを試聴したところ、低音と高音にそれぞれ得意な部分が感じられ、ハイブリットイヤホンならではの特徴を感じられます。それぞれのフォーカスに合わせてオーディオに埋没できる楽しさがあり、高音の明瞭さ、低音の余韻を十分に感じられ、今まで見えなかった音域が見えるようになったのが印象的です。
ボーカルが強い音楽では、しっかりと中音域のボーカルが押し出されながらも、背後に聞こえるドラム・ベース・キーボード・パーカッション・サックスのメリハリのある音作りが感じられます。良い意味でサウンドが弾んでいます。
総合的には全音域に対して広がりが強く、癖のないサウンドが印象的です。どこかが強くどこかが弱いイヤホンなどではなく、全体的に満遍なくサウンドを拾い上げる取りこぼしのないイヤホンです。
聞いていて最も印象を受けたのが、再生デバイスのイコライザの影響を非常に強く受ける点でしょうか。通常のイヤホンでイコライザをちょっと変えても「ちょっと聞きやすい程度になったかな」の変化に留まりますが、EM2ではイコライザの設定が少し変わると特性が大きく化けます。
EM2はフルレンジドライバの2並列構成で、出力バランスや感度・チューニングを微調整して巧みに統合しているのがポイントのイヤホンです。イコライザや音楽によってはシャリシャリが気になる音域が出たりもしますが、そのような場合はイコライザで落ち着かせるのが良いかもしれません。
SIMGOT EM2 製品仕様
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製品名 | em2 |
ドライバ構成 | ダイナミック バランスドアアーマチュア |
インピーダンス | 10Ω |
ヘッドホン感度 | 101dB |
周波数範囲 | 15Hz-40kHz |
定格電力 | 15mW |
歪み度 | <1% 101 dB |
カラー | 紫・緑・桃・透・黒 |
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付属品
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EM2の付属品は、本体・収納バック・保証カード・取扱説明書・コード・イヤーピース2種です。
非常にしなやかなケーブル、断線しにくいケブラー被覆
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非常にしなやかなケーブルで、折り目のクセが残りにくい素材で作られています。
ケーブルはOFC(無酸素銅)ケーブルに銀メッキを施した銀メッキ(SPC)銅線の4芯混合線が採用されています。このクラスでは比較的採用例の多い素材のケーブルです。
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コネクタは0.78mmの2pin仕様、好みでリケーブルも
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EM2は、0.78mmの2pinコネクター, pdcタイプでリケーブルできる仕様です。
付属のケーブルは高品質のSPCケーブルを採用しており、耐久性も高いので付け替える必要はないと思いますが、気分転換に他のケーブルに変更したり、Bluetoothレシーバーケーブルに変えるのもいいアイデアです。
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持ち運びは付属の皮ケースで
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EM2には革製の専用ケースが付属しています。非常にシンプルなケースで磁石が内蔵されておりしっかり蓋をすることができるので使い勝手の良いケースです。
ケーブルも非常にしなやかなので、適当に入れてしまっても絡みにくいのがgoodポイントです。
有線イヤホンの実力を堪能、万人向けながら音質重視
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初めてハイブリットイヤホンを試聴してみましたが、全体的に満遍ない音域を持つイヤホンでありながら、ほぼすべての音域がしっかりと主張しているという不思議なイヤホンでした。もしこれが単純な意味での高音質と表現するなら、おそらく間違ってはいないでしょう。
これはEM2のフルレンジドライバ構成によって実現される、正解の1つの形なのかもしれません。
さて、メーカーが記事の末になってしまいましたが、SIMGOTは中国広東省深センに本社を置く新興のオーディオメーカーです。今回のEM2は「洛神」と呼ばれる製品シリーズで、ほかにEM1, EM3, EM5が展開されており、EM5が最上位機種のようですが、日本ではEM2のみ販売されているようです。
今回のEM2を総括すると、ハイレゾ対応のハイブリットIEMイヤホンとして非常に優秀な製品です。オーディオの世界は高音質を求めればキリがありませんが、このEM2は満遍なく優秀なので手軽に高音質なイヤホンが欲しい場合やハイレゾ・ハイブリットイヤホンの入門機が欲しい、などの目的にピッタリの製品です。
まずは高音質な有線イヤホンを1本、と考えている方にはおすすめと言えるでしょう。