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USB PDコントローラIC CH221Kを使う、USB Type-Cコネクタから任意の電圧を取り出す方法

USB PDコントローラIC CH221Kを使う、USB Type-Cコネクタから任意の電圧を取り出す方法

PDコントローラ IC CH221Kを使ってUSB PDから任意の電圧を取り出す

以前、USB Type-Cコネクタを備えたUSB PD充電器から5Vを取る方法を解説しましたが、今回の記事ではUSB PD コントローラICと呼ばれる電子部品を使って5V以外の電圧を取り出す方法を解説します。

USB Type-C端子から単純に5Vを取る場合であれば、CC端子に5.1kΩのプルダウン抵抗を接続するType-C CurrentでOKですが、USB PDの規格に沿って9Vから20Vまでの電圧を取り出す場合には、ネゴシエーションと呼ばれる通信を行わなければいけません。

普通にPDのネゴシエーションを実装すると結構手間になってしまうのですが、今回使用するUSB PD専用ICを使用すれば、簡単にUSB PD充電器から任意の電圧を取り出せます。

今回の記事で使用するのはWCHのUSB PDコントローラ IC CH221Kです。WCHは中国のICメーカーですが、日本では秋月電子通商や中国系のディストリビュータであるLCSCから購入が可能です。

CH221Kの基本仕様

WCH CH221Kは、SOT23-6パッケージの6pin仕様のICです。

USB PD 3.0/2.0に対応しているので現行のUSB PD充電器やモバイルバッテリーから5V/9V/12V/15V/20Vの5種類の電圧の取り出しに対応しており、回路構成も抵抗4つとコンデンサ1つで完結できるシンプルな構成が強みのICです。

取り出す電圧の指定は、外付けの抵抗値を変えることで任意の電圧の指定が可能な構成になっています。

実際にCH221K使って12Vを取り出してみる

CH221Kを使って、USB PD充電器から12Vを取り出す回路を作ってみます。CH221Kで12Vを要求するには、47kΩの抵抗を実装する必要があります。

今回、CH221Kを実装するための回路基板を起こしているので、その回路で動作確認を行ってみます。

SOT23-6パッケージは表面実装の部品ですが、慎重に作業をすれば手はんだも比較的容易なサイズです。

USB PDで任意の電圧を取り出す最低限の部品実装が出来ました。一応、この回路には他の機能もありますが、その機能は別の記事で紹介します。

動作確認として、USB PD充電器を繋げて実際に回路を動作させてみました。CH221KがUSB PD充電器に12Vを要求し、上手く12Vを取り出せています。

CH221K(USB PDトリガ)を使う時の注意点

CH221Kは俗称としてPDトリガIC (またはPDデコイ)とも呼ばれており、USB PDから手軽に任意の電圧を取り出せるICとしてシンプルな小型製品やACアダプタで動く製品のUSB Type-Cコネクタ化などに使われています。

しかし、CH221Kを始めとするトリガICは、シンプルさ故に使いどころにも注意しなければいけないICです。

消費電力が大きいICなので、抵抗の選定に注意

CH221Kは動作時の消費電力が高く、WCHのCH22xファミリーの中でもCH224Kと並び高い消費電力仕様のICとなっています。

これはPDによる電圧変動に対してIC動作電圧を超える電圧を1kΩの抵抗に電圧を負担させる設計になっているためのようで、1kΩの抵抗は1/2W以上の許容電力を持つ必要があります。筆者はこの部分に3225サイズの1/2Wチップ抵抗を使用しています。

EPRとPPSは非対応

CH221Kは、28Vや48Vが出せるEPRや電流制御のPPSには対応していません。

取り出せる電圧は5V/9V/12V/15V/20Vの5種類の電圧のみに対応しており、その取り出せる電圧もUSB PDソースに依存します。

ソース側の最大電流を把握できない

USB PDソースはネゴシエーション時に最大電流を通知する仕組みを備えているのですが、CH221Kは電圧を要求するだけであり、最大電流仕様を把握する手段がありません。これは、CH221KのようなシンプルなPDトリガIC全般の問題になります。

最大電流が把握できないため、負荷が大きくなった場合に不意に電源が途切れる場合があり、また高温時に出力電流を絞るUSB PDデバイスを使用する際には、それに対応することもできません。そのため、CH221KのようなシンプルなPDトリガICを使用する機器は、低消費電力に使用するのがおすすめです。

抵抗でPDOが変わる仕様なので不意な電圧変更は考慮しておく

これもシンプルなPDトリガIC全般の話ですが、この手のPDトリガICは電圧モニタリング機能がないため、電圧変動をトリガICのみで検知できません。ただし、電圧であれば外付けの回路で変動は検知できるため、先ほどの電流よりは対応が容易です。

ただし、CH221Kに関しては外付けの抵抗によるアナログ電圧での制御となり、半田不良や抵抗の損傷によって抵抗値が上がった場合、最大20Vまで上昇する可能性があるため、動作電圧が変わってしまうことを前提として、事故がおこらないような回廊構成にする必要があります。

ネゴシエーション完了前に5Vが一瞬入るため回路の挙動には気を付ける

これはUSB PDそのものの挙動の話になりますが、ネゴシエーション前に一度5Vが出力されるため、その挙動に注意が必要です。

USB PDはネゴシエーションを行う前に、CC端子のプルダウンによって5Vが出力されてからネゴシエーションが始まるため、ネゴシエーション完了までは5Vが供給されることになります。

ソース側の最大電圧が足りない場合は最大電圧が出力される

PDトリガICはUSB PDソースに対して出力電圧を指示するICであり、変圧によって電圧を操作している訳ではありません。そのため、最大出力電圧は接続するUSB PDソースの仕様値に依存します。

例えば、12Vを取る構成にしたつもりで何らかの手違いで実際の要求は20Vなっていたが、USB PD 18Wのような最大出力電圧が12VのUSB PD充電器を接続していたために、たまたま12Vが出力されていたケースなどもあります。

それに気づかない場合、別のUSB PD充電器に変えた時に20V出力されてしまって機器を破損させてしまった、などのケースも想定されるため、USB PDトリガICを使う場合は、例え想定通りの電圧が取れていたとしてもUSB PD 45Wや60Wなどの20Vの出力仕様を持つUSB PDソースで動作確認を行うことをオススメします。

USB PD充電器などのUSB PDソースには出力仕様が記載されている。PDトリガICを使用する場合には、念のため20V仕様のUSB PD充電器でも動作確認しておこう。

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