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USB PD EPRを解説、USB Type-Cで140W/180W/240Wの大電力給電に対応する拡張規格【解説 USB PD】

USB PD EPRを解説、USB Type-Cで140W/180W/240Wの大電力給電に対応する拡張規格【解説 USB PD】

USB PDの100Wを超える給電を実現するUSB PD EPR

USB Type-Cは、スマートフォンやノートPC、タブレット、モニター、周辺機器など、幅広い機器で使われる給電規格として普及が進んでいます。その中でも、USB Type-Cで大きな電力をやり取りする仕組みが”USB Power Delivery”いわゆるUSB PDと呼ばれる規格です。

USB PDでは、一般的に20V/5Aの最大100Wが上限として扱われてきました。

最大100Wの出力は、多くのノートPCやタブレット、その他機器に給電を行うには十分な電力ですが、高性能ノートパソコンや大型モニター、多機能ドッキングステーション、産業機器などでは、さらに大きな電力が求められる場面があります。

そこで登場したのが、USB PD EPRです。

EPRとは「Extended Power Range」の略で、従来のUSB PDよりも高い電圧・電力を扱うための拡張仕様です。USB-IFの規格では、USB PDのRevision 3.1で最大240W給電に対応する大きな更新が行われ、従来の100W上限を超える用途にUSB Type-Cコネクタを採用することが可能になりました。

100WまではSPR、それ以上の電力ではEPRが使われる

USB PDでは、従来の100Wまでの範囲をSPR「Standard Power Range」と読んでいます。SPRでは、5V、9V、15V、20Vといった電圧が使われており、最大電力としては20V-5Aの100Wまで対応します。

拡張規格であるUSB PD EPRでは新たに28V、36V、48Vの固定電圧が追加されています。

これにより、28V/5Aで140W36V/5Aで180W48V/5Aで240Wの高出力給電が可能になります。EPRによる高出力化は電流を増やして大電力化するものではなく、電圧を高めることでUSB Type-Cの給電能力を拡張する仕組みです。

EPRは最大240Wという数字だけを見るとUSB Type-Cのコネクタとしては電力が大きすぎる印象もあるのですが、実際には電流を10Aや12Aに増やしているわけではなく、最大電流は従来の100W PDと同じ5Aです。そのため、ケーブルの導体発熱という観点では、EPRだからと言って急激に条件が厳しくなるわけではありません。

ただし、EPRでは最大48Vまで電圧が上がるため、注意すべきポイントは”大電流”よりも”高電圧対応”に移ります。

EPR対応ケーブル、対応充電器、対応機器が揃って初めて安全に利用できる規格であり、100W対応ケーブルをそのまま240W用途に使えるわけではない点に注意が必要です。

EPRを使うには充電器・ケーブル・機器のすべてが対応する必要がある

USB PD EPRで注意したいのは、給電側(ソース)だけがEPR対応であればよいわけではないという点です。

EPRを利用するには、電力を供給する充電器、USB Type-Cケーブル、電力を受け取る機器のすべてがEPRに対応している必要があります。

たとえば、240W対応充電器を使っていても、ケーブルがEPRに対応していなければ240W給電はできません。また、240W対応ケーブルを使っていても、接続先のノートPCが100Wまでしか受け取れない設計であれば、USB PD EPRによる電力供給は使われません。

USB PD EPRに対応するUSB Type-Cケーブル(最近よく見かけるマグネット着脱式USB Type-Cケーブル、発熱は厳しいけど便利に使えるアイテム|VOLTECHNO
140Wに対応するモバイルバッテリーなどは、対応する機器とケーブルを組み合わせることで始めて140Wの給電が可能になる

特にケーブルについては注意が必要です。USB Type-Cケーブルは外見だけでは仕様を判別しにくく、60W対応、100W対応、240W対応など、対応電力が製品ごとに異なります。また、240W対応ケーブルであっても、データ転送速度はUSB 2.0相当という製品も少なくありません。

USB PD EPRの対応機器は140Wの一部製品で対応、対応充電器・モバイルバッテリーであっても要注意

EPRは最大240Wまで対応する規格ですが、2026年現時点の市販製品を見るとEPR対応の中心は主に140Wであり、180Wや240Wの対応機器はクリエイター・エンタープライズ用途の先進的な高価格PCに限られています。

メーカ製品名USB PD EPR
AppleMacBook Pro 16インチ 2021年以降140W
AMDFramework Laptop 16240W
MSIPrestigeシリーズ 現行モデル140W
LenovoLegion 7a Gen 11 16インチ140W
ASUSROG Zephyrus G16/G14140W
ASUSAscent GX10240W
NVIDIADGX Spark240W

特に、240W対応のUSB PD EPR充電器の場合、一般的なACアダプタと同じサイズのACアダプタ本体にケーブル直付けされた”キャプティブ・ケーブル”と呼ばれる形態であり、現状では市販されている240WのUSB PD EPR対応ケーブルで240W給電を行えるソース側の機器はほとんどないものと考えられます。

また、140Wは一般的なUSB PD充電器と同じくGaNデバイス搭載の小型モデルが各社から展開されていますが、140W動作は発熱が大きいため、継続的な140W給電は30~60分の間だけの給電しか行えず、100Wや65Wの出力制限を行う製品も多い状態となっています。

普及は進み始めているが、対応製品は極僅かのUSB PD EPR

USB PD EPRに対応した製品はすでに市場に登場しており、大電力を必要とするノートPCを中心に普及が進んでいます。

ただし、現時点での対応製品の中心はUSB Type-Cケーブルであり、実際にUSB PD EPRに対応する機器は、一部の高性能ノートPCや高出力モバイル機器に限られています。

特に、最大240W対応を謳うUSB Type-Cケーブルは増えていますが、実際に240Wを出力できるUSB PD充電器や、240Wを必要とする機器はまだ多くありません。現実的には、まず140W前後のUSB-C充電から普及が進んでいる段階と考えると分かりやすいでしょう。

EPRは、USB Type-CでUSB PDよりも大きな電力を扱えるようにする拡張規格ですが、電流を大きく増やすのではなく、電圧を高めることで高出力化している点が特徴です。そのため、単に「240W対応」と書かれたケーブルを用意すればよいわけではなく、充電器、ケーブル、接続する機器のすべてがEPRに対応している必要があります。

総論として、USB PD EPRはUSB Type-Cの高出力化を進める重要な規格ではあるものの、現時点ではすべての機器が240Wで使える時代になったわけではありません。まずは140Wの給電が安定的に行われるような製品の普及が進み、そこから段階的に180Wや240WのUSB PD EPR機器が普及していくと想定しています。

参考

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