VOLTECHNO(ボルテクノ)

ガジェットとモノづくりのニッチな情報を伝えるメディア

USB Type-Cのコールドソケットとは?挿すまで5Vを出さない“安全なUSB”の仕組みを解説

USB Type-Cのコールドソケットとは?挿すまで5Vを出さない“安全なUSB”の仕組みを解説

USB Type-Cは「形が変わっただけのUSB」ではない

USB Type-Cというと、多くの人は「上下どちら向きでも挿せるUSB端子」や「最近のスマートフォンやノートパソコンで使われている充電端子」のイメージを持っていると思います。

USB Type-Cは従来のUSB-AやmicroUSBと比べるとコネクタの形状が大きく変わっており、表裏を気にせず挿せるようになったことで、スマートフォン、ノートパソコン、タブレット、モバイルバッテリー、充電器、周辺機器など、さまざまな製品で同じ形の端子が使われるようになりました。

しかし、USB Type-Cの違いは、単にコネクタの形が変わったことだけではありません。

従来のUSB-Aでは、基本的にUSB-A側が電源を供給する側として扱われていました。たとえば、パソコンやUSB充電器のUSB-Aポートは機器を接続するとすぐに5Vの電源が供給される考え方が一般的でした。

一方で、USB Type-Cでは、同じUSB Type-Cの端子同士の接続も想定した仕様になっています。USB Type-C端子を持つノートパソコン、スマートフォン、充電器、モバイルバッテリーの接続を考えると、どちらが電源を出す側で、どちらが電源を受け取る側なのかは、コネクタの形だけでは判断できません。

そのためUSB Type-Cは、ケーブルを挿した瞬間にいきなり電源を流すのではなく、まず接続相手を確認し、「電源を出す側」と「電源を受け取る側」を判断してから給電を始める仕組みが取り入れられています。

この考え方を理解する上で重要になるのが、USB Type-Cが備える「コールドソケット (COLD socket)」と呼ばれる仕組みです。

コールドソケットとは何か

コールドソケットとは、USB Type-Cの差し込み口に何も接続されていない状態では端子に電源を供給しない機能のことです。

従来のUSB-Aポートでは、基本的にポート側が5Vの電源を供給する側であり常に5Vが加わっていました。そのため、原則としてUSB-Aポートの電源端子は機器が接続されていない状態でも5Vが印可されています。

USB Type-Cでは、何も接続されていない状態やケーブルが刺さっただけの状態では基本的に電源端子に電圧が加えられていません。ケーブルで機器が接続され、接続相手が電源を受け取る機器だと確認されてから、はじめてVBUSに電圧が加えられる仕組みになっています。

何故、USB Type-Cにコールドソケットがあるのかと問うと、USB Type-Cのノートパソコンとスマートフォンを接続した場合、どちらが電源を出す側になるのか、どちらが電源を受け取る側になるのかは状況によって変わるためです。

コールドソケットとは、USB Type-Cが安全に電源を扱うための基本的な仕組みであり、接続相手を確認してから電源を供給する電源制御を前提にしたコネクタに求められる機能であるためです。この「挿すまで電源を出さない」考え方が、USB Type-Cの特徴のひとつと言えます。

ちなみに、コールドソケットと呼ばれる名称ではUSB-IFの規格書では定められておらず、規格書上ではUnattached.SRC状態や未接続状態でVBUSをsourceしない動作として扱われています。ただし、ICメーカーのUSB関連の技術資料ではこの挙動をCold socketとして表現しており、コールドソケットはUSB機器開発メーカーやユーザーサイド側の名称となっています。

USB Type-Cはまず「相手確認」から始まる

USB Type-Cでは、ケーブルや機器を接続した瞬間にいきなり電源を流すわけではありません。機器を接続したときに最初に行われるのは、「相手確認」です。

ここでの相手確認とは、接続された先にどのような機器があるのか、そして自分が電源を出す側になるべきなのか、電源を受け取る側になるべきなのかを確認する動作のことです。

この確認に使われるのが、USB Type-Cで新しく用意された「CC端子」です。

CCはConfiguration Channelの略で、USB Type-Cの接続状態を確認するために使われる信号線です。USB Type-CではこのCC端子を使って、接続相手の有無やどちらが電源を供給する側なのかを判断します。

たとえば、USB PD充電器のように電源を出す側は「私は電源を出せる側です」状態をCC端子で示します。一方、スマートフォンやUSB機器のように電源を受け取る側は、「私は電源を受け取る側です」の状態をCC端子で示します。この流れを簡単にまとめると、次のようになります。

  1. USB Type-Cポートにケーブルや機器が接続される
  2. CC端子を使って接続相手を確認する
  3. 電源を出す側と受け取る側の関係が決まる
  4. 電源を出す側がVBUSに5Vを供給する
  5. 必要に応じてUSB PDによるネゴシエーションで電圧や電力の交渉に進む

また、USB PDに対応した機器では、最初に5Vで接続が始まった後、必要に応じて9V、15V、20Vといった高い電圧 (USB PD)に切り替えるネゴシエーションが行われます。これも、いきなり高い電圧を流すのではなく、機器同士が対応状況を確認した上で行われます。

なぜコールドソケットが必要なのか

USB Type-Cでコールドソケットの仕組みが必要になる大きな理由は、USB Type-Cが「同じ形の端子で、さまざまな機器を接続できるコネクタ」のためです。

従来のUSBでは、基本的にUSB-A側が電源を出す側として扱われていました。パソコンのUSB-AポートやUSB充電器のUSB-Aポートに、スマートフォンや周辺機器を接続すると、USB-A側からmicroBやlightningに5Vの電源が供給される関係が分かりやすく決まっていました。

つまり、従来のUSBでは、コネクタの形を見るだけで「どちらが電源を出す側なのか」がある程度判断できました。しかし、双方が同じ形状のプラグであるUSB Type-Cでは事情が変わりました。

USB Type-C同士を接続した場合、見た目だけではどちらが電源を出す側で、どちらが電源を受け取る側なのかを判断できません。

たとえば、スマートフォンをUSB Type-C充電器につなぐ場合は、充電器が電源を出し、スマートフォンが電源を受け取ります。一方で、スマートフォンにUSB Type-C接続の周辺機器をつなぐ場合は、スマートフォン側が周辺機器に電源を供給することもあります。また、ノートパソコンはUSB Type-C充電器から電源を受け取ることもあれば、USB Type-C接続の機器に電源を供給することもあります。

もし、USB Type-Cポートが未接続の状態でも常に5Vを出していた場合、電源を出す機器同士を接続したときに、両方から電源が出てしまう可能性があります。また、想定していない機器やケーブルが接続されたときに、意図しない電源供給が行われるおそれもあります。

コールドソケットは、単に「待機中に5Vを出さない」だけの仕組みではありません。USB Type-Cが、充電器にも、パソコンにも、スマートフォンにも、周辺機器にも使えるようにするための、基本的な安全設計のひとつです。

また、USB Type-CではUSB PDによって、5Vだけでなく9V、15V、20Vといった高い電圧を扱う場合もあります。こうした高い電圧も、接続した瞬間にいきなり流れるわけではなく、まずは5Vで接続が始まり、その後に機器同士が対応状況を確認してから切り替えられます。

つまりコールドソケットは、USB Type-Cを安全かつ柔軟に使うための土台となる仕組みです。同じ形の端子で多くの機器をつなげられる便利さは、このような電源制御の仕組みによって支えられています。

USB-A to Cケーブルは「従来のUSBとUSB-Cの橋渡し」

USB-A to Cケーブルとは、片側が従来のUSB-Aで片側がUSB Type-Cになっているケーブルのことです。USB充電器やパソコンのUSB-Aポートを持つスマートフォンや周辺機器をUSB Type-Cで接続するためによく使われます。

USB-A to CケーブルはUSB-A側にCC端子が無いため、USB Type-Cが備えるCC端子を使って相手確認をする仕組みを持っていません。

USB-A to CケーブルのUSB Type-Cプラグ側には、USB-C機器に対して「これは従来のUSB電源に接続されています」と伝えるための抵抗が入っています。この抵抗によってUSB Type-C機器は接続先が従来USBの電源供給側であることを認識できます。

つまりUSB-A to Cケーブルは、USB Type-Cと同じ確認機能があるわけではなく、USB Type-Cプラグ側の抵抗によって、USB-C機器側にに従来のUSB-Aと接続であることを知らせているケーブルです。

たとえば、古いUSB-A充電器にUSB-A to Cケーブルを接続し、USB Type-Cスマートフォンを充電する場合、電源を出す側は基本的にUSB-A充電器です。スマートフォン側は、USB Type-Cプラグ内の抵抗を通じて、従来USBの電源に接続されたことを判断し、5Vの電源を受け取ります。

USB Type-Cを電子工作や自作機器を使う時に注意したいポイント

USB Type-Cのコールドソケットの仕組みは、電子工作や自作機器の電源としてUSB Type-C端子を使うときにも関係してきます。

注意したいのが、「USB Type-Cコネクタを付けて、VBUSとGNDだけをつなげば5Vが取れる」と考えてしまうケースです。

従来のUSB-AやMicro USBでは、電源用途だけであれば基本的に5VとGNDを繋げるだけで5Vを取り出すことができました。その感覚でUSB Type-Cコネクタを使うと、USB-A to Cケーブルでは動くのに、USB-C to Cケーブルでは電源が入らないことがあります。

USB Type-Cから5Vを受け取る機器を作る場合、受電側の機器は「私は電源を受け取る側です」と充電器側に知らせる必要があります。そのために使われるのが、CC端子に接続するプルダウン抵抗です。

一般的なUSB Type-Cの受電側の回路では、CC1とCC2のそれぞれに5.1kΩ程度のプルダウン抵抗をGNDに接続します (Type-C Current)。これにより、USB Type-C充電器やUSB Type-Cポートは、接続先に電源を受け取る機器があると判断し、VBUSに5Vを出力します。

電子工作向けのType-Cジャックには、VBUSとGNDだけを取り出せる2ピンタイプのものがあります。見た目はUSB Type-C端子であり、一見すると基板実装も容易なので、これを使えばUSB-C充電器から簡単に5Vを取れそうに見えます。

しかし、このような2ピンタイプの端子は、CC端子で受電側と認識させるためのプルダウン抵抗を実装できないため、USB-C to CケーブルでUSB PD充電器に接続しても、給電側が接続相手を認識できないため電源供給も受けられません。

一方で、USB-A to Cケーブルを使った場合は、従来USBの電源として常に5Vが供給されているため、同じ2ピンタイプの端子でも5Vが取れてしまいます。そのため、「AtoCケーブルでは動くのに、CtoCケーブルでは動かない」現象が起こります。

この現象は、USB Type-Cの不具合というよりも、機器側がUSB Type-Cの接続確認に正しく対応できていないことが原因です。

また、USB PDで9V、15V、20Vなどの電圧を扱いたい場合は、抵抗だけではなくUSB PDに準じたネゴシエーションを行う必要があります。

USB Type-Cは電源端子としても活用できるコネクタですが、従来のUSB-AやmicroBと同じ感覚で使うと、思わぬところで電源が入らないトラブルに合うことがあります。特に自作機器では、AtoCケーブルだけでなくCtoCケーブルでも確認し、USB Type-C搭載機器として確実に動作するかを確認しておきましょう

参考

Return Top