最近の電動工具メーカーは、バッテリーの汎用性を活かして家電製品などにも展開するようになりました。代表的な例ではコーヒーメーカなどの家電を始め、Bluetoothスピーカなどのデジモノまで発売するようになりました。
このまま電動工具のデジタル化が進んでいけば、電動工具メーカーでスマートフォンなんか作っちゃうんだろうな、なんて思っていたんですが、既にアメリカのDeWaltがスマートフォンを作っていました。
目次
屋外作業で使える高耐久スマートフォン!
最近の現場では、業務改善や更なる効率化のため、スマートフォンの活用が進んでいます。と言うより使わざるを得ない状況になってきていると言うべきでしょうか。
現場と事務所・倉庫の連絡には、LINEなどのSNSアプリが使われるようになり、現場管理などに使われる施工写真などもスマホで管理されるようになりました。
しかし、作業現場は水やチリなどが舞っていたりするので、スマホにとっては過酷な環境となります。スマホも安くはなくプライベートでも使用する物なので、いざ壊してしまうと大変です。
このような現場の変化に対応するように米国の電動工具ブランドのDEWALTは、過酷な現場作業でも使える高耐久スマートフォンを開発しました。
手袋着用でも操作できるグローブモードを搭載!
他のスマホメーカーから高耐久スマホは販売されていますが、明確な違いになってるの部分がこのグローブモードだと思います。
DEWALT Phoneにはグローブモードという機能が搭載されており、手袋をした状態でもスマホを操作することが出来る機能が搭載されているようです。(手袋の厚みに限界はあるのでしょうが)
スマホを作業するたびに手袋を脱いだり、導電糸を縫い付けたりする必要もないのでこれは非常に便利です。
工具よりも高い耐じん水中形のIP68!
最近のインパクトドライバーは防じん防水のAPTやIP56などがウリになっていますが、このDEWALT Phoneはそれを超える耐じん水中形のIP68となっています。
雨の中や、コンクリート粉・木粉が舞う現場などでも気兼ねなくスマホを使う事ができます。
ただし、IPX6には対応していないようなので、水の強い噴流などには注意が必要です。
MIL-STD-810Gに準拠した耐衝撃性
DEWALT Phoneは2mからのコンクリート落下に耐える事の出来る性能を持っています。
また、米国防総省が定める基準であるMIL-STD-810Gに準拠しており、これは軍用車両やジャングル戦などの過酷な使用を想定した試験をパスした製品のみに与えられる認証です。
液晶パネルにドリルを当てても問題なし!ゴリラガラス
ゴリラガラスとは米国の材料科学企業であるコーニング社が開発した強化ガラスの事です。
ゴリラガラスは一般的なガラスと比べ6倍以上の強度を持ち、非常にキズが付きにくく、キズがついても目立ちにくいという特徴があります。
コネクタカバーを守る非接触充電Qi
防水ケータイと言えば消耗しがちな防水カバーです、しかし1~2年も使うとカバーのゴムが千切れてしまうために防水機能がなくなってしまいます。DEWALT Phoneはその点も考えてワイヤレス給電Qiに対応しています。
ワイヤレス充電であれば、充電コネクタやカバーに異物が入って充電できなくなってしまうという事もありません。
ちなみに、ワイヤレス給電とはスマホを充電器にかざすだけで充電することが出来る充電機能です。docomoなどではおくだけ充電という名称がついており、iPhoneにもワイヤレス給電に対応した充電ケースが販売されています。
長期間の作業でも使える3950mAhの大容量バッテリー
DEWALT Phoneは3950mAhの大容量バッテリーを搭載しています。
Sonyの最新モデルXperiaXZのバッテリー容量が2900mAhですから、それより1000mAhも大きいバッテリーを搭載していることになります。
最近では電動工具のバッテリーを使用したモバイルバッテリーなどもありますが、荷物やケーブル類がごちゃごちゃしてしまうのでスマホの大容量バッテリーが一番安心できます。
買ったら日本で使える?
さて、ここまでDEWALT Phoneの魅力を紹介してみましたが、実際のところ日本で使う事は出来るんでしょうか。
DEWALT Phoneの紹介ページには、以下の通信方式とバンドに対応していると書かれています。
- LTE-FDD Band :1/3/7/20/28
LTE-TDD Band : 39/40/41 - WCDMA(3G) : 850(5)/900(8)/1900(2)/2100(1)MHz
GSM(2G) : 850/900/1800/1900MHz
日本では主にLTE-FDDとWCDMAが主流です。
そのため、LTE-TDDはまだ日本では未対応のためほとんど使用できません。また、GSM方式も日本のキャリアと方式が違うため使用できません。(片方のSIMは2G専用のためDual SIMを生かすことが出来ません)
では、DEWALT PHONEが日本のキャリアに対応しているか確認してみます。
docomo
docomo LTE 1/3/19/21/28
docomo WCDMA 800(6,19)/1800(9)/2100(1)MHz
ドコモではLTEが1/3/28、WCDMAが1に対応しているため、とりあえず使用することはできるかもしれません。しかし、LTE、WCDMA共に1GHz以下の周波数帯のバンドに対応していないため、電波は若干弱くなることが推定されます(700MHz帯のband28の展開次第で良くなるかもしれません)。
また、音声通話を使うWCDMA(3G)も高周波帯の2100MHz(1)にしか対応していないため、一部地域では音声通話の電波がつかみにくいかもしれません。
au
au LTE 1/18/21
au CDMA2000
auの場合はLTEが1のみ対応、3GはCDMA2000という異なる方式のために電波を受信できないため、auではDEWALT PHONEを活用することは出来そうにありません。
SoftBank
SoftBank LTE 1/3/8/28/41
SoftBank WCDMA 900(8)/1500(11)/2100(1) MHz
ソフトバンクではLTEが1/3、4Gとして41、WCDMAとして900(8)/2100(1)の計5本のバンドに対応しており、国内キャリアではDEWALT Phoneを最も快適に使えそうです。
特に、WCDMAの900MHz(8)に対応しているため、ある程度の通信品質は確保することが出来そうです。また、LTE-TDD方式のband41にも電波的には対応しているため、使えるとなればそれなりに高速なLTE通信が出来そうです。
現時点でSoftBank系のSIMカードを調達するにはSoftBank契約・Ymobile契約・U-mobile Super契約のどれかになります。
まとめ
さて今回紹介したDEWALT Phoneですが、スペックはCPUはMT6735でメモリが2GBとミドルクラスに相当するスマホであり、そこまで高性能ではありません。
しかし、このスマホのコンセプトは「現場作業で使えるスマホ」であり、高スペックや高解像度を抑えて、その分高耐久性の素材や高容量のバッテリーを採用するなど、明確な差別化が図られています。
とくに作業性を損なわないグローブモードや、緊急時に自動で発信を行う機能が搭載されているなど、電動工具メーカーならではの独自機能が搭載されています。
日本ではまず間違いなくDEWALT Phoneを使っている人はいないでしょうから、現場作業に適した個性的なスマホが欲しい方などはいいかもしれません。日本でホントに使えるかはわかりませんが…
ちなみに、DEWALT PHONEのようなMIL-STD-810Gを取得した、頑丈さをウリにした高耐久スマホの事をラグドフォン(Rugged Phone)と呼ぶそうです。
海外では採掘現場や僻地のプラントなど、日本より過酷な作業現場も多そうですから、このような高耐久スマホの需要が高いのかもしれません。