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電動工具を揃えるならコード式?充電式?
電動工具の動力源はAC電源で動く電源コード式とリチウムイオンバッテリーで動く充電式の2種類に分けられます。
電源コード式は工具本体の価格が安くバッテリーの消耗を気にする必要が無い利点があるものの、電源コードの付け替えや取り回しの悪さの欠点があり、複数の電動工具を使った作業では煩わしく感じてしまうこともあります。
現在の電動工具の主流は充電式です。取り回しの良さや電源の無い場所でも使える利便性から、充電式に移行するユーザーも多く、コストの面を気にしないのであれば充電式の電動工具を選ぶのがおすすめです。
ただし、充電式の電動工具に関しては、メーカー毎の充電式シリーズや電圧の違いによって使用できる機器が制限されてしまうので、購入する際には1社のブランドに統一して揃える必要があります。
電動工具だけではなく清掃機器やアウトドアにも工具用バッテリーを活用したい場合には、バッテリーシリーズの製品ラインナップを念頭に最初の一台を選ぶのがおすすめです。
電動工具を使った木工DIYの作業について
作業 | 内容 |
---|---|
締結・穴あけ | 木材同士のネジ接合や金具取付を行う。 最近は接合用のDIYツールも普及しているので締結工具だけでも十分実用的なものができる |
切断 | 木材を切断して目的のサイズに切り出す作業。 木材切断用の刃をモーターで駆動するため危険性も高いので注意 |
切削 | 溝入れ・仕口加工・飾り面取り等の構造・装飾的な加工を行う。 切削加工は慣れが必要で危険性も高いため入念な下準備と安全対策が必要 |
研磨 | 木材表面を紙やすり等で細かく削り平滑にしていく加工。 作業後の仕上げや塗装前の下準備として作業を行う。 |
まずは締結工具からはじめよう【初心者向け】
木工DIYの基本こそ、ネジを使った木材同士の締結作業です。ネジ締結は比較的作業の安全性も高く、応用の幅も広いのでまずはDIYの第一歩として締結関係の工具やアクセサリから揃えましょう。
DIYのネジ締結の場合、SPF材と呼ばれている柔らかい木材にネジ締めできる程度の締結力があれば良いので、過度な高性能モデルを購入する必要はありません。低価格のインパクトドライバでも十分作業できます。
木材切断を行ってくれるホームセンターも増えているので、図面を書いたら切断は店舗でやってもらって、組み立ては家庭で行う方法で手軽に木工DIYを楽しむことができます。
最近はLABRICO(ラブリコ)やディアウォールのようなDIYパーツも豊富なので、締結工具と店舗カットだけでも本格的なDIYを楽しめます。
【初心者】インパクトドライバ:締結工具
木材DIYで一番初めに購入したい電動工具こそ、ネジの締結に使うインパクトドライバです。
- これがないと木材DIYは始まらない
- 木ネジの締結に最も適した電動工具
- 穴あけ作業は苦手だが、ネジの下穴程度なら問題なし
- 先端ビットを交換すれば締結以外の作業にも対応できる
- 1台目の電動工具になる場合が多いので、充電式のインパクトを選ぶ場合は吟味しよう
「ネジの打ち込みくらい手作業でもできるでしょ」と考えてしまう方も多いんですが、木ネジの打ち込みには最低30N・m程度のトルクが必要です。手回しドライバーの木ネジ締結は5N・m程度のトルクしか出せないので、木材にネジを打ちこむならインパクトドライバーは必須の電動工具です。
先端ビットを交換すれば、ねじ止め以外にも穴あけ・研磨・磨き等の幅広い作業に活用できるので、DIYがひと段落した後でも日常生活に役立てられる万能電動工具です。
インパクトドライバは一番初めに購入する事が多い電動工具なので、「一番良い(安い)ものを!」と性能や価格重視で選びがちになってしまいますが、後の買い足しで製品ラインナップに不満に感じてしまうことも多いので、性能そのものよりもバッテリーシリーズの展開数で選ぶのもおすすめです。
【初心~中級】ドライバドリル:締結・穴あけ工具
穴あけ作業やビス止めに使用する工具がドライバドリルです。継続して高いトルクを加えられる特徴があり、綺麗に穴あけできます。
- 木工錐やホールソーで大きい穴を空けるのに使う
- クラッチでビスの絞め付け過ぎを防げる
- コーススレッドのような長いネジの締め作業は難しい
- 木ネジの下穴空け程度なら無くても良い
ドライバドリルが得意とするのは木工錐や自在錐・ホールソーのような大径穴あけを行う作業です。低速で高いトルクを加えながら穴を空けるので、摩擦による焼けが少なく綺麗に穴を空けることができます。
回転負荷に応じて回転の伝達を止めるクラッチ機能も搭載しているので、小さいビス止めの連続打ち込み作業にも適しています。
ただし、木ネジの締結に対しては回転時の反発力が強く使いづらさも目立ち、コーススレッドのような長いネジの締結作業に対してはインパクト程使いやすくありません。
木ネジの下穴を空ける程度の作業であれば、インパクトドライバーに装着するドリルビットでも十分代用できるので小型低出力のドライバドリルの優先順位は低くなります。
材料切断で本格的なDIYの第一歩【中級者向け】
木工DIYに慣れてくると、自分の思った形で材料を切り出したくなると思います。
木材切断を自在に行えるようになれば、1カットごとに料金を払うような店舗切断の煩わしさが無くなり、用途に合わせた合わせ切断もできるようになるのでDIYの幅は大きく広がります。
DIY用途的には、ツーバイ材と厚さ数センチ程度の合板を切断できる仕様を備えていれば実際の木材切断で困ることは無いので、過度に大きな電動工具を選ぶことはせず、使いやすい最適なサイズの切断工具を選ぶのがおすすめです。
切断工具に関しては、DIY向けの充電式製品が少ないので電源コード式かプロ向け充電式製品のどちらかを選ぶことになります。
【中級】丸ノコ:切断工具
高い精度で木材の直線切断を行う電動工具が丸ノコです。
- 高い精度で直線切断できる
- ベースを傾ければ傾斜切断にも対応する
- 鋭い刃が高速回転しているので取り扱いには注意
- 木材以外の切断には使用しないこと
- 切りくずが大量に発生するので後始末も忘れずに
丸ノコが得意とする作業は直線切断です。チップソーの高速回転とベースの安定した抑えで高い精度の直線切断を行えるのが特徴です。
丸ノコを上手く使うことができれば、多角形形状の棚やテーブルを作ったり欠き取り作業なども行えるようになり、木工DIYの作業の幅は一気に広がります。
手軽に使える電動工具ですが事故も起きやすく、毎年のように丸ノコによる重傷者が発生する電動工具です。丸ノコは本格的な木工DIYには避けて通れない製品なので、万全の安全対策を講じた上で作業を行うようにしましょう。
【中級】ジグソー:切断工具
自由自在に木材を切断する電動工具がジグソーです。曲線の切り出し切断に使用します。
- 曲線切断や窓抜き切断ができる
- ブレードを変えれば金属・樹脂の切断にも対応する
- 切断工具としては比較的安全性が高い
- 切断面が荒くなるので仕上げは必須
ジグソーは細いブレードの往復運動で切断する切断工具で、イメージとしては電動のこぎりに近い工具です。
製品本体が軽くて取り回しに優れているので、板材の切り出しやツーバイ材の角に丸みをつける作業にはジグソーが活躍します。
ただし、ジグソーの木材切断は目立つ場所を切り出すことが多く、切断面も荒くなるのでサンドペーパーを使った仕上げ作業が必須です。
【中級】糸のこ盤:切断工具
手のひらサイズの木材加工に適した電動工具が糸のこ盤です。木材小物や工芸品の製作に使用します。
- 曲線切断や窓抜き切断ができる
- 立体的な切り出しや木材工芸に最適
- 作業サイズは切断サイズに制限される
- 切断面が荒くなるので仕上げは必須
- 振動・騒音が大きいので注意
糸ノコ盤とは複雑な曲線切断を行うための電動工具です。
糸ノコと呼ばれる細い刃で木材を切断するので、手のひらサイズの木材切り出しに対しても小回りが利くので、細かい木材切断に強みがある電動工具です。
ほかの切断工具と異なり、DIYよりも工芸用途寄りの切断工具ですが、装飾性が強い細かな切断加工に対しては代用の効かない電動工具です。
【中級】サンダ:研磨工具
切断面の仕上げや塗料を塗る前の研磨加工に使う電動工具がサンダです。ベース面に紙やすりを取り付けて研磨します。
- 手作業のやすり掛けよりも素早く研磨できる
- 広い面や大量にやすり掛けするのに便利
- 用途や仕上げ方法によって種類がある
- 研磨力が高いので削りすぎに注意
木材そのままの状態で完成させるのもDIYらしい味のある方法ですが、より完成度を高めたり長く使うためには仕上げ作業は欠かせません。
サンダは紙やすりによる木材の表面研磨を効率的に行うための電動工具です。木材の表面をやすりで仕上げることで肌触りも柔らかくなり、ニスや塗装などの表面塗装のなじみも良くなります。
用途によってオービタルサンダ・ランダムサンダ・ベルトサンダ等の種類があるので、適切なサンダを選ぶようにしましょう。
サンダが得意とするのは広い面の研磨作業に対してなので、曲面の研磨に対してサンダを使うと削りすぎてしまいます。その場合はフラップホイールやスポンジヤスリなどを使って柔軟に作業を進めていきましょう。
これを使いこなせたら一流のDIYer【上級者向け】
より規模の大きくて難易度の高い木工作業を行うためには、効率的な素早い作業や、特定作業専用に作られた電動工具を使いこなさなくてはいけません。
これらの電動工具を使いこなせれば、一般家庭のリフォーム作業や材木屋が扱っている高級無垢材を加工した作業も行えるようになり、DIYユーザーを超えて職人と呼ばれても良いレベルになります。
もちろん、これらの工具を使いこなすためには電動工具を扱う腕だけではなく、適した木材の選定や調達ルートの開拓・施工知識・デザインなども必要になるので単純に製品を買っただけでマスターできる訳ではありません。
【上級】卓上スライド丸ノコ:切断工具
全ての木工DIYユーザーの憧れとも言える電動工具が卓上スライド丸ノコです。
- 定型サイズの繰り返し切断や高精度の切断作業が得意
- フロア材切断や合わせ切断作業の強い味方
- 切断可能サイズは製品仕様に制限される
- 使い方の習得は容易だが、設置場所や運用性がネック
卓上スライド丸ノコは、丸ノコに上下アームとスライドレールを付けた切断工具で、刃が左右にぶれない高い切断精度を備える直線・傾斜・角度・複合切断に対応する電動工具です。
ツーバイ材の定型切断やフロア材の高精度切り出し作業に強く、数多くの切断工程が必要なDIY作業を一気に効率化できます。
切断対応サイズはチップソーの対応径とスライド量に制限されるので、製品カタログを確認してどれくらいのサイズが必要か念入りに確認しましょう。
【上級】トリマ:切削工具
溝堀や飾り面取り・窓抜き作業などに使用する電動工具です。
- 溝堀や側面の装飾切削に使用する
- 曲線切断や窓抜き切断もできる
- 数ある電動工具の中でトップクラスに危険
トリマーは木材切削に使用する電動工具です。溝を付けて構造的な機能性を持たせたり、角に装飾要素の強い切削を施したりすることで木工製品の見栄えを向上できます。
先端には木材切削ビットが取り付けられていて、30,000回転/分を超える強力な回転力で木材を削り取っていきます。
角に装飾性を持たせる場合には、面取り用ビットを装着して使用します。
トリマーは構造上不安定な箇所に使用することが多く、扱い方を1つ間違えるとキックバックやビットの破断などによって重大な事故に発展しやすいので細心の注意を払いましょう。
【上級】電気かんな :切削工具
木材の平面を均一に切削する電動工具が電気カンナです。
- 木材歪み取りや表面研削に使う
- 無垢材から板材を作るのにも活躍
- 回転刃は容易に皮膚を削ぐので注意
- 上手く平面に仕上げるには慣れが必要
- 木くずが大量に発生する
カンナと聞くと、大工さんが「シャッ シャッ」と作業しているイメージが頭に浮かびますが、電気カンナはモーターの強力な回転運動で木材表面を切削する電動工具です。
手作業で使うカンナは木材の節の方向にしか使えませんが、電気カンナは節の有無に関係なく木材表面を切削できます。
DIYでの電気カンナの用途としては、無垢材の歪み粗面を解消したり板厚を薄くしたりと加工前の下準備的な作業に使用します。
本格的に電気カンナを使用すると尋常じゃない量の切りくずが発生するので、大容量の集じん機を準備するのがおすすめです。