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2022年2月1日

電動工具バッテリーを急激に劣化させる原因と長持ちさせる使い方

電動工具バッテリーを急激に劣化させる原因と長持ちさせる使い方

近年は電動工具のコードレス化が進み、ほとんどの電動工具はバッテリーで動くようになりました。コードレス化によって取り回しが良くなった一方で、急にバッテリーが使えなくなったことで作業が止まってしまったという経験のある方も多いと思います。

バッテリーが劣化を引き起こす原因や現象について解説していきましょう。

水によるバッテリーセルの浸水

バッテリーが故障する原因として最も多いのが、バッテリー内部で水が浸水するによるバッテリーセルの破損です。

マキタ・日立のリチウムイオンバッテリー

これは、バッテリーの金属端子冷却口部分から、水や異物(湿った木くず)などが浸入し、内部のバッテリーセルそのものを破損させてしまう故障です。この破損は、水が入ったからと言ってすぐに壊れるものではなく、水によってじわじわと内部放電して最終的に破損してしまう故障になります。

憂慮すべき事に、近年では防水・防じんを謳うaptIP56規格などに対応した電動工具が開発されていますが、肝心のバッテリーはこれらの規格に適合しておりません

防水の表記については実際に工具を使用するユーザーとしては「バッテリーも防水である」と誤解を受け、バッテリーを破損させる誤った使い方をしやすい原因の一つとなっています。

マキタapt 日立工機IP56
マキタのaptや日立工機のIP56など電動工具各社は防水・防じんをアピールしているが、バッテリーそのものはこれらの規格に適合していない。

一度水が浸入し、バッテリーセルが破損してしまえば、もう復活させる方法はありません。そのため、現在までに防水バッテリーは存在していないため、水が舞う作業場などでは取り扱いには注意しなければいけません。

この故障を防ぐ方法としては「水が舞う環境下で使用しない」「万が一水が入ったらすぐに乾燥させる」のような使い方をしなければいけません。保管時にホコリが入らないようにするためにカバーを常につけておくのも有効です。

落下や衝撃によるバッテリーセルの破損

電動工具のバッテリー投げたり落としたりと荒く使ってしまうことも多いですが精密機器と言うことを忘れてはいけません。高所からの落下もバッテリー破損の原因となります。

通常の落下でバッテリーが破損することはほとんどありませんが、ハンマーやレシプロソーなどの本体重量が重い電動工具をバッテリー側から落とすと、バッテリー自体に大きな衝撃が加わり破損してしまう可能性があります。

この破損ではバッテリーセル自体が潰れてしまったり、バッテリー同士を繋げている溶接部が外れることもあります。

衝撃の他にも、バッテリーそのものを傷つけてしまう事にも注意しましょう。

非常に危険なパターンとして、バッテリーを板に乗せて作業台にして丸ノコでバッテリーごと切れ込みを入れてしまったり、釘打ち機で釘を打ち込んでしまうパターンなどもあります。

リチウムイオンバッテリーは非常に高いエネルギーを持っており、このような方法でバッテリーを傷つけてしまうと、バッテリーの破裂発火する可能性があります。非常に危険なのでバッテリーを投げたり、台にするのは控えなければいけません。

バッテリーの初期不良

バッテリーが壊れてしまう不良の中には、バッテリーそのものの初期不良も考えられます。

バッテリーの初期不良としては、搭載されている電子回路の不良・バッテリーセルの不良・バッテリーセルを繋ぐスポット溶接の不良などがあります。使用しているユーザーがこれを判別したり修理する方法は危険が伴い、推奨されません。

また、電動工具のバッテリーは多数のバッテリーセルを直並列にして構成されているため、バッテリーの故障率はその大きさ分だけ高くなっています。

破損させた原因が思い浮かばず、初期的にバッテリーが使えなくなった場合は販売店に修理や交換の対応をお願いしましょう。

長期保管や使い方によるバッテリーの早期劣化

見逃されがちなのが、長期保管や使い方によるバッテリーの早期劣化です。始めは問題なく使用できていても、早い段階で作業量が非常に少なくなってしまい、寿命間近のバッテリーと同じような状態になってしまいます。

原則として、バッテリーは生ものであると考えなければなりません。製造されてから時間が経てば容量も少しずつ減少していきますし、保管環境が悪ければ劣化は急速に進行します。

販売店の隅に置かれた色あせた工具や型落ちした特価品などは長期在庫でバッテリーが劣化している場合もあり、使い始めてから非常に早い段階で寿命になる場合もあります。

また、電動工具の使い方によってもバッテリーの早期劣化が発生する場合もあります。

バッテリーはに弱く、発熱したバッテリーをそのまま充電、放電するとバッテリーは非常に早く劣化します。バッテリーは同じバッテリーを連続使用することを避け、熱が発生しないような使い方を心掛ける必要があります。

バッテリーが使えなくなった時はどうすればいいのか

劣化したバッテリーを再び使用できるようにする方法はありません。

修理や分解などを試みるのも危険です。扱い方を間違えるとショートやスパークと言った発火の原因にもなり、水濡れや落下・外傷などによるバッテリー破損の場合は、破裂する可能性も0ではありません。この場合、万が一発火しても問題ない場所に保管して様子を見ましょう。

バッテリーの初期不良であれば、販売店に持って行って修理や交換対応をお願いしましょう。マキタではマキタ営業所や取扱店、日立工機の2年保証対象品であれば修理申し込みなどでスムーズに交換対応が可能です。

電池の保管場所には要注意
過充電・過放電はそこまで気にしなくても良い

リチウムイオンバッテリーの長寿命化のポイントとしてよく紹介されているのが、50%程度の容量にして保管するというものです。これはAppleのバッテリーに対するガイドラインにも記載されている方法で、満充電状態で保管した場合のバッテリーの劣化を防止する方法です。しかし、この方法は数か月~数年の長期保管の場合には有効ですが、2,3日の保管であればこれを意識する必要はほとんどありません。

過充電や過放電に関しても、バッテリーの充電器や本体機器側にその状態を防ぐ機能が内蔵されています。基本的に、充電完了を表す100%の状態は、過充電状態からは少し下の状態を表しており、基本的にはユーザーが充電の状態について気にする必要はありません。

電池の保管時に劣化を引き起こす最大の原因は、が挙げられます。

直射日光の当たる場所や、自動車のダッシュボードに放置、暖房の近くでの保管など高温の場所での放置は、短い時間であっても確実にバッテリーの劣化の原因になります。特に、バッテリーを装着する部分が密閉されるタイプの電動工具は、放電時の発熱が劣化の原因となります。

使用したバッテリーは作業終了後に取り外すことを心掛けて、涼しくて風通しの良い場所に保管するように心がけ、35℃以下の場所で保管するようにしましょう。

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