釘打ち機と言えば、コンプレッサーをホースで連結して圧縮空気を動力源にしたエア釘打ち機が一般的だ。
フィニッシュやピン釘など細い釘では電動釘打ち機が販売されているが、一般的なN釘やCN釘などの連結釘を使用できる電動釘打ち機は販売されていない。
しかし、海外では既にモーターによるコードレス電動釘打ち機が販売されており、普及も進んでいるようだ。
今回紹介するのは、Metabo HPT(旧 日立工機USA)で販売するコードレスフレーミング電動釘打ち機『NR1890DC』だ。
本記事で紹介する製品は米Metabo HPTの情報を元にしております、工機HD日本法人への直接の問い合わせはお控え下さい。
目次
釘打ち機の中で空気を圧縮、90mm対応の打込み力
Metabo HPTが販売するコードレスフレーミングネイラ『NR1890DC』は、木造住宅の躯体工事などに用いるフレーミングネイルを使う釘打ち機だ。
NR1890DCがこれまでの電動釘打ち機と異なっているのは、木造住宅の骨組みや羽目板など、内装以外の大工工事に使用する太く長い釘に対応した点だ。
バネを使わない新方式、釘打ち機の中に圧縮空気を内蔵
『NR1890DC』は、工具本体の中にあるシリンダ内の空気を圧縮する構造となっていて、バネを使用した一般的な電動釘打ち機よりも力強い打ち込みが可能になっている。そのため、ピン釘や仕上げ釘よりも太くて長い「フレーミングネイル」の打ち込みに対応した。
これまでのコードレスタイプの釘打ち機と言えば、仕上げ釘やコンクリート鋲打ち込み用の釘打ち機が一般的で、木造住宅の建築工事にはとても使用できなかった。しかし、NR1890DCの仕様であれば、電動モーターと言えど建築工事への使用も現実的になってくる。
ブラシレスモーター採用で1充電700本打てる作業量
気になるのは1充電当たりの作業量だが、その点も心配せずに済みそうだ。
6.0Ahのバッテリーでは、1充電あたり最大780本の釘を打つことができ、バッテリーの充電完了時間までは十分に作業する事が可能だろう。
対応釘はフレーミングネイル、JIS適合釘には非対応
NR1890DCは、フレーミングネイラと言うカテゴリに分類される釘打ち機になり、対応釘は最長で90mmとなっている。 ただし使用する釘はフレーミングネイルであり、JIS釘やそれ以外の日本国内で規格化された釘は使用できない。
日本での一般的な連結釘は針金連結釘だが、電動釘打ち機には巻き上げ機構がないため、マガジンタイプの紙連結釘(NR1890DC)やプラスチック連結釘(NR1890DR)でなければ釘の装填もできない。
日本市場での販売には課題も多いが、期待は大きい
日本の釘打ち機市場では、在来工法や枠組壁構法で使うN釘、CN釘に対して圧縮空気を用いる空気工具が主流となっている。一方、電動釘打ち機としてはタッカーやピン釘に普及した所で、最近になってやっと国内3社で電動フィニッシュネイラが出揃った形だ。
正直なところ、モーターによる大きな釘の電動化は実用化には未だ程遠いと考えていた。
一応、類似機種としてフライホイールを利用したDeWaltのDCN692や、大型スプリングを内蔵したHilti BX 3-MEなど電動釘打ち機は販売されていたが、それらと同じ構造を採用せず、圧縮空気方式を実用化した旧日立工機の『NR1890DC』には非常に驚かされるばかりだ。
電動釘打ち機は空気工具と比べて様々なメリットがある。コンプレッサーが不要となったのもわかりやすいメリットだが、エアーホースリールや電源の工面すら必要なくなるのだからエア釘打ち機を多用する大工にとっては、段取りの負担が大きく減ることになるだろう。
しかし、この電動釘打ち機が今後日本市場で広まっていくのかと問われれば、まだまだ課題も多い。
最大の欠点は本体重量だ。NR1890DCの重量はバッテリー込み約4.9kgであり釘を装填すると更に重くなるのが当面の欠点になる。3kg前後の軽量の高圧空気工具が普及した日本市場において、超重量の釘打ち機が受け入れられるかは難しい。
他にも、ロール釘の巻き上げに対応しなければならない点や、打ち込みスピードの向上、銃刀法への対応など、解決すべき改善点は多い。しかしコンプレッサーを不要にしモーターの力だけで釘打ちを可能にした点は、今後の大工業界にとって大きな期待になるだろう。
ちなみに、日本国内でコードレスの釘打ち機の扱いは、銃刀法対象外製品を除き「銃砲刀剣類所持等取締法」の規制対象にあたる鉄砲に該当する可能性が高いので、輸入販売等は避けた方が良い。