Makita USAは2019年8月に10.8Vスライドシリーズに充電式ラチェットレンチ「RW01Z」を発売した。RW01Zは小型の10.8Vスライドシリーズで、3/8″ と 1/4″ のスクエアソケットに対応したラチェットレンチで、様々な用途に合わせて幅広くソケットサイズを変更できる構造を特徴としている。
※本記事で紹介する製品はMakita USAの情報を元にしております、記事公開時点で日本国内での販売は予告されておりません。マキタ日本法人およびマキタ取扱店へのお問い合わせ等はお控え下さい。
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3/8″ と 1/4″に対応するデュアルモードヘッド
Makita USAが販売するRW01Zは3/8″ と 1/4″ の2種類のスクエアソケットに対応しているのが特徴だ。取り外せるソケットアクセサリが付属しており、保持機構によってソケットのサイズ交換が可能になっている。
1つのラチェットレンチで2つの仕様のサイズに対応するのは、コスト的にも非常に大きなメリットとなりそうだ。サイズの異なるソケットを使用に使う変換アダプタによる先端が長くなる点やガタツキなどを気にする必要もなく、手持ちのラチェットのソケットをそのまま運用できるのもメリットとなる。
ラチェットヘッド背面には方向選択スイッチが搭載されており、バッテリーが無い状態での手動締め付け・緩めにも対応している。
高速型の電動ラチェットレンチ
RW01Zの製品スペックを見ると回転数は0~800rpmで、締め付けトルクは最大35ft-lbs(47N・m)
特に注目すべきは最大回転数800rpmだ。電動ラチェットレンチの回転数は300rpm程度の製品が多いため、800rpmは非常に速い部類になる。
電動ラチェットとして、この高速回転がどのような利便性になるかは未知数だが、単純に作業能率を上げると考えるのであれば早ければ早いほど良いと考える事もできる。特に、マキタは電動工具の専業メーカーとして高いノウハウを持っているため、ソフトスタートやスイッチ形状などの見えない工夫が仕込まれており、気にすることはないのかもしれない。
マキタのカーメンテナンス市場への新しい挑戦となる製品か
電動工具業界と言っても、電動工具を使用する業種は多岐に渡り、主にマキタやHiKOKIなど国内大手メーカーが得意とする業界は土木や建築業だ。他メーカーの傾向としてはPanasonicが国内の電気工事・インフラ系に強く、カーメンテナンス業界としてはスナップオンやインガソール・ランドが高いシェアを占めている。
このRW01Zは、マキタがこれまで得意した建築・土木分野から、カーメンテナンス業界への新販路を開拓する製品と言った印象を受ける。特に、高い汎用性を持つ2サイズ対応のソケットや高速回転仕様などは、これまでのカーメンテナンス業界の既存品に正面から向かっていくのに十分なスペックを持った製品になっているだろう。
これまでマキタが主流としていたのは18Vスライドバッテリーだったが、小形のエアツールを多用するカーメンテナンス業界へ売り込むには大きさ・重さ共にネックとなっていた。それが、近年マキタが普及させた、軽量で取り回しの良いスライド10.8Vならカーメンテナンス業界でも十分戦えると判断したのだろう。
建築業の世界的な人手不足が叫ばれ、効率化のためのプレカットの普及や施工の単純化が進む中、電動工具業界の需要に対する先行きは明るいと言い切れないのが正直な所だ。技術的な面では他メーカーの後塵を拝している状態のマキタではあるが、今回の製品は工具ブランドとして生き残るため、技術的にではなく営業的な戦略で、他業種の新たなニーズを汲み取ろうと動いた実にマキタらしい製品とも言える。今後もマキタの動向に注目したい。