VOLTECHNO

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2020年3月5日

パーソナルなモノづくりを始めたい、個人で工場に発注するポイントとは

近年は製造業に関する様々な産業技術が進歩している。その中でも最も進歩したと言えるのが、3Dプリンタやフリーライセンスの3D CADの普及など個人規模でのモノづくりが行いやすくなった点だ。

しかし、図面や試作までできたとしても、実際に製品にする場合には金属加工など町工場などに外注に出す必要がある。企業であれば調達部門や試作依頼などのノウハウがあるが、個人ではそこから先どうすれば良いのか迷ってしまう部分も多い。今回は、個人での発注について神奈川県の精密板金加工会社「五洋工業株式会社」様に話を伺ってみた。

個人開発の限界を超える「工場」への発注

この数年の間、製造業にとって大きく変わった点がある。3DプリンタやフリーライセンスのCADが普及し製品設計を行うためのツールの敷居が劇的に下がったことで、「メイカーズムーブメント」と呼ばれる個人開発者やベンチャーによるモノづくりが爆発的に普及したのだ。

これにより、個人でも企業レベルのモノづくりが可能になり、市販品さながらの製品を設計する事が可能になった。しかし、3Dプリンタや家庭用の卓上加工機にも限界はある。引いた図面を「作ってみた」止まりにして開発を3Dプリンタの造形品で終わらせるのも良いが、更に良い製品にしようと考えているなら次の段階が必要となる。その次の段階こそ「発注」だ。

発注では「小ロット生産」や「1個からでの試作も受付」と掲げる町工場のホームページを探し、実際に2次元図面を引いて加工を依頼する事になる。しかし、メーカーの設計や調達部門に所属したことがない個人開発者にとって、発注をどのように進めていけば良いのか分からない点も多い。

そこで、今回は町工場でも個人の依頼を扱ってくれるのか、その場合はどうすれば良いのかをインタビューに応じて頂いた神奈川県の精密板金加工会社「五洋工業株式会社」代表酒村氏に話を伺ってみた。

Screenshot

神奈川県秦野市の精密板金加工会社 五洋工業株式会社

五洋工業株式会社は神奈川県秦野市の精密板金加工会社です。精密板金加工一般、ステンレス精密板金、アルミ精密板金、その他各種鋼板精密板金はおまかせ下さい。高品質、低コスト、小ロット、短納期に対応できる体勢を完備しております。

工場は個人の案件に対して、どのように考えているのか

酒村氏

今回、個人の発注についてお話を伺った。五洋工業株式会社 代表取締役社長

タキハラ氏

大田区の板金工場の三代目。町工場を中心とした「新しいものづくり」の在り方を考える。
今回の工場見学・インタビューの発起人 タキハラ ケイ|note

Ath

モノづくり・電動工具メディアサイト “VOLTECHNO”ライター。
今回、タキハラ氏の提案で五洋工業株式会社様の見学に同伴

Q1, 個人の書いた図面でも工場は受け付けてくれるのか

[質問] Ath

設計作業はCADなどが普及して個人でも行えるようになってきていますが、実際に製造の調整となると0からスタートしなければならず経験の浅い図面などもあり得ると思います。そのような手探り感じのあるような図面って受け取ってもらえるんでしょうか

酒村氏

単発の依頼などでは図面がこなれてない方もいらっしゃるので、そのやり取りの中で図面をうちが起こしたりとか手間暇はかかったりしますね。ラフスケッチの状態で来たりする場合もあるので、その時は私が図面を起こしたりしないといけないんですが(笑)

Q2, 個人の案件について工場はどう考えているのか

[質問] Ath

五洋工業さん自身の立場としては、個人の案件などはどのように考えているんでしょうか

酒村氏

歓迎してるってわけでもないですけど、そういうお仕事は面白いですよね。いわゆるルーチン的にくる企業さんのお仕事よりも中身が面白かったりするので全然良いと思ってますよ。ただしリスクもあるのでお支払いはお支払いです(笑)

タキハラ氏

そうですよね、個人だと前金貰ったりするのが多いですよね

酒村氏

過去にね、踏み倒されたことも何回かありましてね。行方不明とか連絡がつかないとか。以前は酷いのもあって、個人でやられてて何十万か踏み倒された事もあるんですよ。

Q3, 個人の発注で工場が最も心配する点

[質問] Ath

個人の依頼で最も心配する事はなんでしょうか、図面などの技術的な問題ですか?それともお金払い?

タキハラ氏

酒村氏

お金払いですね。

Ath

通常の流れなら見積もりを依頼して、了解の上で発注して納品されてからお金を払う流れだと思うんですが、そのやり方だと個人は不安があるってことなんですかね。

タキハラ氏

発注の時点でお金を入れて、入金確認して取り掛かるってのが安心ですかね。

酒村氏

個人に限らず、初めてお取引のところは初めてはお金を先にってやり方が多いです。ただ、個人の方でも長いお付き合いのところは気にしない場合もあります。

Q4, 個人だとどんな方法で工場にたどり着くのか

[質問] Ath

一人でモノづくりを行っている人はどのようなキッカケから五洋工業さんに依頼が来るんでしょうか

酒村氏

最近はWebです、ホームページを見てってのが多いですね。その中でも印象的だったのは、近くまで仕事で来てて現地でパーツが合わなかったって人が来たこともありました

タキハラ氏

本気で切羽詰まってたんですね(笑)

酒村氏

それでホームページ見て一番近かったから電話しましたって、駆け込みの案件でした。いつ欲しいの?って聞いたら「今」っていうから2時間くらいで作って渡しましたね、その時は現金でもらいました(笑)

タキハラ氏

それはすごすぎですね(笑)

酒村氏

それは個人っていうよりは会社さんだったんですけど、初めての相手だし流石に、って言ったら「じゃあここで払います」って。あとは県の商談会で発注した個人の方などもいましたね。

Q5, 工場として歓迎する案件や内容など

[質問] Ath

こんな仕事が来たらいいなあってのはありますか?例えば、継続した案件だったり工場の技術力がアピールできる製品、新規開拓できるような製品など、いろいろ理想はあると思うんですけど五洋工業さんはどうでしょう。

酒村氏

うちはありがたいことにメインのお客さんに恵まれている点もあって、大きい会社さんから更に別の柱が取れれば理想なんですけど、それは容易ではないので細かいのを積み上げようとは考えています。あとは比較的難しいものと言うか、お金を頂けるものをかき集めたいと考えているので、来ていただけるお客さんの解決ができれば良いなと思っています。ジャンルとかも問わないですね。建築から装飾から産業機器、かたっぱしに考えています。

タキハラ氏

そう考えるとウチはどうなのかな。なんでもやってる感じはあるんだけど、あんまり個人のお客さんが関わる案件は好んで取らないみたいな感じはありますね。

酒村氏

うちもそうです、やはり個人のお客さんは心配します。

(左)タキハラ氏 (右)酒村氏 

個人のモノづくりの話はここで一旦終了し、この後は酒村氏とタキハラ氏の板金工場トークが続く。
内容はコチラ

Screenshot

見学:神奈川県秦野市の鈑金加工屋さん

今回は、私の母が経営する会社と同じく、精密鈑金加工を売りにしている工場さんを見させて頂きました。

個人の発注で最も気になるのは「支払い」

やはり工場として最も気になるのが「代金を払ってもらえるのか」になってしまうようだ。

実際、個人の発注は企業案件と違い信用もなく発注額も少ない場合も多いため、そのまま踏み倒されてしまった経験を持つ工場も珍しくないらしい。そのため、個人を敬遠する工場も多いようだ。実際にトラブルを避けるのであれば前払いしてから発注するのが無難と言えるだろう。

近年の個人でのモノづくりに関しては、中国深セン市の企業を中心に個人向けのサービスを大々的に行っているケースも多い。コスト的には見合うケースも多いが、実際にはトラブルもあり、再発注や税関のトラブルなどでうまくいかない事も多い。

今回お話を伺った内容は酒村氏の個人的な意見であり、全ての町工場が同じように個人案件に対応してくれるとは限らない点にも注意が必要だ。

実際に工場を探す場合には、ホームページから1品生産や小ロット試作を請け負ってくれるかなどを真っ先に確認する必要がある。依頼を予定している工場の加工設備や製品例などを確認しながら発注する町工場を選定するのが良いだろう。

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