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マキタの新40V MAXバッテリーを分解して、防水バッテリーの秘密を探ってみた

マキタの新40V MAXバッテリーを分解して、防水バッテリーの秘密を探ってみた

2019年10月にマキタから新しい電動工具シリーズ『40V MAX』シリーズが発売となりました。複数の新しい機能を搭載した新バッテリーとなる40V MAXバッテリーですが、その最大の特徴は電動工具メーカー初となる『防水・防じんIP56』の搭載です。

今回は、充電式の電動工具待望の構造であるバッテリーの防水構造がどうなっているのか、BL4025を分解して、その秘密を探ってみます。

電動工具ユーザー待望となる「防水バッテリー」の登場

マキタが2019年10月に展開を始めた40V MAXシリーズは、これまで展開していた18Vシリーズとの互換性を切る波乱の製品展開となりましたが、そのデメリットに対して余りある新機能として搭載されたのが「IP56」規格による防水・防じん構造の搭載です。

これまで、マキタを含む電動工具メーカー各社は、電動工具本体に防水・防じん構造を搭載していましたが、バッテリーは防じん・防水の対象外としており、電動工具の防水構造は実用上ほとんど意味のない状態となっていました。

この実態に対し電動工具各社は、長年に渡りユーザーに欺瞞とも取れる沈黙を守ってきたわけですが、今回のマキタ40V MAXの登場によって、本当の意味での防水・防じん対応の電動工具が誕生する事となりました。

今回は、そんな史上初となる防水・防じん正式対応の40V MAXバッテリーが、既存の18Vバッテリーと比べてどのように変わったのかを調べてみたいと思います。

本記事では、バッテリーの分解による検証を行っていますが、バッテリー分解行為はメーカー非推奨であり、取り扱いによっては、過充電やショートによって安全性が急激に低下し、場合によっては発熱から発火に至り、危険な状況に至ることが推測されるため、絶対に真似はしないでください。また、本記事における内容の一切に対して当サイトは責任を持たない事ご了承ください。

電動工具バッテリーの防水化が進まなかった理由

これまで、電動工具バッテリーの防水対応が進まなかった最大の理由には、電動工具バッテリー特有の急速充電器の存在が背景にあります。

電動工具のバッテリーは、スマートフォンの数十倍の大電力で充電を行うため充電時の発熱も大きく、その対応として充電中のファンによる冷却構造が必要となっていました。そのため、放熱を妨げる密閉ケースやコーティングによる防水構造を採用できない問題がありました。

ちなみに、ケルヒャーの防水バッテリーは冷却構造を採用していないため、サイズに余裕のある密封ケースにバッテリーを封じ込める方法で防水対応していると予想されます。

今回、防水構造を確認するにあたり最も気になるのはバッテリーセルのスポット溶接部ですが、分解しなくても40V MAXのPVに構造が書かれているので、スポット溶接部を剥がすまでの分解は行いません。

バッテリーセル間のスポット溶接に使うタブは、従来のものとは大きく構造が異なっているようです。実際に現物を見て確認したい所ではありますが、バッテリーの破壊を伴うため今回はスポット溶接部の確認までは行いません。

40V MAX バッテリーBL4025の外観

18Vバッテリー(左)が幅75mm × 高さ62mm × 奥行 × 116mm、40V MAX(右)では幅77mm × 高さ65mm × 奥行118mmとなっています。防水構造の搭載によって若干サイズアップしたものと推測されます。
端子部分は大きく変わり、40V MAXでは黄色の信号コネクタが無くなり、2つのレールが新たに搭載されています。
気になるメイン電極の端子幅ですが、18V(左)では39mmだったのに対し、40V MAX(右)では31mmと短縮していました。端子幅が同じであればラジオやライトなどの機器で18Vと40V MAXを共通化した製品展開の可能性も考えられましたが、工具側での互換機能の搭載は不可能のようです。
側面も大きく変化しています。18Vバッテリー充電時の通風孔はバッテリー端子面に搭載されていましたが、40V MAXでは端子面からバッテリー側面の通風孔へ冷却風が流れる構造となっていました

裏面は水抜き穴が4つから6つに増えており、水が入らない構造にするのではなく、水が入ってもすぐ抜ける構造になっています。
40V MAXバッテリーでは、残量表示パネルが前面になっています。LEDは4レベル表示のままで、赤色から緑色LEDに変更されていました。

バッテリー内部の構造を確認

バッテリーの蓋を開けて最初に驚いたのが、バッテリーホルダーがねじ止めに変わっていた点です。
ケースによる押し付けによるバッテリーユニットの固定から、ホルダーとケースのねじ止めによる堅牢な構造に変わったことで、衝撃に対する強度の向上接点の安定を実現したものと推測されます。
左:BL1850(18Vバッテリー) 右:BL4025(40V MAXバッテリー)
40V MAXでは充電時の冷却風を取り入れる通風孔の面積が4倍以上になり、冷却性能が大きく向上しているようです。
バッテリーユニットを裏返すと、プラスチック製のホルダーでセルが密閉されていて種類を判別する事ができませんでした。このホルダーによるセルの密閉はバッテリーの防水化に大きく貢献していると考えられます。ホルダーから覗かせる僅かな隙間は冷却風の排出口のようです。
セルの品名は確認できなかったものの、緑色のフィルムからSONY系(現 村田製作所)のセルを使用していると推測されます。

40V MAXの基板

端子の周りには透明なプラスチックパーツが追加されています。これは、端子間の絶縁を強化するのと同時にエレクトロマイグレーション防止のために搭載されたものと推測されます。
各セルの電圧を測定する配線は、ラミネートされたフィルム基板の配線によって完全に絶縁されています。
40V MAXでは18Vバッテリーに搭載されていたFETに相当する電子部品が確認できませんでした。バッテリー構造上、発熱する電子部品をバッテリーセル側に実装する可能性は低いと考えられるため、40V MAXではFETを省いたと推測されます。
こちらはBL1850(18Vバッテリー)に搭載されているFET(Q26 Q27)。40V MAXバッテリーではこのFETに該当する部品を確認できなかった。

防水構造と推測される要素

18Vバッテリーから様々な変更点を確認できた40V MAXバッテリーですが、防水規格の根拠と考えられる構造は下記の部分にあると予想されます。

  • スポット溶接部の防水構造タブ
  • 水が入っても抜けやすいケース構造
  • バッテリーセル全体を覆うホルダー
  • 端子部分追加の樹脂部品による絶縁強化
  • 強力な冷却風による内部に入った水の乾燥

もちろん、IP56規格による防水規格はあくまでも水による影響を抑えるものであり、ドロや粉じんを含んだ汚水に対しては大きな効果がない事に注意しなければなりません。

また、水がバッテリーに長期間触れるのは、セル電圧のアンバランスや過放電などの原因となるため、水に濡らしてしまった場合は早急に乾燥させる必要がある点にも注意しなければいけません。

IP56を過信しすぎてはいけないが、電動工具にとっては大きな一歩

つい最近、ケルヒャーによるコードレス高圧洗浄機用に防水バッテリーが発表されたばかりでしたが、その直後に電動工具大手のマキタからも防水構造のバッテリーが発表されたのは非常に驚きでした。特に、電動工具バッテリーの急速充電に必須となる冷却構造と防水構造を両立させた点にはマキタの技術力の高さを伺う事ができます。

勿論、バッテリーがIP56に対応したと言っても、バッテリーが壊れなくなる事を保証するものではありませんが、バッテリーそのものが水や粉じんの影響を受けにくくなったのは、電動工具業界において大きな進歩と言えます。

電動工具本体の防水をアピールしながらも、バッテリーに対して防水構造非搭載の姿勢を貫いていた電動工具メーカー各社の方針は、ユーザーに対する不誠実以外の何物でもありませんでしたが、今回の防水バッテリーの登場は、その課題に対して一応の決着をつける形となったと言えそうです。

18Vとの互換性を排した点に関しては非常に残念と言わざるを得ない40V MAXシリーズですが、別の観点から見れば、インパクトドライバに防水機能を搭載した瞬間から生じてしまった電動工具の矛盾を解決した、ある意味での誠実さに溢れた製品とも言えるかもしれません。

今回のマキタによる防水・防じんバッテリーの登場は、これまで防水バッテリーの開発に手をこまねていてた電動工具メーカー各社に対して大きな衝撃を与えたものと推測されます。今後、このマキタ防水バッテリーの登場によって電動工具各社がどのように動くのかが注目されます。

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