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2021年8月30日

電動工具の互換充電器は使える?マキタ互換の充電器を購入して動作を検証

電動工具の互換充電器は使える?マキタ互換の充電器を購入して動作を検証

今回検証するのはマキタバッテリーの互換充電器です。なぜかマキタの製品は他社と比べて互換品の販売が多く、中には充電器やUSBアダプターも販売されていたので気になっていました。

以前、電動工具メーカーの互換バッテリーについて低価格の理由や危険性について解説しましたが、充電器はどうなのか検証してみます。

ECサイトを中心に販売されているマキタ互換充電器

ECサイトを見ているとマキタの充電器は他社と比べ様々な種類のものが販売されています。しかし、よく見るとマキタカタログには記載されていない液晶パネルを搭載した充電器や、大きさが半分程のコンパクトな充電器なども販売されており、よく見ると「互換品」の表記があります。

これらの充電器はMAKITAのロゴが見当たらず販売元もマキタではありません。販売元の名前から察すると、これは中国企業が製造販売している「コピー品」の充電器のようです。

早速、マキタの互換充電器を購入して検証

今回検証するのは、DC18RF互換の液晶パネル付きの互換充電器です。

この充電器は「液晶パネル搭載」による電池電圧や電流量の表示、電池残量の表示されるのが特徴です。純正充電器は電池残量や電池電圧などがわからなかったのでこれは非常に面白い機能です。

外観・カタログスペック

質感や文字のフォントなどは純正品のマキタ充電器と非常に似ています、筐体表面は丁寧なシボ加工がされており、製品のラベルも純正品にそっくりでコピー品にありがちな安っぽさを感じさせません。

互換品の存在を知らなければマキタ純正品と勘違いしてしまうほどの完成度です。

バッテリー装着部の寸法も非常によく、バッテリー装着時の固さやガタツキもありません、装着はスムーズで純正充電器と同じ感覚でバッテリーのつけ外しができます。

表面のパネルは純正品と近い構成になっていて、少し間を詰めて液晶パネルを配置した配置となっています。実用充電表記やオートメンテナンスの表記などもあり、充電電流の仕様を除けば純正品と同じ動作も期待できるのかもしれません。

裏側の製品ラベルを見ると、説明も自然で違和感のない日本語が記載されています。

DC18RFとは記載されているものの、充電電流は3.5Aと純正品のと比べると半分以下の充電電流です。対応電圧はユニバーサル仕様となっており日本国外でも使用できる点は好印象です。

製品自体がマキタ純正ではないのに「マキタ専用の指定バッテリーを使用してください」の記載はちょっと違和感がある。ラベルのレイアウトは純正品にそっくりなのでこれもコピーしたのだろう。

マキタ純正充電器と同じように、互換品の裏面には壁掛け用の取付穴もあります。

充電してみる(充電制御の確認)

早速、互換充電器に純正品のバッテリーを充電してみます。バッテリーにはマキタ純正バッテリーのBL1460B(14.4V6.0Ah)を使用しました。

充電器にバッテリーを装着すると充電が開始されますが、バッテリーを冷却するファンの音は鳴りません。どうやらこの充電器には冷却ファン自体が搭載されていないようです。

充電中は電池電圧と充電電流が表示されます。表示される充電電流は常に3.5Aと表示されており、たまに誤差程度に3.4Aへ下振れする程度にしか変化しません。液晶パネルにはマキタのバッテリーチェッカBTC04のようなバッテリー情報表示を期待しましたが、単に充電電圧と電流を表示するだけのようです。

ラベルには実用充電完了のLED表記もありますが、実際に実用充電完了となることなく充電中の赤LEDランプ点灯から直接フル充電完了の緑LEDの表示となり充電は停止しました。

もう1つ気になる点が、常に電流値3.5Aで充電されており、充電制御としてはCC(定電流充電)充電方式のみで完了していた点です。CV充電領域がないため、この充電器で充電すると充電容量は純正充電器と比べ若干少なるはずですが、もともとの充電電流が低いため大きな影響もないのかもしれません。

充電完了電圧となる16V付近で電流は減少するかと考えていたが、常に3.5Aを維持している。
充電完了となると純正品のDC18RFのように実用充電状態とはならずにそのまま充電完了状態となった。

分解して中身を見てみる

分解してみると大きなケースの割に基板は小型でした。裏面のラベルには10Aのヒューズが搭載されていると記載されていますが、この大きさだと2A以下のような気がします。

充電時の確認通り、やはり冷却ファンは搭載されていませんでした、この仕様であれば使用直後の高温電池などは充電しない方がいいかもしれません。また、メンテナンスとファン異常を表示するLEDも実装されていませんでした、メンテナンスや異常を検知する機能は全て未搭載と推測されます。

パワー系の電子部品のほとんどに中国深セン市を本拠内とする半導体メーカーCRE Semiconductorの製品が数多く使用されています。それ以外のICについては刻印が無かったり検索してもデータシートが見つからなかったりで、中国市場のみに流通している電子部品が使用されているものと考えられます。

AC-DCコンバータのスイッチングIC?と推測されるCREの2269

この充電回路基板には日本や欧米メーカーの部品が見当たらないため、電子部品から基板に至るまで全て深セン市で一貫生産されているのかもしれません。

マイコン?と考えられるICに関しては刻印が無く、どこの製品を使用しているのかわかりませんでした。マイコンのピン数は16pinなので、充電電流を制御したりリチウムイオンバッテリーの監視をするにはちょっと足が不足している気がします。

基板の裏面。はんだの状態は非常に良好で光沢があり、恐らく鉛はんだを使用していると推測される。マイコンには刻印が無くどこの製品を使用しているのか確認できなかった。
基板の設計年月を表す刻印を確認。この充電基板自体は2017年から存在していたようだ。
ちなみにマキタの純正充電器DC18RFの発売日は2018年。

純正品と比べると難ありだが使えないことはない(純正バッテリー限定)

リチウムイオンバッテリーの充電仕様だけで考えるのであれば、この充電器は充電電流が低いので、冷却ファンや電流制御などが無くても、実用的には問題ないのではと考えられます。

CCCV充電を行っていないのは、二次側電流の出力が3.5Aしかなく、定電圧充電領域まで充電を行ってしまうと、充電時間が純正品より大幅に延びてしまうためにそれを避けたためと推定されます。この充電器の充電容量は満充電表示となった場合でも90%前後しか充電されていないのかもしれません。

実際に問題となるのは、マキタのバッテリーに搭載された保護回路がこの互換充電器に異常が発生した場合、どの程度まで保護できるかです。

恐らくこの互換充電器は「バッテリー側の保護機能だけでも安全が確保される」事を前提に設計された充電器と推測されます。マキタからバッテリー単体の充電保護機能がどのような仕様になっているのかが開示されてない以上、多少の疑問点は残ります。

今回、実際に使用したり分解を行って検証を行いましたが、互換充電器は100%危険とは言い切れず、かと言って問題なく使用できる、とも言えない微妙なラインとなりました。これを確認するにはマキタバッテリーの保護がどの程度なのかを追加検証する必要があります。

互換バッテリーへの充電は高リスク、互換充電器を使うなら純正バッテリーを

互換充電器による互換バッテリーへの充電は推奨できません。

互換バッテリーに搭載されている保護回路はバッテリーの異常を検出する機能がなく、互換充電器側で保護停止する事が不可能で過充電発火等のリスクがあります。

コスパが良いとは言えない互換充電器、純正充電器で十分

どんなものかと期待していた互換充電器ですが、外観の完成度は高い一方、充電機能としては充電動作や保護などを含め特筆すべきメリットはありませんでした。液晶ディスプレイにも期待しましたが、電圧が表示されるだけであり機能的に大きな意味はありません。

この互換充電器は、性能・価格・付加価値等を総合的に見て特筆すべき点がありませんでした。

互換バッテリーであれば低価格セルを使用する事で価格を劇的に下げる事ができますが、充電器は低出力の部品を採用する方法でしか価格を下げる方法がありません。

互換充電器を選ぶメリットは低価格な面にあると考えますが、マキタ純正の充電器DC18RFも通販価格でそこまで高価な充電器ではありません、充電性能や安全性を含めた対費用効果を考えるのであれば互換充電器を購入する必要はありません。

純正の充電器であれば充電時間は2倍以上早く、電池冷却や保護機能も搭載しており、純正品によるメーカー保証や安全性なども保証しているので、わざわざ数千円の価格差のためにリスクのある互換品を購入する必要は皆無です。

現在、マキタは互換バッテリーに対しては注意喚起を行っていますが、それ以外の互換製品に対しては特にアクションを行っていません。バッテリー以外にも増えつつあるマキタ互換品に対して、今後マキタがどのようなアナウンスを行うかが注目されます。

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