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2021年5月27日

【工具コラム】工具の修理事情や修理期間が延びる理由

【工具コラム】工具の修理事情や修理期間が延びる理由

電動工具の修理依頼にはメーカーに送って修理を行う方法と、工具販売店が独自に修理を行う場合があります。それぞれ事情や捉え方などが若干異なります。本記事は、電動工具アフターサポートの修理対応についてのコラムです。

本記事の内容は、筆者体験や販売店の取材に基づき独自の見解を加えた記事です、一部実例と異なる場合もありますのでご了承ください。

電動工具修理は「メーカー修理」と「販売店修理」の2通り

ほとんどの工具販売店は店舗で修理対応を行っておらず、「メーカー修理」に頼る形で修理対応を行っています。これは販売店が窓口となり、ユーザーの代わりに販売店が電動工具メーカーの修理部門へ修理依頼を代行する方法です。

工具販売店や多くのホームセンターは工具や資材を「販売」する業務が主なので修理を行うノウハウや作業場を持ちません。そのため、多くの販売店は巡回する電動工具メーカーの営業マンに修理品を渡す形で修理対応を行っています。

逆に、店舗での修理技能を持つ販売店では、販売店での修理対応を行う「場合」もあります。場合と表現しているのは、販売店で修理が可能であっても、店舗による判断やユーザーの意向によって販売店で修理を行う場合もあれば、メーカー修理へ送る場合もあり状況によって変わるためです。

メーカー修理の利点と問題となるケース

ほとんどの修理はメーカーの修理部門で修理が行われます。メーカーに修理を依頼する利点としては「修理依頼が簡単」「無償対応」等が挙げられます。

国内で正規販売している製品であれば、ほぼ全ての電動工具はメーカーで修理対応が可能です。取り扱いがあるメーカーの製品であれば、他の販売店で購入した製品であっても修理依頼が可能であり(稀に断られる場合もあります)、どこでも修理依頼を行いやすいのが特徴です。

メーカー修理の場合、故障原因が初期不良や製品の構造的な欠陥と判断されると、無償の修理対応が実施される場合もあります。

メーカー修理が行われるユーザー側のデメリットとしては、「修理費が高くなるケース」や「故障原因が判明しない」などが挙げられます。

メーカーは基本的に「確実な修理」を前提にして純正品の部品交換による修理対応を行います。

これは故障の原因と考えられるほぼすべての部品の交換修理して再修理の発生によるクレームを避ける狙いがあります。ただし、故障原因と関係ない部品も交換される可能性もあるため、修理費用が高くなってユーザーの不利益となる場合もあります。

交換修理によって短い期間で修理できる一方、故障原因までは追究されない欠点もあります。

ユーザーの使用方法の不適による故障であってもユーザーがその理由を知ることができずに、同じ故障で高単価の修理を繰り返してしまう場合もあります。

最も顕著なケースとしては、「何となく調子が悪い」や「よく止まってしまう」など、故障の状態がハッキリしないまま修理を依頼してしまい、高額な修理費用を払って修理しても結局直らなかったというケースも散見されます。

工具修理を行える販売店は貴重

販売店修理最大の利点は、修理対応が素早く機転が利くことです。また、見積もり次第ですが、故障の場所や程度によってはメーカーよりも修理費用が安くなる場合もあります。

メーカー修理は純正部品の交換対応しか行いませんが、販売店の修理では、ユーザー了承の元でアレンジを効かせた修理対応も可能で、非純正のベアリングやパッキンなど安価な代替品による修理や、社外品アクセサリへの交換も対応します。また、メーカー修理対応が終了した製品も修理を試みてくれる場合もあります。

ユーザーと修理者が直接対話できるのも大きな利点であり、故障となった経緯をヒヤリングして、最小限の修理で素早く対応できたり、ユーザーと修理時の情報をやり取りする事で故障した原因なども知ることもできます。

販売店での修理は、修理者の技量と修理設備に大きく左右されます。コンプレッサーやハンマのオーバーホール、スライド丸のこの精度調整などができる技量と設備を持つ工具販売店は稀で、そのような販売店を持つ地域は工具ユーザーにとって大きなメリットです。

ただし、修理を実施している販売店が全て店舗で修理を行うわけではありません。工賃が割りが合わない場合や、技量・設備的に手に余ると判断された場合はメーカー修理に回されます。

非工具の製品修理は厄介物

メカ部分やブラシモーターの修理は、部品交換による最小範囲の交換で修理対応が可能ですが、ブラシレスモーター電動工具やラジオやライト等非工具系の製品の場合は少し事情が異なります。

電子部品関係の修理は、アッシやユニットの交換となってしまう場合が多く、ブラシレスモーターやラジオが故障した場合には中身を丸ごと交換してしまうため、基本的にどこで修理を行っても同じ修理価格が提示されます。

高い技量を持っている販売店であっても、Bluetooth関連の動作不良やテレビラジオなどのハイテク寄りの製品の修理は嫌気される傾向されメーカー修理に回される事が多いようです。

また、修理に出しても、新品を購入するのと変わらない修理価格を提示される製品もあります。

修理費が購入価格を上回りやすいのは、ライトや小型ラジオなどの低価格な製品や、充電器の制御基板など中身がほとんど単一の部品で占められている製品などです。

これらの製品は修理部品+工賃で新品の本体を購入するよりも高い修理見積価格が提示される場合もあります。

修理部品の欠品による修理期間の伸び

稀に、修理を依頼したら修理完了まで3か月以上かかったり、物によっては半年以上かかるケースもあります。これはほとんどの場合「修理部品の欠品」によるものです。

修理部品の欠品による長期修理の多くは、「製品の欠陥」と「修理部品発注の欠品」が同時に起きた場合に発生します。

電動工具は、メカ的な稼働部位を含む点や体積当たりの消費電力の多さ、使用環境の悪さも相まって他の電気用品より故障率が高い傾向にあります。電動工具メーカーはこの点を念頭に製品開発を行っていますが、稀に不良率の高い製品を世に出してしまうケースがあります。

そのような製品が市場に溢れると、交換修理した部品が再び壊れて再修理になる負の循環が発生し、一瞬で在庫の修理部品を消費する事態になります。この状態が続き、市場の修理ペースが修理部品の発注リードタイムを超えた時点で長期修理待ちが発生します。

部品調達は多ロット発注が基本で生産に入るまでにも各種部品の手配が必要になるため、納品まで長いリードタイムを必要とします。

一次的な対応で修理部品が手配できたとしても、対策を盛り込んだ修理部品が完成・手配するまで同じ修理を繰り返す事になり、ユーザーが一方的に不利益を被る状態が続きます。

また、販売店経由のメーカー修理は、メーカーの営業マンの巡回頻度によって修理工場に持ち込まれるまで数日店舗で保管されてしまう場合もあります。メーカー有力店ほど営業マンが頻繁に巡回するので回収が早く、規模の小さい販売店は数日店舗で保管されてしまう場合もあります。

この認識はメーカー間で異なり、国内メーカーだとマキタが最も余裕を持った体制を備えている印象を受けます。実際、「一番修理対応が良いメーカーは?」の問いに対し多くの販売店が「マキタが良い」と回答しており、マキタ営業マンが良く巡回する点と合わせマキタ製品を好意的に捉えています。

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