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2021年8月30日

プロ向けのインパクトドライバ徹底解説ガイド!【2018年版】

プロ向けのインパクトドライバ徹底解説ガイド!【2018年版】

プロ向けインパクトドライバは電動工具メーカー各社、最も力を入れて開発している電動工具です。本記事では各社の最新インパクトドライバについての情報を集めて解説していきます。

プロ向けインパクトドライバとは

プロ用モデルのインパクトドライバは、住宅の建築や内装工事などの大工仕事に使用される電動工具です。

工具自体の使用頻度が高いことに加え、野外や粉じんの舞う環境なども想定されており過酷な環境下でも長時間作業できるような高い耐久性を必要とされています。近年では、耐久性の他にもパワー機能やテクスモードなど制御方式にも工夫がみられ、トリガーを引いて回転するだけのDIY向けインパクトドライバとは一線を画す機能も搭載されています。

プロ向けインパクトドライバに搭載されている具体的な機能としては、メンテナンスフリーで軽量なブラシレスモーター、防水防じん規格への対応、大容量バッテリーの装着などで、住宅建設に数棟使用しても耐えられるような耐久性を備えています。

2018年発売のインパクトドライバの特徴

2018年に新たに発売されたプロ向けインパクトドライバーは2機種で、1月発売のマキタの「TD171D」と9月発売のRYOBIの「BID-11XD」です。

2機種に共通しているのは、インパクトドライバとして性能を向上させたモデルではなく、前モデルの改善や小型化といった方面で改良された製品であることがポイントとなっています。

使い勝手の向上に着眼点が置かれている

ここ数年のインパクトドライバの新製品で特にアピールポイントとして目を引くのが、使いやすさの向上です。特にアピールされているのが「全長の短さ」で、今やインパクトドライバーのハンマー部は18Vバッテリーよりも短い構造になっています。

最近の新製品ではテクスモードの他にも新しいモータ制御機能が追加されており、マキタでは熟練の技を再現する「楽々モード」、RYOBIではモルタルやセメントのかく拌などに使う「ロックオンモード」など新しい機能が追加されています。

現在は、あっても使わないという方も多いモード切替機能ですが、今後、この特殊な機能が作業において必須となるのかもしれません。

モード切替にメーカー独自機能

ブラシレスモータの採用により細かなモータ制御が可能になったことで、弱・中・強の制御のほかテクスネジの締め付けに適したテクスモードが搭載されるようになりました。

そして、2017年以降のモデルではメーカー独自の動作モードが搭載されるようになりました。

現在、国内工具メーカーにおいて最も多彩な機能を搭載しているのがマキタのTD171Dで8種類ものアシストモードを搭載しています。今後もソフトウェアによるモータ制御やその他操作制御など多彩な機能が追加されるものと推測されます。

製品名 モード数 搭載モード
マキタ|TD171D 8 最速・強・中・弱・木材・ボルト・テクス(薄)・テクス(厚)
HIKOKI|WH36DA 4 ソフト・ノーマル・パワー・テクス
RYOBI|BID-11XR 5 強・中・弱・テクス・ロックオン
MAX|PJ-ID152R 4 強・中・弱・増締め
Panasonic|EZ75A7 4 強・中・弱・テクス

インパクトドライバの性能向上は僅か

リチウムイオンバッテリーの採用から、ブラシレスモータ―の搭載まで様々な新技術によって性能が向上してきたインパクトドライバーですが、ここ数年は締め付けトルク180N・mを上限に締付け力が伸び悩んでいる印象を受けます。

そんな中、HIKOKI(旧日立工機)だけは、全長の短縮や軽量化へ方向転換するメーカーが多数の中で、2017年にWH36DAを発売し連続作業に向いた36Vバッテリーを採用し、連続作業量などをアピールポイントとして性能向上を続けています。

今後の性能向上はバッテリーとビットの革新技術待ち

現在のインパクトドライバは性能面での伸び悩みが続いており、電動工具メーカー各社は性能に代わる新しいアピールポイントとして「使い勝手の向上」に舵を切って開発を進めた、という印象です。

バッテリーやモーターの性能もインパクトドライバの性能向上を妨げる要因となっていますが、インパクトドライバの性能向上を阻む大きな理由の1つに「ビット」の存在が挙げられるでしょう。現在の6.35mmビットではこれ以上パワーを上げてもビット自体が耐えられず、単純にパワーを上げただけではビットの寿命を短くしてしまう根本的な問題があり、ビットメーカーへのトーションに続く新構造や新しい金属材料の登場が待たれています。

【2018年最新版】メーカー別 プロ向け最新インパクトドライバ解説

このインパクトドライバの解説については筆者がカタログや各通販サイトの情報を参考に私的見解も含めたものになります。

マキタ |TD171DZ

製品名 TD171DZ
最大トルク 180N・m
全長 118mm
重量 1.5kg(バッテリ込)
バッテリー電圧 18V
打撃モード 最速・強・中・弱・木材・ボルト・テクス(薄)・テクス(厚)
最大回転数 ボルトモード 3,600回転/分
最大打撃数 ボルトモード 3,800回/分
カラーバリエ 青・黒・白・赤・茶
前モデルから変更点 ビット振れ低減・トルク向上・LED2灯・全長短縮・アシスト機能
発売日 2018年1月
  • ダブルボールベアリング採用による軸振れの軽減
  • 楽らくモードによる豊富なアシストモード
  • 左右2灯LED配置で影ができない

マキタTD171Dは、前モデルTD170Dから全体的な性能向上を図ったモデルです。

前モデルTD170Dからの要望を受けて、軸振れを軽減するためのダブル・ボール・ベアリングを採用しており、更には締め付けトルクも175N・mから180N・mに向上しています。僅かながら全長も1mm短くなっており、より小さくなっています。また、LEDも搭載数が変わり左右2灯となっており、暗い作業場でも影が出来ない構造になっています。

動作モードも多彩な機能を搭載しており、テクスモードが「厚板」「薄板」と厚みで選択できるようになり、ネジ締め始めのカムアウトを防止する「木材モード」、ナットが緩んだら自動停止する「ボルトモード」など多彩なアシスト機能が使用できるようになりました。

RYOBI |BID-11XR

製品名 BID-11XR
最大トルク 165N・m
全長 99.4mm
重量 1.1kg(バッテリ込)
バッテリー電圧 18V
打撃モード 強・中・弱・テクス・ロックオン
最大回転数 2,900回転/分
最大打撃数 4,400回/分
カラーバリエ
前モデルから変更点 全長短縮化・軽量化
発売日 2018年9月
  • 全長99.4mm・重量1.1kgと他社を圧倒するコンパクトなモデル
  • サイドにボタンを配置しモード切替しやすい
  • 3灯LEDで明るく見やすい
  • グリップにスーパーゲルシートを採用
  • 最大トルクは低く165N・m

RYOBIのBID-11XRは、前モデルBID-10XRのヘッド部分の小ささをより発展させたモデルです。

18Vインパクトドライバの中では100mmを切る驚異的な99.4mmのコンパクトさを実現しています、締付けトルクこそ165N・mと低下していますが、ボルト締めを行わず木ビスを使用であればパワーにも問題ないものと考えられます。

動作モードにはロックオンモードという新しい機能が搭載されています、この機能はモータの出力を調整して打撃しないようにし、モルタルやセメントを効率良くかく拌できるようにしたモードと推測されます。

HIKOKI(旧 日立工機)|WH36DA

製品名 WH36DA
最大トルク 180N・m
全長 127mm
重量 1.6kg(バッテリ込)
バッテリー電圧 36V
打撃モード ソフト・ノーマル・パワー・テクス
最大回転数 2,900回転/分
最大打撃数 4,100回/分
カラーバリエ 緑・黒・赤・青
前モデルから変更点 36V化による連続作業量向上
発売日 2017年8月
  • 36Vバッテリーを搭載し、連続作業でも性能が落ちにくい
  • トリプルハンマ採用でネジ締めスピードが速い
  • 大型バッテリーBSL36B18が装着可能でトップクラスの作業量を持つ
  • バッテリーが新型となりマルチボルト専用バッテリーが必要
  • 標準付属(BSL36A18)のマルチボルトバッテリーは18Vバッテリーより容量が減少(18V換算で5Ah)している

HIKOKI(旧 日立工機)WH36DAは、前モデルWH18DDL2を36V化させたインパクトドライバーです。

バッテリーの高電圧化により、高負荷作業でもモータ温度の上昇が抑えられて連続作業が可能になったのが特徴です。また、WH18DDL2から採用したトリプルハンマにより、低負荷時には細かな打撃によるカムアウト低減、高負荷時には1.5打撃によるハイパワーな締付けを実現しています。高負荷作業においては他社より優れた性能を持ったインパクトドライバです。

また、WH36DAには大型バッテリーのBSL36B18が装着可能で、1充電当たりの作業量においては他社インパクトドライバを大きく上回る作業が可能です。

インパクトドライバとしては性能向上を続けるWH36DAですが、その一方で本体サイズの短縮やアシストモードの追加などWH18DDL2からの大きな変更点はありません。

MAX |PJ-ID152R

製品名 PJ-ID152
最大トルク 165N・m
全長 109mm
重量 1.4kg(バッテリ込)
バッテリー電圧 18V/14.4V
打撃モード 強・中・弱・増締め
最大回転数 3,000回転/分
最大打撃数 -
カラーバリエ 青・黒・赤
前モデルから変更点 -
発売日 2017年9月
  • スイッチに次世代トリガスイッチ「瞬」を採用しており、トリガ操作が楽
  • 正逆切り替えスイッチのストロークも少なく素早い正逆切替ができる
  • 左右LED2灯で影ができない
  • 14.4Vと18Vバッテリーが共用できる
  • 前モデルPJ-ID151からの変更点はほとんどなし
  • バッテリー容量が少なく最大容量で5Ahバッテリー

MAXPJ-ID152は、前モデルPJ-ID151のマイナーチェンジ版であり変更点はありませんが、価格が安くなったモデルになります。

MAXのインパクトドライバに採用されている次世代トリガスイッチ「瞬」は、トリガを引く時のストローク量が少ないスイッチで、トリガに加える力の入れ具合で変速を調整できる構造になっています。

モード切替については、石膏ボードの締付け仕上げに使う「増締めモード」の他にも、正転・逆転を切り替えやすくする「クイックリバースモード」や、LEDを常時点灯させる「ランタンモード」など他社にはない独特機能を搭載しています。

独特な操作感を持つインパクトドライバですが、一度使用すると、作業者への負荷が小さいMAXインパクトの虜になる事でしょう。

Panasonic|EZ75A7

製品名 EZ75A7
最大トルク 160N・m
全長 117mm
重量 1.7kg(バッテリ込)
バッテリー電圧 18V/14.4V
打撃モード 強・中・弱・テクス
最大回転数 2,500回転/分
最大打撃数 3,100回転/分
カラーバリエ 赤・黒・白・ピンク・青・
前モデルから変更点 全長の短縮
発売日 2015年10月
  • ヘッド短縮の先駆け的なインパクトドライバ
  • 2015年に発売された製品のため後発他社にカタログスペックで劣る

PanasonicEZ75A7は2015年に発売された、当時としてはヘッド部分を極端まで短くした革新的なインパクトドライバです。

2018年の現在となっては後発他社のインパクトドライバにカタログスペックで劣る面が多く、新しく電動工具を購入する場合において、このEZ75A7をオススメできる部分はほとんどありません。

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