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【回路修理記】突然電源の入らなくなったマウス、テスター導通確認に潜む罠

【回路修理記】突然電源の入らなくなったマウス、テスター導通確認に潜む罠

以前、当サイトでも紹介したBluetooth対応の2.4GhzハイブリットマウスRapooだが、スマホで使用しようと小物袋から取り出し、スライドスイッチをONにしたところ電源が入らずに使えなくなっていた。

2年ほど使ったマウスで保証も切れてしまっているので、新しいマウスへと買い替えてもよかったのだが、故障の状態から修理できる可能性もあったので分解することにした。

現象|電源スイッチを入れても動作しない

今回の故障現象は、スイッチを入れても通電せず使用できないという現象だ。

回路の故障診断と言うのは非常に奥が深く、相当の知識とノウハウがモノを言う世界だ。しかし、回路によって故障するパターンというのは概ね決まっており、現象から大まかな不良箇所を推測して修理することもできる。今回のマウスで考えると、現象から下記のように不良箇所を絞り込むことができる。

①電源が入らない:電源回路(スイッチ・レギュレータ周り)系
②動作がおかしい:制御回路(マイコン周り)系
③操作がおかしい:センサ(メカニカルスイッチ・光学センサ)系

今回の現象は電源が入らないという状態のため、①の電源回路に原因があると推測して確認を進めていく。ちなみに、故障モードや回路の構成によっては上記の例が当てはまらない場合も多いので注意が必要だ。

マウスを分解して内部の回路を取り出す。

マウス自体の構造は非常にシンプルで、ネジ一本を取り外すだけで簡単に分解することができた。これがゲーミングマウスなどの多機能マウスであれば、ネジや接着剤、ジャンパでつながれた基板やらで分解するだけでも大仕事になっていたのだが、小型のマウスだった事もあり5分程で分解を完了することができた。

コネクタ接点とスイッチを確認する。

電源が入らないという故障は、ほとんどの場合スイッチの不良や配線の接触不良であることが多い。特に、マウスは使用や持ち運びの時に衝撃を加えることも多いため注意が必要だ。

スイッチの確認にはテスターの導通モードを使う、同時にコネクタを装着したときに回路にちゃんと電気が通っているかも確認する。この回路にはFCTチェック用と思われるパターンとシルクが印刷されているため、確認は容易だ。

スイッチがON/OFF切り替え出来るかをテスターの導通モードで確認する。使用しているテスターはUT210Eだ。
コネクタの確認も、電池を装着しない状態で回路にコネクタを差し込み、導通モードで接触不良が起きていないかを確認する。基板上にチェック用のパターンがあったため確認しやすかった

どちらの確認でも問題はなさそうなので、やはり原因は電源回路周りにあると推測して、回路の電源ラインを確認へ進む。

電源回路の全ての電圧が出力されておらず、袋小路へ。

本体を分解していて気づいたのだが、このマウスは電池を2本使用しているので3V動作かと思い込んでいたのだが、電池は並列接続になっており、回路は1.5Vで動作しているようだ。

しかし、1.5Vの電圧でLEDを点灯させることはできないので、このマウスの中には昇圧回路が内蔵されているはずである、昇圧回路に使われるコイル付近にある大きい一番コンデンサはパスコンの可能性が高いので、その電圧を測定すれば各電源ラインの状態を確認することができる。

DCDCコンとコイルでLEDが点灯できる電圧まで昇圧している、その付近にある一番大きいセラミックコンデンサは電源電圧を安定させるパスコンと考えられる。各部位のパスコンの電圧を測定することで、電源回路のどの部分が故障しているかをおおまかに判別することができる。
基板にはVDD, VSSの記載があった。この部分の電圧測定も行うとマイコンの電圧を測定できる

回路の各点の電圧を測定したところ、どの電源ラインも電圧が0.2V程であることが判明した、これは回路自体に電気が供給されておらず、まったく動作していない事を表している。

ここまでは確認できたのだが、肝心の電源回路のどこが故障しているのかの判別はできなかった。この状態の場合、疑われるのは回路内のショートなのだが、抵抗値を測定してもショートは発見されず、故障している部分の検討がつかなくなってしまった。

電源回路の構成を再確認すると…?

現時点までで確認できているのは、回路自体に電気が供給できていないという点だ。ここで、再び回路の構造を再確認することにする。

まずは、電池からどのようにして1.5Vが供給されているのかを確認するところからはじめる、テスターの導通モードとパターンの目視で、回路構造を推測する。

これを行った結果、想定よりも早い段階で疑わしい部分を発見することができた。電池と並列に繋がっているコンデンサの電圧が0.1Vしかなかったのだ。

このコンデンサはスイッチを通して電池と並列に接続されていた。本来、このパスコンは電池電圧と同じ値になるはずだが、0.1V程しか電圧が見えなかった。

再びスイッチに戻り、今度はテスターを変えてスイッチON時の抵抗値を50 Ω レンジ抵抗測定モードで測定すると、なんと数Ωの抵抗値が存在していた。どうやら、このスイッチON時の接触抵抗が回路全体の電圧降下を引き起こしていた原因だったようだ。

導通モードでは導通を表していたが、実際には抵抗値が存在した。テスターは0.001Ωの測定レンジを持つFluke 289だ

故障の原因|スイッチ内部接点の接触不良

今回の故障は「スイッチの不良」という初歩的な原因だった。これが5Vや12Vで動作する回路なら問題なかったのかもしれないが、回路自体が低電圧で動作する構成になっていたために、数Ωの抵抗でも回路全体の動作に支障を来す事になってしまったのだろう。

恥ずべきことに、テスターの導通モードは数Ωの抵抗値であっても通電状態を示す事を忘れており、今回のような1V系に使われるスイッチ特有の不良原因を見逃してしまったのだ。

スイッチの修理|コンタクトスプレーで様子を見る

結局、不良の原因はスイッチだったため交換するのが確実なのだが、残念ながら代わりとなる同型のスイッチの型名がわからないため入手することは不可能だろう。

とりあえず、接点の状態さえ回復させればいいので、コンタクトスプレーを使用してスイッチ内部の接点を洗浄し、接触抵抗が十分低くなったことを確認して様子を見ることにした。

再び電源が入るようになったRapoo 6100マウス。
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