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2020年6月19日

空調服とは、特徴と各社製品の解説・オススメ製品選び方

空調服とは、特徴と各社製品の解説・オススメ製品選び方

空調服とは、服に搭載された小型ファンで外気を服の中に取り入れ、体の表面の汗を気化させて体感温度を下げる製品です。使用するエネルギーはエアコンや扇風機などの家電製品よりも少なく、設備費や環境負荷が低い画期的な製品として注目を浴びています。工場や屋外作業などでも快適に過ごせる夏場の作業服として近年必須のアイテムです。

空調服とは、体の汗を気化させて体感温度を下げる作業着

空調服とは、服に搭載された小型ファンで外気を服の中に取り入れ、体の表面の汗を気化させて体感温度を下げる作業服です。空調服の原理は発汗した汗をファンで蒸発させるシンプルなものですが、人間が本来持っている「生理クーラー」をより積極的に活用した空調装置と言える製品です。

小型のファンとバッテリーによって駆動されるため、使用するエネルギーはエアコンや扇風機などの家電製品よりも少なく、設備費や環境負荷が低い画期的な製品として注目を浴びています。

空調服は汗を気化させて体感温度を下げるだけではなく、衣服に付着した汗による雑菌の繁殖も阻止し、汗疹などの発疹やにおいの発生を防ぐ効果もあります。

生理クーラー理論とは

人間には、皮膚や体温を温度センサーに「暑い」と感じた際に脳の司令で汗腺から必要量の汗を出し、汗の気化熱で体温をコントロールすることに着目して市ヶ谷 弘司が独自に命名した生理クーラーが備わっています。この機能を効果的に利用するのが「生理クーラー理論」です。人間は体表面へ空気を送風して、汗を気化させる機能が備わっていないため、生理クーラーの効果を発揮できる温度帯は限定的です。しかし『空調服』は身体と平行にファンから取り入れた空気を送風することで生理クーラーが効果を発揮する温度の範囲を広げているのです。

参考:生理クーラー理論|株式会社空調服

空調服を導入した導入費の比較。エアコンの導入よりも圧倒的なコストパフォーマンスを持つ
参考:XEBECカタログ

空調服の使い方・特徴・選び方・互換性について解説

空調服は少しゆとりのあるサイズを選ぶ

空調服はファンを使って内部に空気を循環させて発汗を促進させる服なので、空気が循環しやすい様にある程度のゆとりがあるサイズを選ぶのがおすすめです。普段のジャストサイズの作業服を着ている方であれば1サイズ上の空調服を選ぶのがおすすめです。

以前の空調服は膨らんでしまい、見た目が不格好に見えてしまうものも欠点でしたが、現在の空調服は構造やデザインで服の膨らみを抑え、スタイリッシュなデザインの製品も増えたため、一昔前よりは周りを気にせず使用できます。

空調服は空気の循環構造やファン・バッテリーの性能向上・デザインの進化が著しい製品なので、毎年新たなモデルが発売されています。長年空調服を使用している方でも、新しい空調服を使ってみると性能向上を実感できます。

空調服のメーカー系列について

空調服は、2000年代初頭に株式会社空調服が販売を開始した製品でした。2017年に業界内で大きな動きがあり、2020年現在、空調服を開発するメーカーは国内だけでも10社を超えています。

現在、空調服は「株式会社空調服」と「空調風神服(サンエス)」の主力メーカー系統と、各作業服アパレルメーカーが独自に展開する空調服で枝分かれしています。

同じメーカー系統の空調服であれば、ファンとバッテリーユニットは共用なので、作業服メーカーが異なっていても共用できます。

空調服の特許権侵害訴訟

株式会社空調服が、株式会社サンエス及び関連会社に対象製品の製造,譲渡,輸出,輸入,または譲渡の申出の差止、当該製品の廃棄,及び損害賠償を求める一連の提訴。
発端は、開発元の株式会社空調服がサンエスに製造委託していたのを、サンエスが2016年に「空調風神服」と呼ばれる独自の空調服展開を始めたことから始まる。2017年に入るとサンエスは株式会社空調服を不正競争行為差止等請求で提訴。2019年9月に空調服側が全面勝訴、サンエスはこれを不服として控訴。実用新案権侵害行為差止等請求は現在も係争中
この訴訟は不正競争行為やファンの取り付け・上着内部の空気流通路の構造などを特許侵害として提訴しているものであり、作業服に電動ファンを取り付ける「電動ファン内蔵上着」それ自体に対する特許侵害ではない。

参考:「空調服」巡る訴訟問題/セフト研究所とサンエス間で/当初の協力関係から一転|繊維ニュース

空調服に使われる素材

空調服は普通の作業服と同じく、さまざまな布地の空調服が販売されています。基本は綿・ポリエステル・綿ポリエステル混紡ですが、特殊な素材を採用したりチタンコーティングを取り入れた空調服も展開されています。

空調服を選ぶ際に最も注意しなければならないのが、グラインダーでの研削作業や金属材料の切断作業を行う場合です。ポリエステル材料に火花や高温の切りくずが付着すると、熱で溶けて穴が開いてしまい、空調服内部の循環が悪くなってしまうため、この場合は木綿素材の空調服を選ぶ必要があります。

綿

耐熱性に優れた繊維。多少の火花が付着した程度では焼けないため、グラインダの研磨作業や高温の切りくずが発生する切断作業などで使われる。肌触りに優れ着心地も良く、耐久性が高いのも特徴。色落ち・縮み・シワになりやすい綿素材特有のデメリットがあり、生地が厚く重いのも欠点。

ポリエステル

ポリエステルは機能的に優れた繊維で、生地が軽いため動きやすくシワにもなりにくい。生地自体は撥水するため速乾性がある。ポリエステルは可燃性なので火花が発生する現場では使用することができない。合成繊維素材なので敏感肌のユーザーはチクチクするなどの違和感を感じる恐れも

綿+ポリエステル混紡

綿とポリエステルを混紡した生地。綿とポリエステルそれぞれの特徴を持ち、綿素材の縮みやすく型崩れしやすい短所をポリエステルがカバーしているので洗濯・乾燥が容易。ポリエステル100%よりも高い通気性を持つ。綿とポリエステルの配合を変えることでヘリンボン・ブロード・ラスパーなどさまざまな生地がある。

チタン加工(チタンコーティング)

生地にチタン分子の薄膜を形成し、赤外線・紫外線・遮熱性を実現した高機能生地。原子レベルで金属の薄膜を形成しているので生地との密着性に優れ、風合いや透湿性を損なわないのが特徴。チタン加工は摩擦や洗濯に弱いため注意が必要。

空調服に使われるファン・バッテリー

空調服に使われるファンとバッテリーはメーカー指定の専用品を使用します。一昔前はモバイルバッテリーを流用する5V動作の空調服もありましたが、性能向上を求められたため、各社独自のバッテリー+昇圧(降圧)回路を組み込んだコントローラ一のバッテリーユニットが主流です。

メーカー系列が合っていればファンやバッテリーを使いまわすこともできますが、販売年が異なるとスペックが異なる場合や、互換性が確保されていない製品もあるため注意が必要です。

最大風量

無負荷状態でファンが1秒間(1分)あたりの空気を循環させる能力を表す。数値が大きいほど空調服内部の循環量が多くなり涼しく感じるが、その分バッテリーの持ちが悪くなり、周囲への騒音も大きくなる。一部の製品はターボモードなどの限られた時間だけ強くなるモードもあるため注意

バッテリー容量

ファンを駆動させるためのバッテリー容量。この数値が大きいほど長時間ファンを駆動させることができる。単位はmAhで表記されるが、メーカーによって基準電圧が異なり(開示されていない)、ファンの消費電力も異なるためこの値だけ見て判断するのには注意が必要。連続稼働時間で判断するのがおすすめ

空調服の形状・種類

ブルゾン

空調服で最も一般的なのがブルゾン形状です。作業服として最も一般的なスタイルで、長袖なので作業によってはこの形状のブルゾンが必須の現場も多いと思います。

長袖でありながらも空調服のおかげで快適に作業を行うことができ、紫外線などからも腕を守ってくれる夏の新たなスタンダード作業服として最も普及しているタイプです。

半袖ブルゾン

作業性の高さと動きやすさから高い人気を集めているのが、半袖ブルゾンの空調服です。

倉庫やラインなどの屋内作業では、換気のために空調が効いていない場所も多いため、そのような場所で半袖ブルゾン空調服は活躍します。

フルハーネス対応ブルゾン

2019年2月の安全衛生法の改正でフルハーネス義務化となりましたが、それに対応したのがフルハーネス対応ブルゾンです。

2丁掛けフックやランヤード取り出し口、肩パットやファン落下防止構造などの高所作業必須の機能を備えた空調服です。

ベスト

2019年から急激に増えているのが、ベストタイプの空調服です。

腕の部分が絞まるようなゴム構造になっており、横から空気の循環が抜けることなく下から上まで突き抜ける爽快感が特徴的な空調服です。全体的に膨らみを抑えたすっきりなシルエットに収まるので、空調服を着ても軽快さが失われないのが大きなメリットです。

フルハーネス対応ベスト

参考:マキタFC410DZ

フルハーネスに対応しながら、軽快さと快適さを両立したのがフルハーネス対応ベスト空調服です。

ベストタイプの空調服ながら、フルハーネス対応に必要な機能をすべて備えており、快適な作業性と爽快感を実現します。

2020年の空調服おすすめメーカー

2020年現在、空調服を開発するメーカーは国内企業だけでも20社近く存在しており、空調服系列・空調風神服系列を始めとして、それに属さない独自開発系の空調服メーカーも多数存在しています。

空調服は作業服・ユニフォームを製造・販売している企業によって展開しており、全国各地のホームセンターや作業服専門店での購入が可能です。

今回は数ある空調服メーカーの中から、製品ラインアップ数や特徴的な機能に優れたメーカー4社をピックアップして紹介します。

※優位点は太字

メーカーBURTLEジーベックサンエスマキタ
ブランドロゴ
取扱製品ブルゾン
フード付きブルゾン
半袖ブルゾン
フルハーネスブルゾン
ベスト
ブルゾン
フルハーネスブルゾン
半袖ブルゾン
ベスト
フルハーネスベスト
ブルゾン
フード付きブルゾン
半袖ブルゾン
フルハーネスブルゾン
ベスト
ブルゾン
フード付きブルゾン
フルハーネスブルゾン
ベスト
フルハーネスベスト
ツナギ
バッテリー容量15,900mAh6,500mAh14.8V, 2,900mAh最大18V, 6,000mAh
風量切替最強・強・中・弱7.2V・6V・5V・3.3V強・中・弱ターボ・強・中・弱
最大風量61L/s
3.7m3/min(換算)
30L/s
1.8m3/min(換算)
61.7L/s(換算)
3.7m3/min
36L/s(換算)
2.2m3/min
ファンカラー黒・銀・赤・青黒・白・赤黒黒・赤黒
バッテリー黒・鉄マキタバッテリー
特徴優れたデザイン空調服系列空調風神服系列電動工具と共用
製品情報公式ページ
電子カタログ
公式ページ
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公式ページ
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カタログ

BURTLE 空調服に見えない優れたデザイン性

  • 広島県府中市に本社を置く作業服メーカー
  • 独立開発系
  • 一見すると空調服に見えない特徴的で優れたデザイン
  • 京セラインダストリアルツールズ(RYOBI)と共同開発の高出力バッテリー

ここ数年の空調服業界で最も存在感を増しているのが、広島県府中市の作業服メーカー株式会社 バートルの空調服です。

バートルの空調服シリーズAIR CRAFTは京セラインダストリアルツールズと共同開発のファン・バッテリー、一見すると空調服に見えないデザイン、2020年からは4色展開が行われる高性能ファンユニットも展開しています。

毎年話題作を展開するため、予約の段階で品薄になり、本格シーズンの夏になると売り切れが多数発生する人気のシリーズです。

ジーベック 空調服系列の製品ラインナップが特徴

  • 広島県福山市に本社を置く安全靴・作業服メーカー
  • 空調服系
  • 人気の作業着ブランドジーベックの空調服シリーズ
  • 空調服系のなかで製品数が多い

ジーベックの空調服は落ち着いたデザインが主力の製品ラインナップが多く、様々な機能を搭載した空調服を取り扱っているのが特徴です。

空調服と合わせて使用するコンプレッション(インナー)も人気です。

サンエス 高性能・広い製品展開でユーザーを魅了

  • 広島県福山市に本社を置く電子機器・作業服メーカー
  • 空調風神服系
  • Bluetoothによる遠隔制御に対応
  • ななめ型ファンとフラット型ファンの2展開
  • 2020年の新型ユニットと2019年以前のモデルは互換性なし

常に空調服業界に大きな影響を与えてきたのが、株式会社サンエスの空調風神服シリーズです。

毎年モデルチェンジを加える度に空調服に新たな構造を盛り込んでいるのが特徴で、2020年モデルでは12Vのハイパワーファンを搭載し、Bluetoothによる遠隔操作に対応したリチウムイオンバッテリーセットも展開されました。

マキタ 電動工具バッテリーと共用、作業現場向けの空調服

  • 愛知県安城市に本社を置く電動工具メーカー
  • 独立開発系
  • 電動工具メーカーとバッテリーが共用
  • 工具販売店での取り扱いが主流

空調服は主に作業服メーカーが開発・販売を行っていますが、電動工具メーカーのマキタもファンジャケットシリーズを販売しています。

電動工具バッテリーと共用できる空調服なのが特徴で、大容量バッテリーと素早い急速充電に対応しているのが大きなメリットです。

マキタの空調服は作業着販売店に有力な販路を持たないため、ホームセンターの電動工具コーナーや工具取扱店で販売されていることが多いようです。

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