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2022年2月20日

熱収縮チューブとは 熱で収縮し、ハーネスやケーブルを保護する配線部材

熱収縮チューブとは 熱で収縮し、ハーネスやケーブルを保護する配線部材

熱収縮チューブは熱を加えると収縮する配線部材

熱収縮チューブとは、熱を加えると径が収縮するチューブです。一般的には熱収縮チューブと呼びますが、作業現場においては住友電工製の商標である「スミチューブ」と呼称する場合もあります。

熱収縮チューブ径方向に収縮して配線や端子をぴったりと密着させる配線部材です。ハーネスの保護やケーブル端子周りに使うことが多く、電子工作や電気工事の配線周りにおける絶縁性や耐久性を手軽に向上できます。

主な用途としては引張・折曲・摩擦・摩耗から配線を保護する使われることが多く、それ以外でもワイヤ間の絶縁や修復、複数ワイヤの結束、装飾による判別・圧着やはんだ周りの補強に用いられます。特殊な用途においては防水性・耐薬性・高絶縁性を付与するため使う場合もあります。

配線に通して熱を加えるだけで使用できるので、小ロット生産や現地補修などに最適で、作業に高い習熟度も必要ないので誰でも簡単に被覆作業を行うことができます。

収縮率・素材・接着層・色の有無で多種多様な種類があり、必要とする産業用途においては機械特性や電気特性・収縮特性に応じた部材選定が求められます。

熱収縮チューブは用途や環境に応じてさまざまな種類があり、細かく使い分けされる。
熱収縮チューブが収縮するアニメーション。
引用:Heat-shrink tubing-wikipedia

熱収縮チューブの基本的な選び方

熱収縮チューブの選定は「作業後に全ての箇所が密着する」ように選ぶのがポイントです。具体的には、収縮後の内径が、被覆対象物の直径よりも、やや小さくなるチューブを選定します。

TE Connectivity「熱収縮チューブプロダクトガイド」

一般的なホームセンターやネット通販で販売されている熱収縮チューブは収縮比2:1です。例えばΦ5mmの熱収縮チューブは約2.5mmまで収縮します。この場合、2.5mmよりやや太い配線に対して使用すれば配線全ての面を密着できるので十分な密着性が期待できます。

コネクタ端子や圧着端子によって大きい段差がある場合には、確実に密着させるために4:1や6:1など、より高い収縮比の熱収縮チューブを選定する必要があります。

コネクタ等の大きい段差があるケーブルに対しては4:1や6:1などの高い収縮比の熱収縮チューブを使用する。

熱収縮に使う作業工具

ここでは、熱収縮チューブの収縮作業を行うための代表的な作業工具を紹介します。

収縮は加熱温度と加熱時間に関係するので、被覆する対象物と加熱の影響を受ける周辺物の耐熱温度にも配慮します。

被覆対象物が金属部品等の熱容量が大きい素材の場合も加熱時間が変化するので、その場合はより大きい熱量を持つ作業工具が必要です。

ヒートガン

熱収縮チューブの熱収縮作業に最も適している作業工具がヒートガンです。

500℃前後の熱風によって広い範囲を効率よく収縮できるので作業効率が高く、安全性も高いので最もおすすめです。切り欠きノズルや曲面ノズルを使えばより効率的に作業を行えます。

熱収縮チューブは高い熱容量を必要としないので、リチウムイオンバッテリーで動作するコードレスタイプのヒートガンでも十分作業を行うことができます。

ちなみにドライヤーは吹き出し口の温度が低いため熱収縮チューブの作業には向いていません。吸気口を塞げば温度は上がる可能性はありますが、故障の原因になるので止めましょう。

ガストーチ・バーナー

直火で炙って熱収縮を行う方法です。加熱温度が高いので素早く作業でき、熱容量の大きい配線材料に適しています。

低価格で場所を取らずにすぐ使用できる特徴がありますが、直火によって熱収縮チューブ本体やコネクタ・配線被服が燃えないように十分配慮しましょう。

普通のライターでも作業は可能ですが、無色・有色チューブにおいては外観を損ねたり、煤が付着して周囲を汚したりする場合もあるのターボライター等の煤が出ないライターを使用するのがおすすめです。

配線が太く熱容量が大きい材料に対してはガストーチを使用する場合もある。

熱収縮チューブの使い方

熱収縮チューブはチューブを通して熱を加えるだけなので、誰でも簡単に作業が行えます。作業そのものよりもチューブの選定の方が重要なので、ぴったりと密着するチューブを事前に選定しておきましょう。

実際の作業手順としては下記のような流れになります。

  1. 熱収縮チューブを必要な長さでカットする
  2. 作業前にあらかじめケーブルにチューブを通しておく
  3. 作業が終わったら収縮チューブの位置を調節する
  4. 熱を加えてチューブを収縮する。

と言うわけで、実際に熱収縮チューブを使った作業例を解説していきましょう。今回は配線同士の接合作業に熱収縮チューブを使用します。

作業前にあらかじめ熱収縮チューブを通しておく。
接合する配線同士を結び付ける。はんだが無くても結束力を持たせられるウェスタンユニオンスプライスがおすすめ。
結束部をはんだで固定する。はんだ作業時の熱が熱収縮チューブまで伝わると収縮してしまうので、作業箇所からできるだけ離して素早く作業を行う。
熱収縮チューブを結束部に動かしてヒートガンで収縮させる。冷え切らないうちに動かしてしまうとはんだ作業の熱で収縮してしまうので、十分冷えてから作業を行うようにするのがポイント

おすすめの熱収縮チューブセット

ここではDIYや電子工作等で便利な熱収縮チューブのセットを紹介します。

DIYや電子工作においては用途に応じて色々な太さの熱収縮チューブが必要になる場合が多いので、予め短く切断されたセット品の熱収縮チューブを用意しておくと便利です。

通販の格安セット品は薄型で収縮率2:1の製品が多いので、高収縮比や硬収縮・接着性の熱収縮チューブが必要な場合にはバラで買う必要があります。

Yヤクニタツ 700ピースセット

黒色熱収縮チューブのΦ1~13mmまでの12サイズ・収縮率2:1のセット品です。

総数700本の熱収縮チューブが一式になっており、ケースも付属しているので保管や取出しなどスムーズに行えるコストパフォーマンスに優れたセット品です。

簡単な配線作業やDIYにはこれ1セットがあればほとんどの用途に対応できます。

zspowertech 熱収縮チューブ

セット品の熱収縮チューブとしては珍しい収縮比率3:1のセット品です。

ケーブルの内側に熱可塑性の接着剤も塗布されているので、腐食・防水に対する耐性もあります。

高収縮・接着剤の熱収縮チューブはしっかり熱を加えないと確実な収縮にはならないので、ヒートガンを用意して作業を行いましょう。

熱収縮チューブまとめ

熱収縮チューブ

加熱で収縮する配線部材。耐久性向上等に使用する

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