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ベッセル 電ドラボールの全シリーズを紹介&性能比較、電動×手動の次世代ドライバーを徹底解説

ベッセル 電ドラボールの全シリーズを紹介&性能比較、電動×手動の次世代ドライバーを徹底解説

目次

ベッセル 電ドラボールシリーズとは

電ドラボールシリーズとは、工具を製造販売するベッセルが2018年から発売しているボールグリップ形状の電動ドライバーシリーズです。

電ドラボールは、ボールグリップの手回しハンドドライバーとそう変わらないコンパクトサイズながらも、モータとバッテリーを内蔵しており、スイッチ操作での電動回転と手動での手締めを両立した電動工具です。

電ドラボールはUSB端子を備えており本体に直接充電できる。この手軽さが受けてプロユーザーからライトユーザーDIY層まで幅広い層に爆発的に普及した。

充電端子にUSBを採用したことで専用充電器不要で充電環境を選ばない手軽さも評価され、それまでの小型電動ドライバーと言えば3.6Vバッテリー装着のペンドライバーしか選択肢のなかった電動工具市場に革命を起こしたとも言えるほどの大ヒット商品となりました。

ちなみに、ボールグリップ形状の電動ドライバーの代名詞とも言える電ドラボールですが、電ドラボールの名称はベッセルが登録している商標であり他社製品には使用しない名称となっています。他の類似製品ではSK11のデュアルドライバー、高儀のちょいドラ、パナソニックのminiQuなどがあります。

電ドラボールシリーズのスペック比較

製品名 電ドラボールⅡ 電ドラボール
プラス
電ドラボール
ハイスピード
電ドラボール
外観
シリーズ 無印 プラス ハイスピード 無印
品番 220USBC 220USB-P1 220USB-S1 220USB-1
無負荷回転速度 280min-1 低:280min-1
中:340min-1
高:400min-1
1,200min-1 280min-1
最大締付トルク 3.0N・m 低:1.2N・m
中:1.6N・m
高:2.0N・m
0.4N・m 2.0N・m
最大耐久トルク(手動) 12N・m 12N・m 10N・m 10N・m
落下防止コード取付穴 × ×
バッテリー定格容量 800mAh 800mAh 800mAh 800mAh
充電端子 USB Type-C USB Type-C microUSB microUSB
入力電源 5V-1A 5V-1A 5V-1A 5V-1A
重量 170g 170g 160g 160g
充電時間 約60分 約60分 約60分 約60分
寸法 147×Φ45mm 147×Φ45mm 140×Φ45mm 140×Φ45mm
本体価格 オープン価格 オープン価格 オープン価格 オープン価格
販売年月 2025年06月 2022年4月 2020年12月 2018年12月

電ドラボールシリーズの特徴① スライドスイッチ採用の正逆切替

画像引用:電ドラボール《No.220USB》のご紹介(機能編)|ベッセルYouTubeチャンネル

電ドラボールシリーズ最大の特徴が上下に動かすスライドスイッチ採用の正逆切替構造です。

このスイッチはビット側にスライドさせると正転、グリップ側にスライドさせると逆転する仕様になっているので、簡単に操作できるのもポイントです。

スライドスイッチ式の利点としては、軽く握って負荷がかかった時にスイッチを滑らせる疑似的なクラッチ操作を行いやすい点や、スイッチ部を上から握っても誤動作しない点が挙げられます。

電ドラボールシリーズの特徴② 市販の両頭・片頭ビットが使えるスリーブチャック

電ドラボールは一般的な充電式インパクトドライバと同じ六角軸のスリーブチャックを採用しているので、市販品の両頭・片頭ビットをそのまま装着できます。

一般的な両頭プラスビットはもちろんのこと、六角ビットやトルクスビットなどの特殊ビットも装着できるので、色々な作業に対応できます。

逆にマグネット装着の短ビットや精密ドライバ用の4mmビットはそのままだと装着できないので、別途6.35mm六角実の変換アダプタを装着しなくてはいけません。

電ドラボールシリーズの特徴③ USBで充電できる手軽さ

製品本体のUSB端子(microBまたはType-C)を備えているので、専用充電器が不要で市販品のUSB充電器やモバイルバッテリーなどを使ってUSBケーブルで充電できます。

ただし、後述のUSB PD充電器を使用する場合には注意が必要です。

電ドラボールシリーズの特徴④ 豊富なカラーバリエーションと定期的に発売する限定色

電ドラボールはブラックボディに赤のアクセントが基本カラーですが、ベッセルは定期的に限定色を展開しています。

電動工具と言えば基本的にはブランドカラーが決まっているので、何人もの職人が集まる現場では目立たなくなってしまいますが、限定色を持っていれば現場で個性を出したり盗難防止になったりもします。

ちなみに、限定色とは言いつつも3年くらいは市場に出回っているケースも多いので、時間があればお気に入りの限定色を探してみるのもいいかもしれません。

電ドラボールシリーズの特徴⑤ 電ドラボールフィットの純正アクセサリも豊富

ベッセルは工具以外にも工具類を使用するアクセサリ類も数多く販売しており、電ドラボール向けの純正アクセサリもいくつかあります。

電ドラボールにジャストフィットするツールポーチシリーズやビットや充電ケーブルを収納できる専用ドライバーケース、落下防止のストラップなどもあるので、多彩な作業シーンに対応できます。

電ドラボールシリーズの特徴⑥ プロショップやホームセンターで購入しやすい

電ドラボールはハンドドライバーとして広い市場シェアと販路を持つベッセルが販売する製品であることもあり、どこの工具取扱店を見ても電ドラボールが置いてあります。

電ドラボールはプロ向けユーザーに販売されている製品ではあるものの、その多用途に使える製品仕様からDIYユーザーにも愛好されており、手工具コーナーの横の陳列棚に並んでいることも多く手軽に入手できます。

電ドラボールシリーズの欠点① 他メーカーの選択肢も豊富

これは電ドラボールの欠点と言うよりも他社製品を含めた選択肢の話になってしまいますが、ベッセルの電ドラボール発売以降、工具市場には電ドラボールを追従する数多くの類似製品が販売されるようになりました。

電ドラボール以外の有名どころとしては、パナソニックが販売する小型形状のminiQu、SK11のオートストップ機能搭載のデュアルドライバーNEO、高儀が販売するずんぐりボディのらくドラなどがあり、それ以外にもホームセンターブランドや中華ブランドを含めれば数多くのボールグリップ型電動ドライバーが販売されています。

一応、製品仕様的には各社それぞれ性能的な強みや独自機能などでそれぞれに個性もあるのですが、実使用的にはそこまで各社の製品に違いのあるものではないので、その辺りは個人の好みや価格で選んでも良い製品となっています。

電ドラボールシリーズの欠点② USB Type-Cへの対応が企業として中途半端

こちらも電ドラボールシリーズの欠点と言うよりもベッセルに対する企業的な不満になってしまうのですが、電ドラボールのUSB Type-Cコネクタ搭載モデルは一部の充電器への対応状況が中途半端な状態となっています。

具体的な事例として、2022年に発売した電ドラボールプラスのUSB端子はmicroBからUSB Type-C端子に変更されているものの、従来のUSBケーブルであるAtoCにしか正式対応しておらず、USB PD充電器が搭載しているCtoC端子への対応が不透明な状態となっています。

このCtoCへの対応は、同じ製品であってもロットごとに対応状況が異なっている状態であり、さらに対応と非対応の見分けも全くつかない状態で販売されている点も含め、USB PD充電器やACアダプタから直接Type-Cケーブルが生えているキャプティブケーブル仕様のUSB充電器で充電する場合には注意が必要な製品となっています。

この辺りのUSB Type-Cの充電問題に関しては、電ドラボールに限った話ではなくUSB端子を備える小型家電製品などにも数多くみられる事象ではあるものの、USB Type-Cを使用するUSB PDは登場時点(少なくともベッセルがUSB Type-C搭載機器を発売した時点から)からコールドソケットを前提とするコネクタであることを前提とすれば、ベッセルの事後対応や関連発言は開き直りとも捉えらえるもので、誠実と言うには少し難のある企業の印象を受けてしまいます。

電ドラボール最新モデル 電ドラボールⅡ 220USBCでは公式でCtoCケーブル充電が「できない場合がある」として非対応となっている。
この対応はUSB PD充電器との互換性などを配慮して×にしたと考えられるが、これはUSB-IFの定める仕様とは異なる。またACアダプタから直接USB Type-Cが生えているキャプティブケーブルについては説明されておらず、無難な説明のつもりだとしても下手な対応となっている。
画像引用:電ドラボールⅡを安全にご使用いただくために|株式会社ベッセル

この辺りは、USB Type-Cの過渡期にあたる現在ではよくある話なのでこういう対応も仕方のない所ではありますが、現在の普及や他社電動工具メーカーがそろそろUSB PD機器をそろそろ展開しそうな点を考慮すれば、CtoCを非対応とするのは製品戦略の観点としても結構非常識なので、早い段階で是正を行ってほしいところです。

閑話休題:ハンドドライバーの手締め最大トルクは10N・mにも届かない

少し話は逸れて、電ドラボールの手締め時の締付トルクの話になります。

電ドラボールの手締め時の最大トルクは初期のシリーズで10N・m、最近のシリーズでは12N・mとなっています。手締め時にそれ以上のトルクを加えると壊れてしまうのですが、実はハンドドライバーで人の力で出せるトルクはそこまで大きいものではなく、どんなに力を入れても普通の状態だと10N・mも出すことはできません。

人の手で出せる力は意外と非力で、2×4材に45mmの木ネジに締め付けるのでさえ結構苦労してしまいます。

そういう意味では、電ドラボールの10N・mは人が出せる手締めの限界値として意外と現実的なラインであり、普通の使い方であれば手締め時に電ドラボールの破損を気にすることはありません。

ただしこれはプラスビットの話であり、六角ビットやトルクスビットなどのトルク伝達効率に優れるネジを絞める場合、力の入れ具合によっては瞬間的に10N・mが出てしまう可能性もあるので注意が必要です。

ちなみに、ドライバドリルの手締め機能と同じ考え方なのですが、電ドラボールの電動動作後の停止位置によっては電動では回転して手締めでは回転しない動力伝達部を傷付けてしまう場合があるので、手締め時に異音や滑りが発生する場合には注意した方が良さそうです。

「電ドラボール」無印シリーズ スタンダードな基本モデル

話は戻って、電ドラボールシリーズ各モデルの解説です。

電ドラボールシリーズの全ての基本となるのが「電ドラボール」シリーズです。このシリーズは2019年に発売した初代電ドラボールと2025年7月発売の電ドラボールⅡの2機種が該当します。(電ドラボールシリーズの今後の展開次第でこの区分けは変わる可能性があります)

電ドラボールの無印シリーズは、電動動作時280min-1の回転数を備えてる基本的なモデルで、回転数が他シリーズより抑えている代わりに電動動作時の最大トルクが高いので、仮止めだけではなくちょっとしたネジ止め作業や機器の取り付け作業などにも対応できるのが特徴です。

「電ドラボールⅡ 220USBC」強度アップ+Type-C端子搭載の最新モデル

2025年時点での電ドラボール最新モデルが電ドラボールⅡ 220USBCです。

これまでの電ドラボールシリーズは電動動作時の締付トルクが最大でも2.0N・mでしたが、電ドラボールⅡでは3.0N・mにパワーアップしており、電動動作後の手締めによる増し締めを減らして作業の効率化を実現できます。

また、電ドラボールプラスで採用された強化ギアによる手締め時最大トルク12N・m仕様やUSB Type-C端子、落下防止コード取付穴の搭載によって使い勝手も向上しています。

ただし、全長が初代電ドラボールから7mm全長が長くなっており、無印シリーズであるため3段階変速機能は非搭載である点には注意が必要です。

本記事の公開時点では予約販売の状態で各販売店が予約を受け付けている状態で、発売は2025年7月からになります。

「電ドラボール 220USB」初代電ドラボール

電ドラボールの初代モデルが電ドラボール 220USBです。

初代モデルのため電動動作時280min-1の回転数、締付トルク2.0N・mと後発シリーズに比べて控えめな仕様ですが、普通に作業を行う分には十分な性能を持っているので今なお現役で使える製品となっています。

価格の面でも全ての電ドラボールの中で一番安いので、入門機としてもおすすめの製品です。欠点としては、USB端子がmicroBなのでUSB Type-Cに移行が進んでいる現在では充電ケーブルが一本余計に増えてしまうところでしょうか。

ちなみに、2018年12月に発売した本機は発売直後から品薄でプレミア価格となり、Amazonでは最大3万円の価格をつけたこともありました。

「電ドラボール ハイスピード 220USB-S」高回転で素早い作業を実現

電ドラボールの回転数を上げたモデルが電ドラボール ハイスピード 220USB-Sです。

無負荷時で1,200min-1の回転数を備えているのが特徴の電ドラボールで、無印シリーズが280min-1、プラスが最大400min-1であることを考えると、3~5倍近い回転速度によって効率的なネジ止め作業を行えます。

ただし、電動動作時の最大トルクは0.4N・mと回転速度を上げた分だけトルクが低くなっているため、タッピンネジなど食い込むタイプのネジには不向きです。端子盤や小ネジのボルト止めなどの作業に最適なモデルです。

「電ドラボール プラス 220USB-P」3段階変速+強度アップの最上位モデル

電ドラボールシリーズの最上位モデルが電ドラボール プラス 220USB-Pです。

LED部分がスイッチになっており、そのスイッチを押すことで3段階の変速機能に対応しているのが特徴のモデルとなっています。回転速度は280~400min-1で最大トルクは2.0N・mなので、端子台のネジ止めから軽天ビスの固定まで幅広い作業に対応します。

さらに手締め時最大トルク12N・mへの向上やUSB Type-Cコネクタの搭載、落下防止コード取り付け穴にも対応しており、使い勝手も向上したモデルとなっています。

ただし、電ドラボールプラスはUSB Type-Cの仕様に準拠せずUSB PD充電器では充電できないロットがあるため、USB PD対応の充電器やモバイルバッテリーで使用する予定の方には注意が必要なモデルとなっています。後のロットで改善は行われたものの、実際の充電器に接続して確認する以外に判別する方法も無いので、不安な方は確認に協力してくれる実店舗を探さなくてはいけないかもしれません。

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