海外のフォーラムでMakitaの新型バッテリー「64Vmax」の情報がリークさた。直近では「40Vmaxシリーズ」の展開で大きな注目を集めた同社の充電式電動工具シリーズだが、新たな高電圧バッテリーシリーズの展開により、マキタ充電式シリーズの再編が進むかもしれない。
本記事の内容については未確認の情報も多いため、株式会社マキタ及びマキタ販売店への問い合わせはお控え下さい。
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マキタ64Vmaxシリーズ、40Vmaxを超える大型バッテリー
中国のフォーラムサイト「MyDigit」で投稿されたのは、マキタの試作品バッテリーと推測される製品BL6450Bです。
この情報は2019年6月26日に投稿され、現時点までこの投稿以外の情報は公表されておらず、製品展開についての情報は公式非公式問わず1年以上続報がなく、開発が中止された幻の製品となっています。
海外マキタの公式サイトではいくつか関連する製品の情報が存在していました。台湾マキタには64Vmaxバッテリーの充電器と予想される「DC64SA」の製品名も存在し、RoHS1証明書が公開されています。(現在は削除済み)
DeWALT FLEX VOLTやMilwaukee MX Fuelの高電圧製品展開
現在のマキタは、36Vより高い電動工具シリーズのラインナップを持っておらず、高い電圧の電動工具市場では他社に大きな差を付けられているのが実情です。
今回の64Vmaxバッテリーが展開されれば、DeWALT FLEXVOLTの56VやMilwaukee MX Fuelの72Vと並ぶ高電圧バッテリーとなり、高電圧帯の製品ラインナップが新たに加わります。マキタは高電圧の大型工具で先行する2社への追随が可能となります。
特に、マキタがシェアを広げている園芸工具市場でも、海外市場ではgreenworksやEGOなどの高電圧バッテリーを有する有力な園芸工具シリーズが存在しており、この分野においてもマキタの製品ラインナップ戦略は苦境に立たされていたものと推測されます。
80Vmaxが高出力充電式製品の主力シリーズへ[2021年10月追記]
以前、リチウムイオンバッテリーを製造するSAMSUNG SDIの高出力セルの製品展開について、今後は大型セルの21700サイズのセルの生産を優先すると話していました。18650セルを採用するマキタ18Vバッテリーはこれ以上の発展が難しく、新たなバッテリープラットフォームが必要になります。
64Vmaxは、80Vmaxの登場によって存在意義は無くなりました。
64Vmaxバッテリーはセルを32本使用する57.6V構成のバッテリーであり、電圧・セル構成共にBL4050F装着時の出力に劣ります。また、21700セルを採用するBL4040も展開しているため将来的な面においても有力なシリーズになっています。
超高出力製品への製品展開に縛られる巨大バッテリーの64Vmaxよりも、小回りの利く40Vmax/80Vmaxの方がコンセプト・将来性の面で有利であり、現在のマキタ充電式シリーズにおいて、64Vmaxの存在意義は事実上無くなっています。
更に40Vmaxバッテリーを2本搭載する80Vmaxに関してはBL4050F装着時には疑似的な20S2P構成のバッテリーとなるため、大型ハンマやコアドリルなどの大型高出力製品への追従も可能になり、今後の大型製品は全て80Vmaxで展開されると。
おまけ:なぜ64Vmaxは消えたのか?
筆者の推察となりますが、各国の認証や規格まで通し販売直前の土壇場で発売中止となった64Vmaxシリーズは、2017年当時の日立工機が展開したマルチボルトシリーズの影響が強く関わっていると推測しています。
2010年代後半の充電式電動工具市場においては、6.0Ahまで続いたバッテリーの容量増加が止まってしまい、「大容量バッテリーに合わせた新製品投入によって売上を伸ばす」手法によるビジネスモデルが使えなくなった時代です。各社は7.0Ahバッテリーに変わる新たな収益モデルを必要としていました。
日立工機においてはコンパクト高出力バッテリーのマルチボルトシリーズ、マキタにおいては大型バッテリー高出力の64Vmaxシリーズがそれぞれ7.0Ahバッテリーに変わる新たな収益モデルの位置づけになっていたと予想されます。
本来、マキタはスライド10.8Vと18V/18V×2本と64Vmaxの3シリーズで製品展開を行う予定だったと考えらえます。そこにマルチボルト36V電動工具が市場に登場したことで、市場の36V化への危惧と80Vmaxの合理性を検討した結果、64Vmaxを廃して40Vmax/80Vmax路線に進み始めた、と考えるのが自然でしょう。