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2020年4月17日

電動工具の2010年代を振り返る(2) 全ての始まり「リチウムイオン」が中心に動く時代(後半)

前回、リチウムイオンバッテリーの発展が電動工具メーカーに大きな影響与えるまでの製品に発展するまでを解説した。

事実上、電動工具の発展は「リチウムイオンバッテリーの発展」の外部要因に依存しきっていた形になっていたのだが、2010年代の末になると、その状況も終わりが見えてくるようになった。

今回は、リチウムイオンバッテリーの停滞が引き起こした「次世代電動工具バッテリー」について解説する。

6.0Ahを最後に容量増加が止まったリチウムイオンバッテリー

前回、リチウムイオンバッテリーの性能向上が電動工具の充電式化に拍車をかけ、結果的に電動工具は「性能向上」から「製品展開」まで全ての面においてバッテリーの発展に依存した電動工具メーカーについて解説した。

ほとんどの電動工具メーカーは、6.0Ahバッテリー以降もリチウムイオンの容量増加は続くと考えていたに違いない。恐らくは、次世代バッテリーと呼ばれる全個体電池が普及するまで従来通りのやり方を続けたかったのが本音だろう。

しかし、リチウムイオンバッテリーの発展に依存する好循環はそう長く続かなかった。予定されていたであろう18V 7.0Ahのバッテリーは現在に至っても展開されることなく、リチウムイオンセルメーカーが新たに登場したバッテリーは、高出力に対応させるために容量を少なくしたバッテリーセルだった。

2017年頃になると各電動工具メーカーは容量が停滞したバッテリーに変わる新たなバッテリーを「売るため」の新たな戦略を考えなければならなくなった。

好循環から一転、重い腰を上げた電動工具メーカー

バッテリーの容量停滞は、結果的に電動工具メーカー各社の重い腰を上げる結果となり、メーカー間で個性に溢れた新しいバッテリーが展開されるようになった。皮肉にもバッテリー性能向上の停滞によって、現在の電動工具メーカーは過去に類を見ないほど製品の個性が明確化されている。

新バッテリーとなる 『 次世代電動工具バッテリー』は「18V以上のバッテリー」「18650より大型のセルの採用」「2並列以上のバッテリー構成」のうちいくつかの要素を持つバッテリーになっている。マキタ40V MAXを除く次世代電動工具バッテリーは、従来の18Vシリーズとの互換性を有している。

『次世代電動工具バッテリー』と電動工具メーカーの関係は下記のようになる。

  • マキタ:XGT (40V MAX)
  • HiKOKI:マルチボルト
  • DeWalt:FLEXVOLT
  • Milwaukee:REDLITHIUM HIGH OUTPUT
  • BOSCH:ProCORE18V

2020年代中盤には各メーカーの新バッテリーシリーズの明暗が分かれると予想

各社様々な次世代バッテリーを展開しているが、筆者の予想では2020年代の10年の間に、再び全てのメーカーが同じ電圧と形状のバッテリーに収束してしまうと考えている。

現在は次世代バッテリーと言えども各社横並びの性能であるため、未だメーカー毎に大きなスペックの違いは発生していない。しかし、今後の技術動向次第では方式の違いによって性能差が明確になってしまうと予想される。その時、不利な方式となってしまったメーカーは、再びバッテリーの変更を迫られることとなるだろう。

ただし、現時点ではどの方式が最良となるのか予想するのは難しい。なぜなら、現在の電動工具を構成する技術は、バッテリーやパワー半導体など発展著しい複数の技術によって設計されており、どの技術がどのように発展するかは予想できないからだ。

今後の技術動向によっては低電圧のままでも高電圧と変わらないモーター出力を得られる可能性もあるし、やはり高電圧化が有利となる展開も考えられる。

今後の電動工具の性能を大きく左右する技術要素。この先のバッテリーやモーター技術の動向によって、各電動工具メーカーの次世代バッテリーは大きな性能差が表面化することになると予想される。

DIY向けの低価格電動工具にもリチウムイオン

2010年代のリチウムイオンバッテリーが変化させた産業構造は大手電動工具メーカーに留まらない。プライベートブランドやDIY向けのメーカーにまでリチウムイオンバッテリーが展開するようになり、充電式電動工具の競争はより激化するようになった。

2010年代前半の充電式電動工具は、回路設計ノウハウや安全対策などが必要になったため、電動工具にリチウムイオンバッテリーを搭載できるのは大手電動工具メーカーだけの特権だった。しかし、2010年代末になるとリチウムイオン自体の低価格化や、保護回路のワンチップ化によってコモディティ化も一気に進み、充電式工具のノウハウに乏しかったメーカーでも電動工具を製造できるようになった。

最近では、新興の中華ブランドやプライベートブランドから販売される電動工具でもリチウムイオンバッテリー搭載が標準になっており、大手ホームセンターなどではDIYユーザー向けの低価格な電動工具としてプライベートブランドの拡充を進めるまでになった。

プロ向けのラインナップでは大手電動工具ブランドが持つシェアの絶対的な牙城を崩すことは難しいだろうが、今後、ホームセンターやDIY向けの製品は低価格ブランドに置き換わってしまう可能性も考えられる。

(次回に続く)

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