クローラユニットや運搬機器の製造・販売を行う株式会社CuboRex(本社:東京都葛飾区)は、2023年10月11~13日開催の第13回 TOOL JAPAN 2023(会場:幕張メッセ)のブース内でバッテリーシステムを展示した。HiKOKIの電動工具用バッテリー マルチボルトバッテリーに対応するアダプタによってバッテリー開発にかかるコストを大幅低減する。
本記事はイベント取材時点の製品情報を紹介・解説するものであり、製品仕様や発売時期を保証するものではありません。
目次
CuboRex バッテリーシステムを展示
クローラユニットや運搬機器の製造・販売を行う株式会社CuboRexは、2023年10月開催の第13回 TOOL JAPAN 2022(会場:幕張メッセ)でバッテリーシステムの展示を行いました。
今回展示したバッテリーシステムは、2023年6月に発売を発表したE-cat kit2に付属するバッテリーアダプタの単品展示です。
このバッテリーシステムは、国内大手電動工具メーカー HiKOKIが展開するマルチボルトアライアンスに参画する製品で、本アダプタを使うことでマルチボルトバッテリーを使った製品への改造や試作品開発のコストを大幅に下げ、高い耐久性や優れた調達性を容易に実現します。
イベント取材時点では当バッテリーシステムの販売に関する情報は開示されておらず、製品詳細や発売時期に関しては今後の続報待ちです。
製品の特徴
「マルチボルトバッテリーが使える汎用電源アダプタ」
今回CuboRexが展示したバッテリーシステムは、HiKOKIの電動工具用バッテリー マルチボルトバッテリーを幅広い機器で使えるようにするアダプタです。
電動工具用バッテリーは過電流や過放電、寸法などの仕様がメーカー個別の仕様で設計されており、安全に使用するためにはその制御仕様や設計値を正確に把握しなければいけませんが、このアダプタを使えば、HiKOKIマルチボルトバッテリーを汎用的なバッテリー電源として使えるようになります。
CuboRexはこのバッテリーシステムによって、リチウムイオンバッテリー搭載機器を開発する際に伴うバッテリー開発や調達、PSEなどの各種規格への適合が無くなることで開発費が大幅に低減できることをアピールしており、今後、本バッテリーシステムを使った製品や協力企業などが増えてくれれば良いと発言していました。
ついに登場した大型バッテリーの汎用開発プラットフォーム
今回、CuboRexがこのバッテリーシステムを開発した背景にあるのは「仲間を増やすこと」と話していました。
例えば、実際の製品開発においてモータや制御基板は比較的入手が容易な部品なのですが、モビリティやクローラを十分動かせる大容量高出力バッテリーは話は別で、入手手段やバッテリーの信頼性などを考えると初期コストや輸送手段などが問題となり調達が一気に難しくなります。もし電動工具バッテリーが色々な機器に活用できるようになれば、バッテリー調達で発生する諸問題を一気に解決でき、クローラやモビリティを開発するメーカーや個人が一気に増えるかもしれません。
筆者も、前々から開発や調達が容易な汎用バッテリープラットフォームがあれば良いと考えていて、大手メーカーによる評価キットの提供やオープンソースハードウェアみたいなものがあればと思っていました。今回のCuboRexのバッテリープラットフォームはバッテリーの信頼性や入手性、アダプタの汎用性などの観点から最も理想に近い形の製品と言えます。
HiKOKIによるマルチボルトアライアンスの取り組みが始まって約半年が経過し、このような取り組みを行う企業が参画したことは工機HDにとってある意味で本当に幸運なことだと思っています。
とは言え、汎用バッテリーのコンセプトや製品仕様はほぼ完璧な製品と言えるものの、企業的なバックグラウンドを考えると色々と複雑な心情になる製品です。
このバッテリーシステムの懸念点としては、バッテリーシステムの開発はCuboRexですが、バッテリー本体の供給を工機HDが担う2社供給となっている点です。
E-cat kit2のようにHiKOKIからバッテリー供給を受けてCuboRex自体が自社製品を作る場合においては問題は無いのですが、今回のようなHiKOKIバッテリーをCuboRexの部品で動かす形で他社メーカーが製品を作る場合においては、ライセンスや保証、企業間のコミュニケーションが煩雑になる可能性もあります。
この辺りはCuboRex側も十分承知しており、バッテリーシステムの発売における今後の課題とも話していました。量産を対象としたアダプタの販売を行うかは未定とのことでしたが、筆者はマルツやDigikeyなどで気軽に買えるようになったらすぐ買う、と伝えています。