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2020年11月16日

VESSEL 電ドラボール、ハンドドライバーがそのまま電動ドライバに【レビュー】

VESSEL 電ドラボール、ハンドドライバーがそのまま電動ドライバに【レビュー】

株式会社ベッセルから、USB充電で使用できるボールグリップ型の電動ドライバー220USBが発表されました。前回、ベッセルの電ドラボールを紹介して以降、大人気状態で入荷待ちの状態でしたが、12月の下旬にAmazonで再入荷していたので早速購入してみました。

  • ボールグリップ形状の電動ドライバーがそのまま電動ドライバー化
  • USB充電で幅広いUSB充電器に対応
  • ビットの交換で幅広いネジに対応
  • 手回しでの締付けにも対応
  • 変速・クラッチは未搭載

トップブランド『VESSEL』が送り出す電動ドライバー

今回レビューするのは、ハンドドライバーのトップブランド「VESSEL」が2018年の11月に発売したばかりの新商品『電ドラボール 220USB』です。

電ドラボールの付属品

電ドラボール付属品一式

今回購入したのは、充電器が付属していないセットの「220USB-1」です。付属品は「電ドラボール本体」「説明書」「MicroUSBケーブル」「付属ビット」の4点です。

電ドラボールに付属しているビットは、電ドラボールと同時発売の被膜チューブ付き片頭ビット”USB162100“です。

MADE IN JAPANな電ドラボール

電ドラボールのラベル

さてさて、VESSELと言えばハンドドライバーやビットで有名な工具メーカーです。一応、電動ドライバーも取り扱っていますが、産業用の電動ドライバーが中心であり、VESSELにとって今回のような民生用ドライバーの販売は初となる電動工具でもあります。

そうなると大体は中国工場の生産品だったり、どこかのOEMだったりする可能性もあったわけですが、ラベルを見るとしっかりとMADE IN JAPANの表記。生産地を気にしてしまう方も多いと思いますが、電ドラボールは日本製です。

電ドラボールのパッケージロゴ日本製
外箱にもしっかりと「日本製」と書かれていた。ガジェットのレビュー記事を書いてる流れから、USB充電のバッテリー製品はだいたい中国製と言う先入観があったのだが、なんと電ドラボールは日本製なのだ。

電ドラボールの充電方法

電ドラボール充電中

電ドラボールはUSB充電に対応した電池内蔵の電動ドライバーです。USB端子に差し込むだけで充電が始まり、約60分で充電完了します。

充電器は何を使えばいいの?思う方も多いと思いますが、充電器はスマホと同じUSB充電器を使用することが出来ます。ケーブルはMicroUSBケーブルを使うので、Androidスマホを使用の方はそのまま差し込めますし、iPhoneユーザーの方はMicroUSBのケーブルを買うだけで電ドラボールへ充電することが出来ます。

最近では電動工具の充電器にUSB出力機能が搭載されていたり、バッテリーをUSB充電器に変換できるアダプタも販売されているので、コンセントのない現場でもUSB充電に困ることはないでしょう。

スマホの充電器なんて持っていない!と言う方はUSB充電器付属の220USB-5があるので、そちらの購入がおすすめです。

ちなみに、充電中は電ドラボールは使用できなくなります。作業を始める前にはしっかりと充電しておきましょう。

動作を検証!ロックした時や手回しの状態は?

実用面で気になる所は「ロックした時どうなるの?」「手回しでどこまで使えるのか」だと思います。

電ドラボールはロック状態を検知すると自動で停止する機能を備えています。電動時の最大トルクは2N・mと低いので、よほど柔らかい材料でなければネジ山やネジ頭を潰すようなことはないと考えられます。

端子台のネジを電動で締め付けた時にロックした場合の挙動を確認。ロック検知ですぐに停止するのではなく、1秒ほど経ってから赤色LEDが点灯して停止する。

手回しの時の最大トルクは10N・mまでとなっています。

手回し締付けの時に電ドラボールを壊してしまわないか?と不安になるかもしれませんが、ハンドドライバーで10N・mを締め付けるには、非常に大きな労力を必要とします。

VESSELの実験結果によると、 手で締め付けられる最大トルクは実用上8.0N・mが最大であり、電ドラボールの手締め時の最大トルク10N・mであれば手で締付けて壊すことはないと考えられます。

ハンドドライバーで締め付けられるトルクは、スーパークッションでも最大8.0N・mとなっている。ちなみに動画のウッディドライバーは油が手に付着しても滑らないのが特徴のハンドドライバーだ。

両頭ビットやドリルビットは使える?

付属品の替えビットは片頭の段付きのプラスビットです。実際の作業となれば、#1のプラスビットやトルクスビット、ソケットビットなど様々なビットを使う場面があります。というわけで、付属品以外のビットも使用できるか検証してみます。

両頭ビットも装着OK!

ビットの中で一番ポピュラーな65mm両頭プラスビットは問題なく装着することが出来ました。6.35mmの片頭と両頭ビット、共に問題なく装着できたので、市販されているほとんどのビットを装着できます。

プラスだけではなく両頭スクエアビットもOKでした。構造上、両頭ビットの種類によってはスチールボールで受けることになってしまい、ビットが外れなくなる原因になるんですが、ビットメーカーなだけあってしっかりと考えられているようです。

ドリルビット装着で簡単な穴あけも可能

電ドラボールのカタログを見ると、対象としているユーザーは、電気工事や設備工事ユーザーだと思いますが、ドリルで木材の穴あけもできるのであれば、DIYや内装工事にも使用することができます。

というわけで、5mmの木工ドリルビットを取り付けてSPF材に穴あけ能力を検証してみます。

2×4のSPF材 38mmを5mmドリルビットで穴を貫通させるのに開けるのに1分かかった。穴あけはできない事もないが、やはり電ドラボールの用途として適してはいないようだ。

いける!モーターはかなり苦しそうな音を出すけど穴を開けられない事もない!

電動ドリルほどスムーズでは行きませんが、SPF材の5mmくらいなら時間を掛けて穴を開けることができるようです。ただ、モーター負荷はかなり高く、押し付けすぎると過負荷ですぐ停止してしまいます。細系の穴あけなどはできるかもしれませんが、基本的には低速低回転のドライバーなのでドリルビットでの穴あけは難しいようです。取扱説明書にも「ネジを絞めたり・緩めるものです」と書いてあるので、穴あけ作業は用途外です。

アクリルやABSなどのプラスチックにも穴を開けることできましたが、アルミや鉄板など金属材への穴あけは不可能でしょう。

ハンドドライバーの用途を完全に置き換えられる電ドラボール

実際に電ドラボールを使用してみると、ハンドドライバーで使っていた作業は完全に電ドラボールに置き換えることができます。それどころか、スティックタイプの電動ドライバーの出番も少なくなってしまうほど便利な一品です。

これまで長いネジの締め付けなどには、ハンドドライバーでネジ山を合わせて電動工具に持ち替えて一気に締付ける方法を取っていましたが、これが電ドラボール一本で済むようになり、工具持ち替えなどの負担も減って非常に楽になっています。

手締め機構についても、普通のハンドドライバーと同じように使用することができています。手締め機構はビット差し替え構造になっているためにどうしてもガタツキが出てしまうので、使っていて違和感を感じるかな?とも思ったのですが、実際に使ってみるとそこまで気にすることはありませんでした。

手締め機構は構造上、モーターが止まりきらないうちに手締めを初めてしまうと稀に手締め機構が働かず空回りしてしまうことがあります。そのため、電動締付けから手締めを始めるタイミングには注意が必要かもしれません。

まとめ|進化し続けるVESSELのボールグリップ

ボールグリップと言う形状のドライバーは1984年にVESSELが初めて製品化したハンドドライバーです。ボールグリップのドライバーは瞬く間に大ヒット商品になり、ハンドドライバーの定番の製品にまでなりました。

それからボールグリップは数多くのバリエーションが開発され、差替ドライバー安全貫通ラチェット搭載など様々なボールグリップドライバーが展開されてきました。そして、今回の電ドラボールは、誰しもが考えていた「ハンドドライバーが電動になれば」を具現化した製品です。コンセプトはもちろん、実使用上においても欠点はほとんどなく、ハンドドライバーをそのまま置き換えることが出来る製品であると考えられます。

使い勝手も非常に良く、ハンドドライバーの締付けを手軽に電動化できることから「とりあえず持っていれば使える!」電動工具です。ただ、モーターが内蔵されているからと言って電動ドライバーの代わりになるものではなく、電動動作はあくまでも手締め締付けの補助的なものです。

後は、耐久性は長い間使ってみないとわからないので検証していきたいと思います。メカ的な部分はもちろんの事、モーターやバッテリーなどの劣化具合などは、半年くらい使用した後に追記していきたいと思います。

今後の電ドラボールには、変速やクラッチ・インパクトの搭載、USB Type-Cによる急速充電・コネクタ耐久性向上など様々な新展開も考えられ、低トルク高速回転仕様や絶縁仕様などバリエーション展開などもされて、USB充電の電動工具として新しい製品群となるポテンシャルを秘めているのかもしれません。今後のVESSELの動向にも注目です。

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