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純正バッテリをリサイクルした互換バッテリー 大阪プラント
今回、検証を行うマキタ互換バッテリーは、大阪府大阪市に本社を置く大阪プラント株式会社が販売するリサイクルバッテリーです。

この互換バッテリーは、大阪プラントがマキタ純正バッテリーを回収して、リサイクル(リビルド)したリサイクルバッテリーです。

一般的な互換バッテリーは、マキタ純正バッテリーの筐体をコピーした互換筐体を使用しますが、大阪バッテリーのリサイクルバッテリーはマキタ純正バッテリーのケースを使用しているため、純正バッテリーと全く同じ装着性を実現しているのが特徴です。
ちなみに、大阪プラントは昭和50年創業の企業でレーザープリンタ向けのリサイクルトナーの取り扱いを始めた企業で、平成23年からニッカド・ニッケル水素電動工具用のバッテリーリサイクル事業を開始しています。その後リチウムイオンバッテリーパックのリサイクル事業も始めており、2010年代の半ばに一度電動工具向けのリチウムイオンバッテリー事業を停止していましたが、最近になって事業を再開したようです。

記事内の大阪プラント互換バッテリーは、2025年開催のDIY HOMECENTER SHOW 2025の大阪プラントブースで購入したもので検証を行います。
マキタ18Vスライド互換バッテリーのチェックポイント
当サイトの互換バッテリー検証では下記の項目を中心に分解検証を進め、互換バッテリーの安全性を評価します。
電動工具用バッテリーに関しては、電気用品安全法への適合のほかにも、純正バッテリーに準拠する機能の搭載が求められます。
- ハイレートセルの採用(PSE非定義)
電動工具は急速充電、大電流放電で使用するため、高い充放電性能を持つハイレートセルの搭載が必須。バッテリー内部抵抗測定や放電レートを変えた時の放電容量で判断。 - 保護回路(PSE定義+メーカー独自)
リチウムイオンバッテリー機器で必須の「過放電/過電流/過充電/過熱/低電圧保護」の有無。加えて全セル監視を行っていること。特にマキタ14.4V/18Vスライドバッテリーは、放電保護機能をバッテリー側に依存しているため、バッテリー側での遮断機能が必須。 - 製造元・輸入者・販売店情報(PSE定義)
電気用品安全法における輸入事業者の情報、およびバッテリーの情報を適切にラベルに記述していること。
2番目のバッテリーセルの保護回路については、令和4年12月に電気用品安全法の改正が行われており、全セル監視搭載の保護回路仕様が必須となっています。
外観の確認
筐体の外観
大阪プラントのリサイクルバッテリーは、マキタ純正バッテリ BL1860Bのケースを洗浄して再利用しています。そのため、バッテリーの外観もマキタ純正バッテリと同一です。

側面も純正品と同じマキタロゴが記載されています

裏面には、マキタ純正ラベルの上に大阪プラント株式会社の名称が書かれたラベルが張られています。

ラッチ側には品名が書かれた紙のラベルが張られています。

残量表示パネルはマキタ純正バッテリと同じデザインで同じ赤色LEDが点灯する仕様になっています。

マキタ純正バッテリ(右)との比較です。筐体は同一ですが、内部保護基板が異なります。

底面ラベル以外の判別方法としては、通信端子(黄)の濃さとターミナル接点の形状で見分けなければいけません。大阪プラントのリサイクルバッテリーは通信端子の黄色が濃く、接点形状も爪が2つしかない旧仕様になっています。
保護基板はよくあるマキタ互換バッテリー保護基板
保護基板の外観を確認します。リサイクルバッテリーとは謳っているものの、保護基板はマキタ互換バッテリーに見られる一般的な互換基板を搭載しています。

残念ながら、このリサイクルバッテリーの保護基板はポッティングされておらず、耐久性の面で不安が残る仕様となっています。電動工具用バッテリーの保護基板はその用途からポッティング必須であり、この時点で信頼性に問題があると言わざるを得ません。
この保護基板の品名は”RHY1305R1″ですが、Alibabaで探した限りでは互換保護基板単体の販売は見つかりませんでした。数多くの中国企業がマキタ互換基板の派生形を作っているので、いくつか存在するマキタ互換保護基板の亜流として専用開発された基板と考えられます。

こちらは出力遮断用のFETスイッチです。

基板を観察して気になったのが、基板上にはんだボールがいくつか飛び散っている点です。はんだボールははんだ付け時に発生する異物で、基本的にはんだ付け条件が悪いことにより発生するもので、自動光学検査 (AOI)や目視検査によって選別します。

このはんだボールはICのリード線ピッチより大きいサイズであるため、振動や衝撃でボールが動いて運悪くプロテクトICやFETスイッチの制御端子に接触してしまった場合、保護動作が無効化されてしまう可能性があるため、基板の製造品質には若干難があると考えられます。
セル確認・スポット溶接
本バッテリーに搭載しているバッテリーセルの品名を確認します。
セルの外観を見る限り、マキタ純正バッテリ BL1860Bと同じセルのmurata VTC6を搭載しているようです。

マキタ純正(右)と比較してみると、セルのシュリンク色や刻印なども極め近く、本物のVTC6を搭載している可能性は高いと考えられます。

スポット溶接に関しては若干位置ずれ等があるのが気になりますが、溶接品質としては問題ないレベルと想定されます。推測ですが、これは全自動スポット溶接ではなく手作業によるスポット溶接で作業されたものと考えられます。

電気的な検査
内部抵抗測定
内部抵抗値の測定によって、保護基板の性能と採用セルの真贋を判定します。基本的に内部抵抗値は低い方が良いです。
バッテリー端子を介した接触抵抗込みの内部抵抗測定では、マキタ純正バッテリが38.2mΩに対し、大阪プラントバッテリーでは54.9mΩであり約1.5倍の内部抵抗値となりました。


また、ターミナルブロックを介さないコンタクトの測定では、マキタ純正バッテリが36.9mΩに対し、大阪プラントバッテリーは41.9mΩになりました。


セルブロックの総電圧部の測定では、マキタ純正バッテリが35.1mΩに対し、大阪プラントバッテリーは35.4mΩになりました。


セルブロックの内部抵抗測定では、VTC6採用のマキタ純正バッテリとほぼ同等の値となったことから、大阪プラントのリサイクルバッテリーはマキタ純正バッテリと同じ村田製のVTC6を採用している可能性が高いと考えられます。
その一方で、保護回路のオン抵抗やコンタクトの接触抵抗を含む測定では純正品より高い抵抗値となったため、保護基板の能力としてはマキタ純正バッテリに比べて若干劣る仕様であるものと考えられます。
容量測定
0.5C放電を行った際の容量測定の結果を下記に記します。

結果としては、公称容量6.0Ahに対し実測容量は5.5Ahとなりました。若干少なく感じられるのですが、新品のマキタ純正 BL1860Bバッテリでも実測容量は5.6Ahであるため、許容範囲と解釈します。
過放電遮断の動作に関しては、12Vまで電圧降下した時点で確認されました。現在のマキタ純正バッテリが約8Vで低電圧遮断するため若干高い電圧値での遮断動作となりますが、これは中国製のマキタ互換BMSによくみられる設定値となります。
バッテリー低残量状態の高負荷時には不意な遮断が発生すると考えられますが、実用的にはそこまで問題ないものと想定しています。
放電レート測定
0.5Cから2Cまでの放電レートを表したグラフが下記になります。

ハイレートセルの特徴である、負荷レートを大きく取っても電圧降下量が比較的低い傾向が見られました。
測定に使用した電子負荷の最大定格の関係上、2C以上の負荷レートを引くことはできないため確定的な断定は難しいものの、2Cまでの放電傾向としてはハイレートセルに近い特性が見られたものと考えられます。
その他、規格関連
大阪プラントの企業HPにはPSEテストレポートの表紙が掲載されています。

テストレポートは表紙だけなので実施試験の内容については確認できませんでしたが、表紙から読み取れる情報としては、現在のPSE技術基準 J-62133-2に適合した試験を実施したもので、現状のPSE適合としても問題ない製品と捉えられます。
個人的な懸念事項としては、安くて速いが特徴の中国ローカル認証機関の発行テストレポートである点です。中国ローカルのテストレポートは立ち入り検査時に難癖をつけられやすい印象が強いので、後々のことを考えればもうすこし権威性の高い認証機関にした方が良い気がします。
実態としては純正筐体を流用した互換バッテリーと言うのが正しい
さて、率直に言うと、この大阪プラントのバッテリーは「セル交換して再組み立てを行ったリサイクル品」というより、「マキタ純正バッテリーの外装(ガワ)を流用し中身を互換バッテリーに置き換えた製品」と表現する方が実態に近いかもしれません。
例えば、セルのみを交換することで純正バッテリと同一の構成に戻したとすれば、整備品・再生品として「リサイクルバッテリー」を名乗るのも理解できます。しかし、バッテリパックの基幹部品である保護回路を非純正に置き換えたものをリサイクルバッテリーと呼ぶのはやや無理があると感じます。
大阪プラントが保護基板ごと内部部品を入れ替えた理由は、大きく2点あると考えています。第一に、セルブロックを取り外した状態で純正保護回路が正しく動作する保証がないこと。第二に、セルブロック単体の調達が難しく、規格適合の面でもハードルが上がることです。
保護回路については、マキタが仕様を開示していない点もありますが、そもそもバッテリーパックのBMSはセル交換を前提としておらず、交換後の安全性を十分に担保できなくなるのが問題です。規格適合も同様で、仕様が不明な他社製保護基板を組み込んだ状態でPSEの試験レポート発行を引き受ける認証機関は、現実的にはほぼ存在しないと考えられます。
調達面でも、バッテリーパックAssyメーカーが単セルやパック途中品(仕掛品)を輸出するケースは原則として期待できません。さらに国内で組み立てるとしても、マキタバッテリー相当サイズのPSE試験レポートを発行できる国内認証機関はほとんどなく、日本国内で一般販売向けの量産を成立させるのは事実上困難です。
こうした課題を解決できないために、大阪プラントは純正保護基板の流用ではなく、保護基板ごと入れ替える方式を選んだのだろう、と想定しています。
知財的にグレーだが、互換バッテリーの中では信頼できる方
今回の大阪プラントの互換バッテリーは、いくつか懸念点はあるものの、これまで見てきた中では比較的信頼できる部類と言えます。MurataのVTC6を互換バッテリーの生産規模で調達できている点は驚きで、相当信頼できる中国のパックメーカーを見つけたのだろうと推測しています。保護基板は互換品ながら仕様は妥当で、あとはポッティングさえ施されれば申し分ない互換バッテリーと言えそうです。
ただし、村田製作所がこの手の少数ロット製品にVTC6を供給し続けられるのかは若干疑問であり、どこかの段階でモリセルやEVEエナジーあたりの中国ブランドセルに入れ替える可能性も十分に高いと考えられます。
一方で気になるのは、実態としては純正バッテリーの中身を丸ごと入れ替えた互換バッテリーでありながら、マキタのロゴを付したまま再販売している点です。電気用品安全法上の輸入事業者も異なるため、事実上の互換バッテリーを他社ブランドを掲げて販売しても良いのか、知的財産権の観点でもグレーと言わざるを得ない状態です。
もっとも、大阪プラントは2025年のDIY HOMECENTER SHOWやTOOL JAPANに出展を行っており、同イベントに出展していたマキタも本リサイクルバッテリーの存在は把握しています。おそらく営業部門レベルの認識にとどまるものの、現時点で販売方法への申し立てはなく特段問題視していないようです。
とはいえ、昨年話題となったマキタ純正を模した偽造バッテリーに近い側面もあり、悪意あるユーザーが大阪プラント製との識別を困難にした状態で流通させれば、マキタも看過できなくなる可能性があります。この先の議論は当事者であるマキタの判断次第ですが、大阪プラントは販売手法の点でどこか見直しを迫られるかもしれません。
結論として、保護回路や採用セルは一定の信頼に足る一方、「セルだけ入れ替えてリサイクル」のように見える表現には無理があると言えます。商標的にも他社の判断に左右されかねない製品であり、最低限、マキタのロゴは除去して高品質な互換バッテリーとして正攻法で展開するのが望ましいと考えます。
また身も蓋もない話ですが、国内企業が真っ当なリチウムイオン電池を扱えば価格はそれなりになります。大阪プラントの価格設定もその例に漏れず、実売価格は1万円近いものとなっています。この価格設定であれば純正バッテリーを選ぶ判断も十分妥当だと思います。
大阪プラント リサイクルバッテリーまとめ

大阪プラント リサイクルバッテリー
VOLTECHNO製品評価
(3.5 / 5)
純正バッテリのケースを使用した互換バッテリー
- 純正バッテリと同一のセルを採用
- 保護基板の動作はPSE適合
- 過放電遮断などマキタバッテリ動作に準拠
- ケースが純正バッテリなので製品との嵌合が良い
- 保護回路にポッティングなし
- 保護回路の品質管理が甘い
- 商標的に懸念点あり






