BOSCH(ボッシュ)は家庭向け充電式電動工具の分野において、メーカー間の垣根を超えたバッテリークロスプラットフォーム「POWER FOR ALL ALLIANCE」を展開します。18Vバッテリーの共通化によってメーカー間で異なっていても同じバッテリーを使いまわせるようになります。2021年時点では欧州6社が参画。
目次
ボッシュの家庭向け共通バッテリー規格
「POWER FOR ALL ALLIANCE」
POWER FOR ALL ALLIANCEとは、ドイツの機械メーカー BOSCH(ボッシュ)が提唱する工具用バッテリーのクロスプラットフォームの名称です。
これまでの家庭向け充電式機器はバッテリー内蔵のACアダプタ充電品だったり独自の外付けバッテリーを使った充電式製品が一般的でしたが、この規格に対応する製品であれば同じバッテリーを使いまわせるようになります。
POWER FOR ALL ALLIANCEの母体となるバッテリープラットフォームは、ボッシュが2007年から販売を進めている家庭用18Vバッテリーです。同シリーズは家庭向け電動工具シリーズながら2.5Ah・4.0Ah・6.0Ahの3バリエーションのバッテリーを揃え、魅力的な製品ラインナップを揃えているのが特徴です。
6社の工具メーカーが参画
POWER FOR ALL ALLIANCEは2021年12月時点で欧州6社のメーカーが参画しています。
主に家庭向け機器を中心としたメーカーが参画しており、園芸機器メーカー GARDENA(ガルデナ)や清掃機器メーカー GLORIA(グロリア)の製品がボッシュの家庭向けバッテリーで動作します。
残念ながら日本企業でこのアライアンスに参画している企業はありません。日本国内においてはボッシュ製品のみがPOWER FOR ALL ALLIANCEに対応する製品となります。
文化や歴史・民族性が合理的なアライアンスを生むのだろうか
POWER FOR ALL ALLIANCEに関しては、以前紹介したmetabo CASに近いものがあり、その取り組みや利点に関してもほぼ同じです。ただし、家庭向け製品に向けた共通バッテリーの存在意義は安全面においてプロ向けよりも大きいと考えています。
ここ最近は国内ホームセンターブランドや商社による充電式電動工具製品の取扱が進んでおり、その中には国内法令には一応適合しているものの、中身の実態はわからない製品や販売に際して多少問題のありそうな製品も少なからず存在しています。
リチウムイオンバッテリーを搭載する製品は一朝一夕で扱えるようなものでは無く、電動工具のような使用者に危険が及びかねない製品に関しては一端の商社・小売業が取り扱うこと自体慎重になるべきものと考えています。
ただし、それもある意味では綺麗事であり、実際の問題として魅力的な商材を取り扱いたい販売者の要望を無視してまで「危険だから」の一言で安直に規制強化を推進するのも市場の健全さに欠けるのではないか、とも考えたりします。
その1つの妥協案こそ「電動工具バッテリーの共通化」ではないかと思っています。
リチウムイオンバッテリーの取扱い経験に乏しい企業がおっかなびっくりの状態で充電式の製品を扱うよりも、共通化された実績のあるプラットフォームを活用し、得意とする分野を生かす方向に動いた方が遥かに健全です。少なくとも、ホームセンターや商社が独自にリチウムイオンバッテリーの規格を乱立させるよりは、より安全でユーザーライクな製品となるでしょう。
さて、話は少し戻りますがプロ向け電動工具のバッテリー共通規格として先行している方式にはmetabo CASがあり、不思議なことにこちらもドイツ企業が主導する電動工具向けのバッテリー共通規格です。
なぜドイツ企業ばかりが合理的な統一プラットフォームを立ち上げられるのか。その背景を考えてみると文化的・民族的な要因が深く影響しているのではないかと筆者は憶測しています。
筆者は欧州史の専門家ではなく、この考えも特に裏付けのない憶測ではあるのですが、ドイツの電動工具メーカーのみがバッテリー共通プラットフォームを成し遂げた点、そしてその戦略に対し実際に企業が集い合理的なアライアンスを構築できている背景には、日本人のモノづくり認識とは根本的に異なる何かが潜んでいるのかもしれません。