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2020年3月20日

互換バッテリーの危険性とは、独立行政法人nite 非純正バッテリーの使用に注意喚起

リチウムイオンバッテリーはスマホやノートパソコンだけではなく、様々な電子機器や電動工具にまで搭載されるようになっている。広く普及したリチウムイオンバッテリーは事故件数も急激に増えており、近年では特にメーカー非純正の『互換バッテリー』による事故が増加している。

今回は、道立行政法人 製品評価技術基盤機構(通称nite)が今月23日に公表した「急増!非純正リチウムイオンバッテリーの事故」の資料を元に、互換バッテリーの危険性について解説する。

ダイソンの互換バッテリーで広く認知された危険性

「互換バッテリー」とは「非純正バッテリー」とも呼ばれ、純正品ではない第三者メーカーから販売されているバッテリーを指す。非常に低価格な製品として注目を集めており、純正バッテリーに対して半額以下で販売されているケースもある。

これまでの互換バッテリーと言えば、カメラやパソコン、ゲーム機などの分野がほとんどだったのだが、近年は充電式クリーナーや電動工具に代表される高出力な用途への互換バッテリーの展開も進んでいる。

「マキタ バッテリー」で検索すると、純正品以外の互換バッテリーが数多く表示される。電動工具バッテリーのインターネット販売の大半は互換バッテリーが占めている。

以前から互換バッテリーは容量が少なく寿命が短いなどの問題はあったのだが、危険性について大きく取り上げられることはなかった。この状況が大きく変わったのは、2019年8月のダイソンクリーナー互換バッテリーでの発火事故だ。ダイソンによる使用中止の呼びかけ1、及び経済産業省からバッテリーパックの販売自粛の呼びかけを行うまでの製品事故案件となった。2

今月24日には製品事故情報の調査収集を行う独立行政法人 製品評価技術基盤機構niteから「急増!非純正リチウムイオンバッテリーの事故~実態を知り、事故を防ぎましょう~」と題した互換バッテリー対する事故の概要と危険性を訴える資料が発信されている。

Screenshot

急増!非純正リチウムイオンバッテリーの事故

リチウムイオンバッテリー(以下「LIB」という。)は、スマートフォンやノートパソコンなどの電子機器だけでなく電動工具や電動アシスト自転車など幅広く製品に使われています。また、使用の広がりとともに、製品事故は毎年増加しています。こうしたLIBの事故の実態を解説し、事故を防ぐためのポイントを挙げて注意喚起します。

互換バッテリーはなぜ危険性が高いのか

当サイトでは、過去数回に渡り電動工具の互換バッテリーに対する検証を行ってきた。互換バッテリーはリチウムイオンバッテリーと搭載する製品として危険が無いか、安全して使用できのかを確認した。

電動工具のバッテリーはなぜ高い?リチウムイオンバッテリーの話|VOLTECHNO
電動工具の互換バッテリーを分解、検証してわかる安さの理由|VOLTECHNO
電動工具の互換バッテリーは本当にPSE適合しているのか検証|VOLTECHNO
電動工具の互換充電器は使える?マキタ互換の充電器を購入して動作を検証|VOLTECHNO

これらの検証を行った所、互換バッテリーは電動工具に適さない低価格なセルを使用しており、保護基板も十分な電池保護機能を搭載していない点が確認されている。

その他にも様々な問題を確認しており、結果として「リチウムイオンバッテリー機器としてトップクラスの事故危険性を持つ製品」として結論を述べている。

当サイトが実施した互換バッテリーの調査では、安全性に関わる重大な問題点として下記の6点を挙げている。

電動工具やクリーナーのバッテリーはカメラやゲーム機のバッテリーと異なり、大容量高出力が求められる非常に過酷な条件下で使用される製品だ。これらのバッテリーが発火すると事故の規模も大きくなり、周囲に多大な影響を与えることとなる。

電動工具のバッテリーは多数のリチウムイオンセルで構成されている。通常、1本のセルが発火すると他のセルにも熱が伝わり連鎖的に全てのセルが発火する。

互換バッテリーを原因とする事故情報をniteが公開

今月23日には、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(通称nite)が互換バッテリーを原因とする製品事故の実情と発生件数について報告をまとめている。これらの情報は、niteのホームページから全文を読むことができる。

リチウムイオンバッテリー搭載製品全体の事故発生状況

リチウムイオンバッテリー製品は普及が進み、その事故も増えている。2019年はモバイルバッテリーのPSEマークの義務化によって製品事故が減った一方、ダイソンの互換バッテリーによる事故が多発し、事故総数は増加となってしまった。

互換バッテリーが関係する年度別事故発生件数

互換バッテリーが関係する製品事故は2017年までほとんど発生していなかったのだが、2018年から一気に増加している。2019年はダイソンの事故が大きな要因となったのだが、電動工具の互換バッテリーは着実に増加しており今後も増加傾向にあると予想している。

互換バッテリー事故発生時の状況

niteが公表するデータで最も興味深いのが「事故発生時の使用状況」だ。このデータを見る限り事故の大半は充電中に発生しており、互換バッテリーの過充電保護がうまく働いていないために事故に至っているものと考えられる。

さらに、このデータは「互換バッテリーはどのような状況下でも発火する可能性がある」を示唆している。もちろん、バッテリーは正常な状態であれば事故に至ることはない。しかし、バッテリーが正常か不良かの状態を一見して判別するのは難しい。

互換バッテリーは、様々な要因からバッテリーセルへのダメージを受けやすい構造になっているバッテリーだ。電動工具による振動や衝撃によって、事故の引き金は簡単にひかれてしまうのかもしれない。

これらの発生件数は実際に事故が起きてから消防署からの連絡や消費者センター経由など然るべき手順でniteに寄せられた情報のみを集計した結果の資料となっている。実際には事故が発生してもniteへの報告を行わなかったり、ユーザー側で全て処理してしまうケースも存在している。実際の事故件数はより多いはずだ。

互換バッテリーは魅力的だが、安さのメリットを遥かに超える危険性

筆者としてはメーカーの独自規格はユーザー囲い込みに繋がるため、ユーザーにとって選択の不利になる考えており、互換バッテリーの存在そのものは好ましいと考えている。

しかし、現在の互換バッテリーは低価格を優先するあまり、容量詐称や低品質品の氾濫、最低限の安全対策すら実施されていない製品で溢れており、ユーザー側で安全かどうかの判断方法も限られている。この製品を例えるのであれば、いつ発火するか分からない不発弾を販売しているに等しい行為だ。

互換バッテリーは「1年保証」を謳っており、期間内であれば何度も無償交換ができるのをアピールしている。そもそも互換バッテリーは電動工具に必要な性能を満たしていない低価格セルを使用しているため、まともに運用したのであれば「保証交換」が前提となる製品だ。

しかし、いざ事故や火災が発生した場合の製造物責任法(PL法)の話となれば、輸入者がその責任を全て負うとは考えにくい。人身災害や大規模火災が互換バッテリーによって引き起こされたとしても、製品知識や資金に乏しい消費者が泣き寝入りとなる可能性は否定できないだろう。3

リチウムイオンバッテリーは便利な製品であるが、それ故に危険性も高く、各メーカーは何重にも安全対策を施してユーザーの安全に努めている。純正品と比べると、互換バッテリーは低価格で非常に魅力的な製品だ。しかし、事故危険性の排除を怠り、ユーザーにとっての安全を無視して作られているのが互換バッテリーの実態だ。このような製品は、建築・土木・DIY・ホームユースなど全ての分野で受け入れる事ができない製品と結論づけられるだろう。

脚注

  1. ダイソンコードレス掃除機をご使用の皆様へ|ダイソン
  2. ネットモールで充電式掃除機用として販売されたSHENZHEN OLLOP TECHNOLOGY社製バッテリーパックの使用を中止してください|経済産業省
  3. 急増!非純正リチウムイオンバッテリーの事故「P8」
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