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中国ブランド充電式電動工具の今をレポート、質と量で大手ブランドに迫る中国ブランド

中国ブランド充電式電動工具の今をレポート、質と量で大手ブランドに迫る中国ブランド

存在感を増す中国ブランドの充電式工具

第59回 DIY HOMECENTER SHOW 2023(主催:日本DIY・ホームセンター協会)が、幕張メッセ(会場:千葉県美浜区 2023年5月25日~27日) で開催されました。

コロナ規制緩和による渡航解禁の影響もあってか、2023年のイベントでは中国を中心に海外メーカーの出展も再開されており、全体出展数の2~3割ほどが海外地域の企業で占められる程になりました。

今回の記事では、充電式電動工具を扱う中国ブースを中心に中国地域の電動工具メーカー解説やブランド動向を解説します。

NINGBO EASUN TOOLS

浙江省寧波市のNingBo Easun Tools Co., Ltd(宁波羿诚工具有限公司)です。

紫色の本体ボディが特徴の充電式電動工具シリーズを展開しており、インパクトやドライバドリルなどの一般的な電動工具に加えて、マルチツールやスプレーガン、トリマーなど幅広い充電式電動工具を製造しています。自社ブランドのEasunシリーズを展開していますが、主にOEM/ODMで海外向け製品の展開を主力としているようです。

バッテリーはバッテリー本体にACアダプタを刺す方式と専用充電スタンドの2way方式を採用しており、標準4.0Ahと2.0Ahの2仕様で展開しています。

ブース内には、日本国内では見かけないサイズの高圧洗浄機も展示していました。

企業ページ
https://easuntools.en.made-in-china.com/

JINDU INDUSTRIAL

浙江省永康市に工場を持つ、Zhejiang Yongkang Jindu Industry and Trade Co., Ltd.(浙江永康金都産業貿易有限公司)です。

JINDUは主に大型のダイヤモンドコアドリルを主力製品としていましたが、ここ最近になってリチウムイオンバッテリー充電式電動工具の展開を始めたメーカーです。

リチウムイオンバッテリーは独自の18Vバッテリーを採用しており、冷却構造による急速充電機能などに対応しているのが特徴です。

赤と黒の2トーンカラーが特徴の18Vリチウムイオンバッテリー。冷却口を備えており、充電時の放熱や急速充電に対応する。
主力製品の大型ダイヤモンドコアドリル(AC230V動作品)

企業ページ
https://www.diacoredrill.com/

MINLI POWER TOOLS

浙江省永康市のZHEJIANG MINLI POWER TOOLS CO.,LTD(浙江闽立电动工具有限公司)です。

マキタバッテリーと互換性のあるリチウムイオンバッテリー電動工具シリーズを展開しており、シリーズラインナップが多く、工具のデザインも日本の電動工具メーカーに強い影響を受けているようで、なんとなく親しみを覚える電動工具シリーズになっています。

リチウムイオンバッテリーは、マキタ18Vバッテリーと相互装着できる形状。専用充電器とACアダプタによる2way充電構造を備えています。マキタ純正の充電器には装着できない仕様になっています。

MINLIバッテリーの装着口と専用充電器
18Vリチウムイオンシリーズと220-240Vシリーズの電動工具を展開している。

企業ページ
https://www.minli.com/

Rotake Tools

今回の中国ブースの充電式電動工具で最も好印象だったのが、Hunan ROTAKE Tools Co.,ltdです。

ROTAKEはエア駆動の締結工具を開発する企業ですが、最近になってリチウムイオンバッテリー搭載の充電式インパクトレンチに参入したそうです。

マキタ18Vシリーズと相互装着できるリチウムイオンバッテリーを展開しており、薄型2.0Ah、標準5.0Ah、大容量8.0Ahバッテリーの3仕様を展開しているのが特徴です。マキタの18Vシリーズは6.0Ahまでのバッテリー容量しか展開していないので、8.0Ah仕様の大型バッテリーは少し欲しくなってしまいました。

またバッテリーケース筐体も単純なマキタバッテリーのコピーに留まらない独自の構造や工夫も見られ、工具本体のハウジング質感もよく、コンパクトなブラシレスモータ搭載による他社差別化も図れており、販路さえ確保できれば日本市場でも戦えるポテンシャルを感じたブランドでした。

大型インパクトレンチの展示。製品の質感も大手電動工具メーカーに近いものがあり、性能面でも他社に引けを取らないと予想された。
マキタバッテリーと相互装着できる構造だが、マキタ純正充電器での充電には対応していない。互換バッテリーは充電周りでトラブルが多いので、このような充電仕様のほうが安全性が高いのかもしれない。

企業ページ
https://www.rotake.com/

Ningbo Goodo Tools

Ningbo Goodo Toolsは、電動工具 BLACKPINEシリーズを展開する工具メーカーです。

ショップジャパンなどの通販サイトで販売していたデュアルブレードソーを製造する電動工具メーカーのようで、現在は18V充電式のデュアルブレードソーなども取り扱っています。

またUSB電源で動作する3.6Vシリーズの充電式電動工具も展開しており、個性の強い製品を開発している電動工具メーカーのようです。

製品のフォルムやポスターのデザインが国内某商社ブランドが展開していた電動工具シリーズに似ているので、意外と日本市場に馴染みが深い電動工具メーカーなのかもしれません。

企業ページ
http://www.goodotools.com/

JIANGYIN ORDG TRADING

Jiangyin Ordg Co., Ltd(江阴市奥登贸易有限公司)は、中国製の工具を広く扱う商社です。

ブース内では電動工具の展示品もあり、主に展示していたのはマキタバッテリーが使える高圧洗浄機やハンディチェンソーなどでした。

日本市場では見かけなくなりつつあるベース付きの充電式チップソーカッターなども展示していました。これらの製品はマキタバッテリー装着対応です。

面白かったのがこちらの充電式ブロワ。ハンドルを180度回転させて折りたためるので、収納が省スペースでコンパクトになるのがウリだそうです。もちろんこちらもマキタバッテリー装着対応でした。

企業ページ
http://www.ordg.net/

電動工具生産の本場は中国、プロ向け市場にも影響波及するか

電動工具の世界的な主要ブランドと言えば、DeWALT、Milwaukee、マキタ、ボッシュなどの欧米地域+日本発のブランドが中心ですが、それらメーカの主力生産工場は中国に依存しており、全体生産数の約7~8割が中国の工場で生産を行っています。今や、電動工具産業にとって中国は欠かせない存在です。

さらに、電動工具を商品として考えた場合、インパクトドライバーやディスクグラインダーなどは製品設計がシンプルで均質化しやすい傾向にあります。その結果、基本性能における各メーカー間の技術的差異が次第に縮小しており、中国ブランドと大手ブランドとの実用的な性能差も少なくなっています。

たとえば、10年前の中国ブランドの電動工具は、エラストマの二色成形やシボ加工がされていない、使いにくい製品が多かったのですが、今日では高品質なエラストマ 二色成形やブラシレスモーター搭載機種まで手頃な価格帯で登場しています。

これらの動きから、中国ブランドの電動工具は品質と性能で確実に進化を遂げており、電動工具市場にとって中国ブランド電動工具は世界的に無視できない存在に成りうると考えています。実際に、電動工具の開発製造ノウハウを持たないホームセンターや商社までもが自社プライベートブランドの電動工具を展開するようになっており、Amazonをはじめとする通販サイトの半数以上が中国ブランドの低価格電動工具で占められています。

DIY向けの電動工具市場では、すでに多くの製品が低価格な中国ブランドやOEM/ODM製品に置き換わっており、プロ向け電動工具メーカーのDIYブランドの影響力はほとんどありません。一方で、プロ向け市場ではブランド力や販路が大きな影響を持っているため、シェアの変動は当面ないものと予想しています。しかし、何らかの変化が起きれば、中国の電動工具ブランドがプロ向け市場をも席巻してします可能性もあるのでは、と考えています。

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