VOLTECHNO(ボルテクノ)

ガジェットとモノづくりのニッチな情報を伝えるメディア

2024年9月20日

HiKOKI 今後の新製品・販売候補品をチェック【2023年夏編】

HiKOKI 今後の新製品・販売候補品をチェック【2023年夏編】

本記事は工機ホールディングス株式会社及び関連会社が保有する産業財産権の情報を解説・紹介するものであり、新製品発売や経営動向を保証するものではありません。工機ホールディングス株式会社及びHiKOKI(ハイコーキ)取扱店へのお問い合わせはお控えください。

スライド10.8Vバッテリーと18Vバッテリーの共用コードレス製品

この特許は、スライド10.8Vバッテリーと18Vバッテリーを同じ面で装着できるようにする特許です。

ラジオや保冷温庫のような定置型製品なら十分理解できますが、小型化や取り回しが重要な電動工具に対しては取り回しを悪化させる冗長なものでしかなく、このグラインダの意匠図は企業を上げた高度なギャグなのではないか、とも思っています。

これは後ほど別のコラムとしてまとめたいと思っているのですが、DeWALTが積層リチウムイオンセルのPowerStackを出してしまった時点で、バッテリーサイズによる電圧の区分はほとんど意味のないものになりつつあります。

このあたりはマキタに対しても言えることではあるのですが、筆者はバッテリーサイズの自由度が高くなれば、10.8Vのような小型バッテリーの存在は不要なると考えています。このような構造を考えるくらいなら、積層セルによる小型18V(36V)バッテリーの開発とシリーズ統合に少しでも努めた方がよいのではないか、とさえ思っています。

ロール釘対応のコードレス釘打ち機

コードレス釘打ち機のロール釘対応モデルに関する特許です。

2023年の現時点において、ロール釘に対応する充電式の電動釘打ち機hあDeWALT DCN45RNしかなく、またエアスプリング方式となるとHiKOKIが最先端を行く分野となり、期待値の高い製品となっています。

国内の電動釘打ち機に関しては過去に当サイトで述べた通り、銃刀法が普及の妨げになっており、実用化が叶ったとしても国内販売においては大きな問題が残ります。この辺りについては、回避できる法解釈の発見や法改正などを見据えているのかもしれません。

とは言え、国内販売の可能性はそこまで高くないので、実際のところとして海外市場によるコイル連結釘のエアモデルの買い替え需要を狙っているものと予想しています。

18V非互換の新型マルチボルト(?)36Vバッテリー

マルチボルトバッテリーに続く新型バッテリーの特許意匠図です。バッテリセルホルダによる冷却構造と18V非互換の端子構造を備えています。

現行のマルチボルト36Vで動作する製品への互換性は保たれると予想していますが、18V製品は非対応になる上に、新しい36V充電器も必要になります。そのため、マルチボルトバッテリー程の互換性は確保できない製品になると予想されます。

現在のHiKOKIのユーザーが持つ好印象なイメージは、マルチボルトバッテリーによる18V互換性の確保が大きいと感じています。そのため、その18V互換機能を削ぎ落したバッテリーの登場は、ユーザーの心象を著しく悪くするのではないかと懸念しています。

また個人的な心象ですが、この互換性排除は、これまで行ってきたマルチボルトバッテリー戦略における白旗のような内容であるとも捉えています。結局のところ、互換性の排除は遅いか早いかの違いでしかなく、互換性を切り捨てたマキタ40Vmaxの方針も間違いではなかったと言えるのではないでしょうか。

電動工具搭載によるBluetooth位置検出システム

Bluetoothなどの無線機能による工具の位置検出システムに関する特許です。

以前、電動工具にBluetoothスマートタグ機能を追加しないのか、とコラムを載せましたが、その時既にHiKOKIは関連特許を出願していたオチとなってしまいました。

とは言え、この特許は出願が2021年であり、特許出願の少し前からシステム開発を進めているなら、そろそろサービスが始まっても良い時期なのですが、今のところ、このサービスが始まる様子はなさそうです。

ちなみに、この機能を搭載するにはハードウェア的な対応も必要なので、昨年発売の新型マルチボルトバッテリーはまさに最適なタイミングと言えました。もしかしたら、ハードウェア的な機能は既に搭載していて、HiKOKI アプリのアップデートで位置検出機能が有効になる可能性も0ではないのかもしれません。(とは言えHiKOKIがこの手の機能を開発していれば必ずカタログに「開発中」と書くので、希望的観測が過ぎた発言かもしれません)

少し辛辣な意見となってしまうのですが、国内の電動工具メーカーはソフトウェア開発に必要とされる継続的な開発改善を行う意識や文化に乏しい面が見られ、成果が無ければすぐに撤退したり放置したりする傾向が強いため、この手の成長を前提としたITサービスの運営は到底不可能ではないかと思っています

スライド10.8Vコードレスチャンネルカッタ?

スライド10.8Vバッテリーに対応する切断工具です。先端形状的にCチャンネル専用の切断工具と推測されます。

Cチャンの専用切断工具は、手動であっても大型で取り回しの悪い製品が多いので、スライド10.8Vバッテリーモデルにすることで、小型で取り回しの良い製品にしたい意図があると考えられます。

Y-Δ(スターデルタ)変換モータ制御コントローラ電動工具

ブラシレスモータのステータコイル配線を変えてモータ特性を変える特許です。

画像の紫の部分は、制御回路に搭載したリレーです。このリレーで配線を切り替えることで、ブラシレスモータの配線をスターからデルタ、またはデルタからスターに変え。モータ特性をダイナミック変える機能を実現します。

アイデア的には、マルチボルトバッテリーにも続く、HiKOKI市場革新製品の第2段にも成り得るポテンシャルはあるのですが、回路や制御の複雑化による高価格化や動作中のモーター配列切り替えによる製品寿命の影響などが懸念されるため、実用化は難航するだろうと予想しています。

筆者の個人的な意見としては、どんなに試験や制御を考えても、リレーの溶着やFETが吹き飛ぶリスクの低減には限界があり、寿命の短さをトレードオフにした程度の性能向上にしかならないのでは、とも思っています。

正直なところ、回路規模や信頼性などの点で担保できる見込みが薄そうなので、技術開発の方針として、先にやるべきことはセンサレスやベクトル制御の方とも思っています。とは言え、結構ムチャで楽しみのある特許ではあるので、実用化した時にどのような仕上がりになるのか楽しみにしています。

ハンマドリル集じんシステムにホースを接続できる新型アクセサリ

ハンマドリルに装着する集じんシステムに集じん機接続用のホース穴を付ける特許です。

ここまでの特許が割と珍品揃いだったので、これも第一印象で珍品に見えてしまいましたが、意外とこの構造は悪くないのでは?と思い直しています。

よくよく考えてみると、集じんシステムに集じん機ホースを繋げれば、いくつもの集じん先端アクセサリを用意する必要もありません。集じん容量も増やせるので、作業の選択肢を増やす意味でよくできたアイデアだと思っています。

ハンマドリルは重量感や使い勝手に左右される要因が強い製品なので、ホースを付けることによる重心変化や強度などが製品開発の課題になりそうですが、上手く仕上げられれば良いアクセサリになりそうです。

話は少し逸れますが、工機HDは手配できる資材の範疇を超えて機能向上を図るたがる企業であり、そのためか前提を無視して常軌を逸脱する異様な特許も多いので、もう少し柔軟で実用性の高い特許も増えたらいいのになと思っています。

新型のコードレス静音インパクトドライバ

打撃時の音が小さい新型静音インパクトの特許意匠図です。

現行のWHP18DBLの発売は2016年であり、その発売から7年経過しているので、そろそろモデルチェンジしても良い頃合いの製品です。

とは言え、この手のオイルパルス系の静音インパクトは古くからある製品であり、発展の余地も少なく需要も限られた製品です。特許内では締め付け性能の向上と書かれていますが、どこまで性能が伸びるのかは未知と言えるでしょう。

スマートフォンを活用した遠隔管理システム

スマートフォンを利用した電動工具の遠隔ロックシステムに関する特許です。

この手のIT関連機能は、コンセプトとしての検証開発くらいなら容易ですが、実際の運用については、ITシステムの構築や他システムとの連携等が必要になり、これは工機HDがあまり得意としない分野の開発になると予想しています。

また、現在の建設市場はこのような機能を求めていないと考えられ、電動工具メーカー自身がこのようなシステムの需要を喚起する必要があります。残念ながら工機HDは、基本的に他社追従路線の企業であり、この手の新需要開拓戦略を得意とするメーカーではないため、この特許が生かされる可能性はほぼ無いと考えています。

ちなみに、特許内の記述では近接無線通信を主体に記載しているのですが、今後の技術動向や実運用の利便性を考えた場合、リモートeSIMプロビジョニングとIoT向け携帯回線の普及が進み、Bluetooth接続のようなスマホ経由の通信はそう遠くないうちに無くなる可能性も高いと思っています。

さらに言ってしまえば、スマホ接続をベースとした機能開発は採算性に繋げにくいので、先のことを考えれば、電動工具に携帯回線を乗せるところから始めて、そこから新しいビジネスモデルを考えるフェーズになってきているのではとも考えています。

スライド10.8Vシリーズの石こうボード用ドライバ

スライド10.8Vシリーズのコードレスボード用ドライバの特許意匠図です。

スライド10.8Vバッテリー搭載による軽量化がウリと予想される製品です。

マルチボルトモデルのW36DYAがバッテリー装着時で1.6kgなので、スライド10.8Vモデルなら1.2kg程度になると考えられます。軽量化の点では優位になりますが、10.8V動作によるパワー低下や作業量不足が懸念となりそうです。

これについてもスライド10.8Vバッテリーと18Vバッテリーの共用コードレス製品の話と同じく、積層セル採用によるバッテリーが市場に出てしまった以上、HiKOKIも同じような積層セルのマルチボルトバッテリーがあったならばW36DYAで十分となる製品です。

ある意味で、技術力や企業規模と言うか、そんな感じの電動工具メーカーの取れる選択の差が表面化し始めている製品のではないかなと思える特許と言えるのかもしれません。

Return Top