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2022年10月24日

HiKOKI 今後の新製品・販売候補品をチェック【2022年夏編】

HiKOKI 今後の新製品・販売候補品をチェック【2022年夏編】

HiKOKI 2022年夏カタログから新製品の予告はほぼ無くなる

2022年7月1日にHiKOKIの新しい総合カタログが公開されました。

HiKOKIの総合カタログは、2020年頃からカタログ冒頭の新製品コーナーに販売前の新製品情報を掲載していましたが、今期のカタログからコードレス電動工具の発売予定告知は無くなり、事実上、総合カタログ上での販売予告は終了したと見られます。

これまで行っていた新製品予告はページ数の埋め合わせと話題性づくりの印象がありましたが、もはや従来通りに半期ごとに総合カタログを発行するのも難しい状態にある印象があります。

日立製作所からの資本が外れて以降、機関紙 KOKI PRESSの季刊発行も儘ならない状態であり、総合カタログ自体もこの1年程は広告モデルや価格改定を理由として発行を遅らせているので、そう遠くないうちにHiKOKIの総合カタログは年1発行になる可能性もあるのではないかと予想しています。

工機HDの特許情報ハイライト(2022年1月~)

今期はカタログ上の新製品情報がなかったので、工機HDが出願した知財関連の情報を中心にピックアップして解説します。

バッテリ搭載ハイブリッドコンプレッサーの続報

以前紹介した、バッテリー搭載型のエア釘打ち機用コンプレッサーの続報です。

今回の特許は、バッテリパックの取り付け構造に関する特許です。意匠図も新たなものに変わりました。詳しい形状は確認できないものの、8Lクラスサイズにコンパクト化した製品仕様に変えたようです。

同社の8Lクラス EC1245H3相当のサイズでエア消費量の大きいエア工具を何台も使えるとするなら、それなりに利点も見いだせる製品ではあるものの、国内市場限定の採算性・将来性の乏しい製品である点、バッテリーを含むコスト増要素をどこまでユーザーが許容できるかの2点が大きな争点となりそうな製品です。

(左)上側から見た図 (右)側面から見た図
バッテリ装着部の構造

コイル連結釘対応の充電式釘打ち機

この特許は、電動釘打ち機のコイル釘装填の部品構造に関する特許です。

バッテリーで動く充電式の電動釘打ち機は、次世代の釘打ち機として各社開発を進めており、HiKOKIについても欧米地域においてフレーミングネイラとして製品展開を行っています。

電動釘打ち機の連結釘はマガジン装填方式が主流ですが、コイル連結釘にも対応できるようになれば全ての釘が電動化に対応するようになり、エア方式からの移行がより一層進むことが期待されます。

ただし、日本国内においては銃刀法の関係上、HiKOKIが得意とするエアスプリング方式の国内展開は難しく、電動釘打ち機の国内展開は当面不可能であると考えられます。

コイル連結釘対応の製品は2020年発売の米DeWALTの45mmルーフィングネイラ DCN45RNがある。
この電動釘打ち機の打ち込み方式はフライホイール方式。

マルチボルトバッテリーの容量増加

現行の10S1P(5S2P)構成からセル本数の構成を変えながらも従来バッテリーと互換性を維持するための特許です。

本特許では、セル構成を12S1P(6S2P) に変えているので出力電圧が43.2Vに上昇しますが、制御基板上に降圧回路を搭載することで従来バッテリーと同じ36V出力に調節する構造を備えています。降圧回路は2系統備え、それぞれ独立しているため従来18Vの互換機能にも対応しています。

この特許に関しては、従来18V/マルチボルトバッテリーとの互換性を維持しながらもバッテリー容量を増やす手段としては真っ当な方法ではあるものの、「バッテリーサイズと容量のトレードオフの関係を解決するわけではない」「バッテリーに降圧回路を搭載するならマルチボルトバッテリーの電圧切り替えは初めからそれだけでよいのではないか」など、バッテリープラットフォームのコンセプトとして腑に落ちない点を感じてしまう特許です。

経営戦略の点に関しても、マルチボルトのような大掛かりなバッテリーの展開を進めた結果、経営目標の未達で苦境に立ちつつも尚、再びバッテリーで奇を衒うのか、とも考えてしまいます。

バッテリー内蔵のブースト機能付き電動工具

30が内臓バッテリー

この特許は、電動工具にバッテリーを内蔵して、外部装着バッテリーに加えて内部装着バッテリーも合わせることで電動工具の出力を向上させる特許です。

電動工具側の制御回路には新たに充電回路が設けられ、普段は電池パックから内臓電池を充電し、モーター動作時には電流路を切り替えてモーターを駆動する仕組みになっています。

本特許のブロック図

考え方としてはキワモノ色の強い特許ですが、現行バッテリーのまま電動工具を高出力化させるアイデアとしては優れた考え方であり、先ほどの降圧回路内臓バッテリーと比較すればこちらの特許は幾分納得が行きます。

実際に適用できるのは7インチを超える大型丸のこだけになりそうですが、大径丸のこの需要が強い海外地域においては勝算を感じられる特許です。

ディスクモーターの改良特許

これは、日立工機時代に主力展開していた電動刈払機のディスクモーターに関する特許です。

HiKOKIは日立工機時代にヘッド部分に搭載するディスクモーターを開発し、CG18DSCLからCG36DAまでディスクモーターを採用したコードレス刈払機を展開していましたが、最新モデルのCG36DBでは本体後方搭載のモータに変わり、ディスクモーターを搭載する製品は全て廃盤となっていました。

ディスクモーター刈払機の開発は完全に中止されたものと考えていましたが、もしかしたらディスクモーター型の新型コードレス刈払機を展開する予定があるのかもしれません。

ただし充電式園芸機器に関しては、新たな市場の形成が進んでいる段階ではあるものの、HiKOKIブランドが入り込む余地については厳しい状態にあり、採算性を確保することは難しいと予想しています。

ディスクモータ搭載の充電式刈払機 CG18DSCL

バッテリー防水型の電池一体型電動工具

今回の特許の中でも特に興味深いのが、バッテリーと電動工具を一体化した防水電動工具に関する特許です。

バッテリーの脱着構造を排して電動工具内部にバッテリーを搭載しており、一体型にすることで防水性を持たせた構造としています。本体後方には充電用の防水コネクタを搭載しており、そこから給電することで内部バッテリーを充電する仕組みと予想されます。

工具内部回路の機能ブロック図
インパクトドライバだけではなく、グラインダへの適用も可能となっている。

筆者は、携帯電話やノートパソコンがバッテリー内蔵型になったように、電動工具もバッテリー技術の進歩が進めばバッテリー内蔵型がスタンダードになる可能性が十分にあると予想しています。ただし、その実現は現状のバッテリー性能から5倍~10倍程度のサイクル寿命と容量増を伴う技術革新が前提であると考えているため、この特許が日の目を見るのはもう少し先になるでしょう。

話は逸れますが、この考え方に近い方式はUSB PDでも可能ではないか?と考えています。

USB PDの拡張規格 EPRは仕様上、最大48V/5Aの給電能力を持つので36Vバッテリーの充電にも対応でき、もう一つのUSB PD拡張規格であるPPSを適用すればCCCV充電にも対応します、そして防水型のType-Cポートを組み合わせることで類似の構造は実現できるので、この特許はType-Cの適応範囲が広がれば事実上形骸化する可能性も十分にありうると予想しています。

電動工具のような産業機器に適用できるかは不明だが、汎用的な防水給電コネクタとしてType-Cコネクタも存在する。Type-Cの適用範囲が広がり耐久性が上がれば電動工具への搭載も現実的になる。
画像参考:USB Type-C™準拠「DX07シリーズ」|日本航空電子工業

新形状のグラインダ

この特許はハウジングとモーターの組付けに関する特許ですが、特許意匠図内にはモーターをヘッド部に搭載した新型のグラインダが描かれています。

本意匠図はボッシュのアングルグラインダ GWS10.8-76Vに近い形状であり、コンパクトサイズの切断に特化したグラインダになると予想されます。

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