- メーカーの異なるバッテリーを変換するアダプターを検証
- 保護回路を無効にした状態で変換しているため危険
- 電動工具に使う変換アダプタとして構造・部品選定が稚拙
- 特許侵害回避のために保護装置を外している
- 法律・規格・特許侵害回避上の問題から、販売を規制する方法が無い
- 実際の使用は非推奨。例え自己責任でも使用は危険
当記事は製品の解説・調査を行う検証記事であり、解説している製品の使用や購入を推奨するものではありません。
目次
HiKOKIバッテリーをマキタに変換する
「バッテリー変換アダプタ」
以前電動工具メーカー間の共通バッテリーについてお話しましたが、それとは別に異なるメーカー間でバッテリーを使用できるもう一つの方法があります。それこそが「バッテリー変換アダプタ」です。
海外通販サイトではよく見かける製品ですが、日本ではマキタ一強市場だったり互換バッテリーが普及していたりと日本お膝元のマキタ・HiKOKIが目を光らせているためか見ることが少ない製品なのですが、最近は個人輸入事業の敷居が下がったことで国内通販サイトでもよく見かけるようになりました。
今回の記事は、HiKOKIバッテリーをマキタ18V製品で使えるようにする変換アダプタについて、そしてマキタ・HiKOKIのバッテリー制御についても軽く触れながら調査してみます。
アダプタ外観を確認
早速、変換アダプタの外観を見てみましょう。
アダプタのマキタ側端子を見ると3端子分のコンタクトが見えます。マキタ製品はライトやラジオなどの低負荷製品は2端子仕様ですが、電動工具などの負荷が高い製品には3端子仕様で動作する仕組みになっています。
マキタバッテリーは3端子目にサーマルプロテクタが接続されており、3端子目はバッテリーの過熱状態を検知する仕様になっています。
ちなみにこのアダプタはマキタバッテリーが搭載している黄色の通信ターミナルが無いので、マキタ充電器には装着できない構造になっています。
アダプタを裏返してHiKOKIバッテリー側を見てみると、HiKOKIバッテリーを2端子で電極を取り出す構造になっていました。
HiKOKIバッテリーは3端子目でセルのアンバランスや過熱保護などを検知して工具本体側で停止する仕組みになっているため、3端子目を省いて通電するこの構造は安全保護機能が省かれた危険性の高い製品です。
HiKOKIのマルチボルトバッテリー BSL36A18に装着してみます。
攻めた寸法になっているためか装着時のガタツキはほとんどありません。むしろかなり硬いので、振動や異物が入り込んだ時の樹脂同士の固着が怖いです。
マキタの充電式ライト ML812に装着してみます。
こちらの方は寸法に余裕があるようで、スムーズに取り付けできます。ラッチのスプリングが軽いので簡単に脱着できます。ただし、バネ荷重が軽いと衝撃や落下などでラッチが外れてしまうので、軽すぎるのも良くありません。
HiKOKIマルチボルトバッテリーでマキタ18Vは動くが…
HiKOKIバッテリー端子側の3端子目を省いている時点でアウトな製品ですが、一応、手持ちのマキタ18V充電式製品に装着して動くかの確認も行ってみます。
原理的にはバッテリーからプラス端子とマイナス端子を取り出して製品側に繋げているだけなので、原理上すべてのマキタ18V充電式工具が動作します。
3端子のターミナルを搭載しているインパクトドライバのような高出力の電動工具でも動作します。
実際にコーススレッドを締結して行って高負荷時の挙動を確認しているわけではありませんが、高負荷動作でも問題なく動作します。むしろバッテリー異常状態も工具側で検知できなくなるため、保護が一切機能せずに発熱で火を噴いたとしても動き続けると考えられます。
分解して内部構造を確認
HiKOKIバッテリー側が2端子の時点で安全性に疑問があるアウトな製品ですが、せっかくなので蓋を開けて中身も確認してみます。このアダプタは四隅のトルクスねじで固定されているので、ねじを外せば簡単に分解できます。
内部はシンプルで、インサート成型されたターミナルとターミナルを実装した基板と配線で構成されています。
マキタ側3端子目の基板裏側部分にはサーマルプロテクタのダミー抵抗が実装されています。
アダプタのケースを固定しているネジは山の浅い小ねじで止められており、樹脂に対する締結方法としては不適切な部品選定です。
ナットやインサートナットなどの金属部品は無く、ねじのかかっている長さも短いので、落下や衝撃などで短時間のうちにネジ山が削れて外れてしまうと考えられます。
実際にインパクトドライバの打撃締結動作を行うと、30分程度の振動でネジ山が削れて固定が緩くなってしまいました。
使用は非推奨、保護機能が働かなくなるのは無視できない
今回のアダプタについては懸念点が2点あり、バッテリー保護が機能しなくなる点とネジの選定が悪い点の2点が問題です。長く使い続けると、発火やバッテリー脱落などトラブルの元になります。
特にHiKOKIバッテリーは保護機能を工具本体側に強く依存している仕様なので、今回のような保護端子を無視した製品仕様は根本的な安全性を無視しており、バッテリー発火のリスクが高まります。
このアダプタを使ったからと言って確実に事故が起こるわけではありませんが、本来、製品設計の段階で避けられていたリスクを敢えてユーザーが負う形になる製品です。
リチウムイオン機器やリチウムイオンバッテリーに見識のある立場であれば、安全性を完全に無視した悪質な製品であると断言できます。
残念ながら、この手のアダプタはPSEを含む各種法律の規制対象外の製品なので販売を規制する法律はありません。国内通販サイトの自首規制や法対応が及ばない製品であるため、万が一のリスクを避ける意味で、見かけても購入しないことをお勧めします。
HiKOKIバッテリー→マキタバッテリーアダプタまとめ
HiKOKIバッテリー→マキタアダプタ
VOLTECHNO製品評価 (1 / 5)
HiKOKIバッテリーをマキタ18V電動工具に変換するアダプタ。安全保護が機能しなくなる
- HiKOKIのバッテリー仕様に準じていない
- 各種安全保護が機能しなくなる
- 使用中に脱落する可能性が高い