電動・エア工具を製造・販売する工機ホールディングス株式会社(本社:東京都港区)は、電動工具ブランド HiKOKI(ハイコーキ)からコードレスインパクトドライバ WH36DDを全国の電動工具取扱販売店などを通じて発売する。新たにネジ締め時のカムアウトを低減する細ビスモードを備える。本体希望小売価格は31,100円(税抜)
目次
HiKOKI コードレスインパクトドライバ WH36DD
電動工具ブランド HiKOKIを展開する工機ホールディングス株式会社は、コードレスインパクトドライバ WH36DDを発売します。
WH36DDは、電動工具ブランド HiKOKIが展開する最新のフラッグシップコードレスインパクトドライバです。2020年10月発売のWH36DCから約3年ぶりの新製品となります。
従来製品のWH 36DCから、ねじ締め時のカムアウトを低減する「細ビスモード」(アプリで選択可能)、小形・高出力モーターの搭載や暗所でも視認できるバックライトを採用した操作パネル等、使い易さと小形化を更に追求しています。
販売仕様は、蓄電池と充電器・ケースが付属する(2XH)と本体のみの(NN)で販売します。カラー展開は、アグレッシブグリーン、ストロングブラックが基本カラーで、フォレストグリーンと新色スコーピオンレッドとスパイダーイエローが後日発売します。
- WH36DD(L)(2XH) 蓄電池BSL36A18BX×2・充電器UC18DML・ケース付属 希望小売価格83,000円(税抜)
- WH36DD(L)(NNL) 本体のみ 希望小売価格31,100円(税抜)
- WH36DD(B)(2XH) 蓄電池BSL36A18BX×2・充電器UC18DML・ケース付属 希望小売価格83,000円(税抜)
- WH36DD(B)(NNL) 本体のみ 希望小売価格31,100円(税抜)
WH36DD製品仕様 (従来モデル WH36DC比較)
製品名 | WH36DD | WH36DC |
---|---|---|
外観 | ||
能力 | 小ねじ:4~8mm 普通ボルト:M5~M16 高力ボルト:M5~M14 テクスねじ:φ3.5~φ6 コーススレッド:22~125mm |
小ねじ:4~8mm 普通ボルト:M5~M16 高力ボルト:M5~M14 テクスねじ:φ3.5~φ6 コーススレッド:22~125mm |
最大締付トルク | 200N・m | 200N・m |
無負荷回転数 | 最大 3,700min-1 | 最大 3,700min-1 |
打撃数 | 最大 4,100min-1 | 最大 4,100min-1 |
動作電源 | マルチボルト36V | |
重量 | 1.6kg | 1.6kg |
寸法 | 118×243×111mm センタハイト29mm |
116×241×114mm センタハイト29mm |
本体価格 | 31,100円(税別) | 29,300円(税別) |
販売年月 | 2024年02月 | 2020年10月 |
製品の特徴
「日立工機の電子パルス機能が復活 細ビスモード搭載」
カムアウトを低減する“細ビスモード”搭載 HiKOKI TOOLSアプリに、新モード”細ビスモード”を搭載しました。(Bluetooth接続して設定することで有効化)
細ビスモードでは打撃メカニズムの電子制御にによってカムアウトを低減します。職人さんのねじ締め始め動作を電子制御で再現しているため、細ビスを使用するような繊細な作業に最適です。
ヘッド長111mmのコンパクトボディで取り回しが向上
小形・高出力モーターを搭載し、従来製品よりヘッド長を3mm短くし、ヘッド長111mmのコンパクトボディで、狭所作業の取り回しがさらに向上しました。
3灯LEDから9灯へ進化したLEDライト
3灯から9灯にすることで、さらに明るくなりました。ビットの影を気にすることなく作業ができます。
本体のスイッチパネルでライトの照度を『強』『中』『弱』に切替えることができ、さらにアプリを使えば、さらに詳細設定が可能になりました。
操作パネルにバックライトを搭載で視認性が向上
暗所でも視認性がよい、バックライト採用操作パネル操作パネルにバックライトを採用。暗所でも視認性がよく、モード切替がラクに行えます。
4層成形により差し色を加えたコンビネーションカラー
4層成形により、差し色を加えることでコンビネーションカラーを実現。
作業性を向上する各モードを搭載
各種締結作業を補助するボルト締結モード、パワーモード、テクスモードを搭載。
ボルト締結モードではオートスロー機能を搭載し、設定された時間・回転速度に自動で停止・変速し、ナットの脱落防止を補助します。(スイッチ引き量が最大で逆転時のみ)
APPモードで自分好みのフィーリング設定が可能
Bluetooth蓄電池(BSL36A18BX等)を取り付けると、HiKOKI TOOLSアプリからAPPモードで自分好みのフィーリングに調節可能。
HiKOKI TOOLS
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新デザインのトリプルハンマ形エラストマを採用
握りやすさを追求した新デザインエラストマを採用、HiKOKIインパクトの特長であるトリプルハンマ型のデザインで力強さをより一層引き立てます。
収納ケースの使い勝手が向上、自動簡易ロック機能を搭載
IP65相当の防じん・耐水性 IP65相当の防じん耐水性を兼ね備え、塵や埃、水の侵入を防止します。
小物入れの簡易ロック機能 小物入れのフタを閉じると自動で簡易ロックします。ラッチの閉め忘れによる小物のバラまきを防止します。また、側面に手をかける溝を設けており、側面からの引き出しが可能になりました。
電子パルスの記載はないが、WM18DBLのパルスモードに近い動作
今回のWH36DDがウリにしている細ビスモードに関しては、カタログや広報素材などからの明言はないものの、動画冒頭の打撃動作音が電子パルスモード特有のモータオンオフ切替操作に近い動作音であり、電子パルスドライバのモータ制御が作用しているものと推測しています。
一般的なインパクトドライバは、負荷時にハンマが軸方向に後退することで打撃を行います。この方式はモータの一方向への回転で打撃を実現できるので打撃効率が良く、高いパワーを出しやすいメリットがありますが、その分、打ち込み方向に対するハンマの移動によって上下にも動くため、カムアウトしやすい欠点もありました。
電子パルス動作の特徴は、モータを逆回転させてハンマを逆回転方向に後退させることで打撃を行う点にあります。ハンマの後退が無いので扱いやすく、モータ制御によって打撃量を細かく調整できる利点があります。HiKOKIオーストラリアは当時の電子パルス解説動画をYouTubeに上げているので、電子パルス動作の概要を見ることができます。
今回の細ビスモードに関しては、ハンマが打撃しない程度にモータを制御することで電子パルス動作を実現しているものと推測しています。当サイトでは、電子パルスドライバは過去に日立工機の意欲作として紹介していましたが、その真価を発揮するのは、製品そのものではなく付加価値としての機能だったのかもしれません。
今回の電子パルス動作のパテント的な動向としては、シンプルな動作なので他社が追随することは難しいのではないかと予想しています。本機能の評判は市場でも上々のようなので、今後のHiKOKIインパクトの大きな強みになることは間違いないでしょう。ある意味、日立工機がスライド丸ノコの特許で猛威を奮った時代の再来とも言えるのかもしれません。
本製品に関連するものと考えられる特許は2022年に出願していますが、モータを逆転させて打撃する電子パルスそのもの基本的な特許は2010年前後の出願であるため、仮に他社が今回の特許回避に失敗しても、5~6年後の2モデル先となるフラッグシップインパクトには他社インパクトに何かしらの類似機能が搭載されるものと推測されます。
あとは、重箱の隅をつつく難癖にも近い不満点なのですが、今回の電子パルス制御に関しては、ソフトウェア的な付加機能であり、原理的には従来モデルのWH36DCに対するファームウェアアップデートでも機能追加することもできたのではないか、と考えてしまうところがあります。
一見すると製品仕様の向上や新デザインなどが目を惹くので誤魔化されてしまうのですが、インパクトドライバそのものの性能向上は完全に停滞している状態にあります。機能追加は間違いなく大きな価値ですが、為替や原価上昇を除く実際の価格上昇要因は4層成形などぶぶんであり、これを行わなければもう少しコストダウンできたのではないかと思います。
とは言え、現状の電動工具市場はファームウェアアップデートのようなソフトに対する価値の理解に対してユーザー・メーカー共に乏しく、既存品へのアップデートで新機能を追加できるとなればメーカーが得られる買い替えによる売上増のチャンスを見逃すことにもなりかねません。
しかしながら、インパクトドライバの性能停滞に対する1つの答えが今回のソフト的な付加価値で示された以上、ファームウェアアップデートを含むソフトウェア的な付加価値をベースとする、新しいマネタイズ手段を真面目に考えなければいけない時期に来ているではないかなとも思っています。
よく比較される工具
2020年10月発売
2023年1月発売
2022年1月発売