
電動工具ブランドHiKOKIを展開する工機ホールディングス株式会社は、2020年10月にマルチボルト36Vバッテリーに対応する新型のインパクトドライバWH36DCを発表。業界最軽量1.6kg/業界最短ヘッド長114mmのコンパクトボディに、ビット振れ低減・3灯LED、Bluetooth通信カスタイマイズ機能など新たな機能も搭載。2020年10月6日から発売開始。
HiKOKI WH36DC マルチボルト36V インパクトドライバ新発売

電動工具ブランド HiKOKIを展開する工機ホールディングス株式会社は、2020年10月にマルチボルト36Vに対応する新型のインパクトドライバWH36DCを発売します。
WH36DCはマルチボルトシリーズに対応する36Vバッテリーで動作する電動工具で、WH36DAのモデルチェンジとなる新型のフラグシップモデルのインパクトドライバです。業界最軽量1.6kg/業界最短ヘッド長114mmのコンパクトボディに、ビット振れ低減・3灯LED、Bluetooth通信カスタイマイズ機能など新たな機能を搭載しています。
発売は2020年10月6月からでHiKOKI製品取り扱い店舗で順次販売開始。販売仕様は、充電器・バッテリー×2・ケースが付属する(2XP)、バッテリー×2・ケースが付属する(2XN)、本体のみ(NN)の3仕様で展開されます。

- (2XP) 充電器・バッテリー・ケース付属
- (2XN) バッテリー・ケース付属
- (NN) 本体のみ
WH36DC製品仕様 (前機種WH36DA比較)
製品名 | WH36DC | WH36DA |
外観 | ![]() |
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能力 | 小ねじ:4~8mm 普通ボルト:M5~M16 高力ボルト:M5~M14 テクスねじ:φ3.5~φ6 コーススレッド:22~125mm |
小ねじ:4~8mm 普通ボルト:M5~M16 高力ボルト:M5~M14 テクスねじ:φ3.5~φ6 |
最大締付トルク | 200N・m | 180N・m |
無負荷回転数 | ソフト:0~900min-1 パワー:0~3,400min-1 ボルト:0~2,900min-1 テクス:0~3,700min-1 |
ソフト:0~900min-1 パワー:0~2,900min-1 ボルト:0~2,900min-1 テクス:0~2,900min-1 |
打撃数 | ソフト:0~2,000min-1 パワー:0~4,100min-1 ボルト:0~4,100min-1 テクス:0~2,200min-1 |
ソフト:0~2,000min-1 パワー:0~4,100min-1 ボルト:0~4,100min-1 テクス:0~2,200min-1 |
重量 | 1.6kg | 1.6kg |
寸法 | 116×241mm | 127×237 |
定価 | (NN) 23,200円 | (NN) 25,800円 |
カラー展開 | 浅緑・黒・赤・青・深緑 | 緑・黒 |
製品の特徴「業界最短のヘッド長114mm」

HiKOKIのインパクトドライバは、2013年のWH18DDL以降、競合他社が進めていたヘッド長短縮に追従せずパワー向上を追求した路線を歩んでおり、2017年のWH36DAまで127mmの全長ヘッドを維持していましたが、今回のWH36DCでは約7年ぶりにヘッド長さを短くする戦略を取り、クラス最短のヘッド長さを実現しました。
従来の日立工機/HiKOKIインパクトは2つ割ハウジング構造を採用していましたが、今回のWH36DCではマキタ・MAXと同様の3つ割ハウジング構造を採用しています。
さらに、ヘッド長さの短縮に当たっては、長年同じ構造を採用していたスリーブ形状までも変更しており、今回のHiKOKIインパクトがヘッド長短縮に全力で取り組んだことがわかる構造になっています。

本体価格が安い

色々な機能が追加され、注目する所目白押しのWH36DCですが、最も注目したい部分が希望小売価格です。WH36DCは、本体のみ仕様の価格設定が過去例のないほど安く設定され、期待のフラッグシップモデルながら大きな値下げが実施されているのが特徴です。
過去の日立工機/HiKOKIのブラシレスモーター搭載フラッグシップインパクトの本体価格は
- WH14DBL(NN):26,800円
- WH14DBAL(NN):24,800円
- WH18DBAL2(NN):24,800円
- WH18DDL(NN):25,800円
- WH18DDL2(NN):25,800円
- WH36DA(NN):25,800円
のように概ね25,000円~26,000円を前後していましたが、今回のWH36DCのように定価で3,000円近く値下げして販売されるのは、日立工機/HiKOKI史上前例のない大きな価格改定です。
この価格改定によって、競合他社のマキタのフラッグシップインパクトTD171D(23,200円)およびTD001G(26,200円)に対して、36Vモデルながら18Vモデル相当の製品として直接勝負できるクラスになりました。
充電器なしの(2XN)仕様が追加

WH36DCから充電器の付属しない(2XN)仕様が追加されています。
「バッテリーと工具は買い増ししたいけど、充電器は持っているからいらない」とユーザーの要望は昔からありましたが、他社に先駆けてHiKOKIが初めてこの仕様の展開を開始しました。
ビット振れを低減

WH36DCではビット先端の振れを17%軽減し、ブレを少なくしています。
アンビルの軸受け構造についての情報はなく、ニードルベアリングによる転がり軸受とメタルによる滑り軸受のどちらの構造を採用したのか、どのようにビットの振れを低減させたか構造は不明です。

別売りカラープレートで自分好みのカスタマイズ

WH36DCと同時発売でインパクトドライバのフック部分に取り付けるカラープレートも販売開始。
カラープレート5色と本体カラー5色で25通りの組み合わせが可能。自分好みのカスタマイズや同じインパクトを持ってる人と見分けるのに便利です。


3灯LEDで暗所作業でも影ができにくい

WH36DCでは、LEDライトが3灯になって光量アップ。前モデルのWH36DAの1灯LEDと比較してビットやビスの影ができにくく、暗闇の視認性も向上しています。

Bluetooth通信機能で動作モードをカスタマイズ

WH36DCで新たに搭載されたのが、Bluetooth機能を使った動作モードカスタマイズ機能です。
この機能は、電動工具とスマホをBluetoothで接続してしてトリガー操作のセッティングを行うもので、ソフトスタートや最高回転数・スイッチの遊び量などを調整できます。作業方法や好みに応じて細かくセッティングできるので、作業を快適に進められるようになります。
HiKOKI TOOLSアプリの詳細については、続報がわかり次第まとめとして特集します。

HiKOKIが送る渾身の新型インパクトドライバ
ビット芯ブレの低減や3灯LED搭載による使い勝手の向上、さらに2013年のWH18DDL以降、他社の全長短縮路線に追従しなかったHiKOKIが、ここにきて全長を一気に短縮して業界トップクラスのコンパクトサイズのインパクトを投入したのは予想外の展開です。
また、充電器別売仕様の(2XN)などは、バッテリーだけが欲しいユーザーの声を汲んで新たに追加された仕様と考えられ、製品だけではなく販売方法も新たな変化が見られます。
仕様・性能的には申し分のないWH36DCインパクトドライバですが、ネックとなるのは、電動工具業界の変化やそれを取り巻く販売戦略にありそうです。
販売展開に関しては残念な部分もあり、発売時点でBluetooth機能に使うBSL36A18Bの付属仕様が展開されていないので、WH36DCに新たに搭載したBluetoothカスタマイズ操作機能も活用することができません。また、現在のBluetoothバッテリーは通常バッテリーのBSL36A18の2倍近い実売価格で販売されているので、機能的な魅力はあっても、コスト的に見合わないのが正直なところでしょうか。
これまでの新型インパクトドライバがフラッグシップモデルとして注目されていたのは、「新型バッテリーの登場に合わせ」「一番売れる電動工具のインパクトドライバ」を抱き合わせたシナジー的な効果も含んでいたためですが、今回のWH36DCは新型バッテリー同時発売なしのインパクトドライバ単体での勝負になります。

HiKOKIは2020年9月から「マルチボルト蓄電池がもう1つついてくる!」キャンペーンも行っていますが、現時点でWH36DCはこのキャンペーンの対応について正式な通達を行っていません。(一応、期間内の新製品も対象とはなっているので、対象となる可能性は高そうです)
仕様・性能的に魅力的なインパクトドライバであっても、過去に何度も実施された拡販キャンペーンの影響もあり、新製品のインパクトを受け入れるユーザー環境はお世辞にも良い状態とは言えません。特に、Bluetoothバッテリーが市場に流通してないのは少し辛いところです。

新たなHiKOKIスタンダードとして魅力に溢れたインパクトドライバWH36DCですが、リチウムイオンバッテリー電動工具の登場から10年以上、電動工具の性能は頭打ちになり、電動工具ブランドの強さは電動工具単体の性能重視から製品群の展開を含む多角戦略的な構造に移り変わりつつあり、優れた製品1機でのシェア覆しは起きにくい状態になっています。今後、このインパクトを中心にどうやって買い替え需要や他社乗り換えを奮起させていくかに注目されます。