電動工具を製造・販売する株式会社マキタ(本社:愛知県安城市)は、2021年7月に40Vmaxシリーズで最大容量となる大容量高出力バッテリー BL4080Fを発売する。36V仕様で8.0Ah(288Wh)を備えるバッテリーとなる。本体希望販売価格は68,750円(税別)
目次
マキタ 40Vmax 8.0Ahバッテリー BL4080F
電動工具を製造・販売する株式会社マキタは、2021年7月に40Vmax 8.0Ahバッテリー BL4080Fを発売します。
BL4080Fは、同社40Vmaxシリーズの大容量高出力仕様バッテリーで、国内電動工具メーカーが販売する本体装着型のバッテリーの中では最も大きい容量のバッテリーです。
バッテリー仕様は、8.0Ah(288Wh)の容量を備え、重量は1.9kg、寸法は152×85×94mm。仕様上の充電時間はDC40RA充電時で76分です。
- BL4080F 36V-8.0Ah 希望小売価格68,750円(税別)
40Vmax(XGT)バッテリー シリーズ比較
製品名 | BL4025 | BL4040 | BL4050F | BL4080F |
---|---|---|---|---|
外観 | ||||
バッテリ容量 (電流時 mAh) |
2,500mAh | 4,000mAh | 5,000mAh | 8,000mAh |
バッテリ容量 (電力時 Wh) |
90Wh | 144Wh | 180Wh | 288Wh |
内部セル構成 | 18650 10S1P | 21700 10S1P | 18650 10S2P | 21700 10S2P |
最大出力 | 1.1kW | 1.5kW | 2.1kW | 2.8kW |
重量 | 0.7kg | 1.0kg | 1.3kg | 1.9kg |
寸法 | 118×77×48mm | 133×82×54mm | 152×79×75mm | 152×85×94mm |
本体価格 | 25,520円(税別) | 31,570円(税別) | 43,120円(税別) | 68,750円(税別) |
販売年月 | 2019月10月 | 2019月10月 | 2021月3月 | 2022年7月 |
製品の特徴
「国内電動工具ブランドで最も容量が大きいバッテリー」
BL4080Fは、国内電動工具ブランドの展開する本体装着型のバッテリーとして、最も大きい容量を持つバッテリーです。
バッテリー仕様は36V-8.0Ahで、電力時換算で288Whのバッテリー容量を備えています。
バッテリー本体サイズが大きいことから、一部の40Vmax製品には装着できなかったり実用性に難があったりする場合もあるため、BL4080Fバッテリーの購入前に装着・実用性に問題が無いかの事前確認を推奨します。
AS001G/TD001Gに装着
片手持ちの電動工具に装着してみるとこんな感じになりました。この形状の電動工具ではバッテリーサイズに制限が無いので装着することはできますが、片手で持つには重すぎて重量バランスも最悪なので実用性はほぼありません。
このような製品に対しては、素直にBL4025やBL4040を使用した方が良さそうです。
CL001G クリーナに装着
クリーナー CL001GにBL4080Fを装着すると見た目のバランスは悪いのですが、これも動作に問題はありません。
ノズル先端が地面に付くのでバッテリ重量は妥協できますが、重量バランスが悪いので使い続けていると腕の変なところが痛くなります。実用的にはBL4050Fくらいの重さが限界かもしれません。
MR008G ランタンに装着
BL4080Fを装着すると見かけは悪いものの、FMラジオ+ランタンを同時に動作させても約30時間の連続動作が可能になります。さらにUSB出力を併用しても十分に余裕があるので、アウトドアや災害発生時などで心強い存在になります。
定置型の製品に対しては、見た目の問題が無ければ十分実用的です。
CF001G ファンには装着不可能
残念ながら、充電式ファン CF001Gには装着できませんでした。
底面の樹脂部分が干渉しているので、切り出して改造すれば装着は可能かもしれません。このあたりは気づかないうちに製品仕様を変えて対応してきそうです。
ちなみに最近発売されたばかりの保冷温庫 CW002Gは本体サイズの小さいモデルなのですが、そちらはBL4080F装着に対応しているようです。CF001Gの発売日は2020年5月で40Vmaxシリーズの中でも早い方だったので、もしかしたらその時点ではBL4080Fバッテリーを展開する構想は無かったのかもしれません。
BL4080Fバッテリーの中身を確認
BL4080Fのケースを空けて内部部品の構成を確認してみます。
保護基板を確認してみると、BL4050Fの基板と基本的な部品は同一のようですが、外観形状やコーティングに僅かな違いが確認できます。この辺りは、防水耐久性などを見直したものと考えられます。
正直なところ、BL4050Fから新しく保護基板を起こす必要性もないとは感じるのですが、その辺りは大電流放電のための新タブの都合や部品調達事情、微妙な保護仕様の変更などが関係しているのかもしれません。
採用セル品名の確認
セルホルダを取り出すと、ちょうどセル品名の刻印が正面に来ていました。
品名が見切れていますが、村田の21700セルでVTCの名前を冠する製品はVTC6Aしか無いはずであり、セルのフィルムカラーも市場販売品のVTC6Aと同一なので、ほぼ間違いなくUS21700VTC6Aが採用されているはずです。
ちなみにUS21700VTC6Aは単セル放電負荷能力40A仕様のバッテリーセルです。10S2P構成のBL4080Fであれば、原理上バッテリー単体で最大負荷2.9kWまで対応できる計算です。
200Vクラスの電源コード式電動工具と同一のパワーを実現可能であり、80Vmaxであれば75ccエンジン工具をも超える5.8kW出力にも対応できます。(ただし、バッテリ重量による取り回しの悪さ・バッテリ容量の限界や現在のパワーデバイス事情を考慮すると、80Vmax 6kWクラスの電動工具の実用化はもう少し先になると予想されます。)
バッテリー内部抵抗値の測定
最後に内部抵抗を測定します。測定機器にはHIOKI BT3554を使用しています。
据え置き製品に使うバッテリとしてなら十分あり
国内電動工具メーカーが販売する工具用バッテリの最大容量は、旧日立工機のハンマドリル DH36DBL専用バッテリ BSL3660(216Wh)が長らく最も容量の大きいバッテリだったのですが、今回のBL4080Fの発売で6年ぶりに本体装着型バッテリの最大容量が更新されました。
ただし今回のBL4080Fはバッテリ技術そのものとしては全く進歩しておらず、基本的に21700セルのBL4040バッテリを2並列構成に増やしただけであり、電動工具としての実用性を考えればBL4040を2個買えば済むだけの話です。
とは言うものの、今回のBL4080Fに関しては用途的に手持ち電動工具への装着は想定しておらず、コンセプトとしては据え置き式の製品のために開発されたバッテリのように感じます。用途的には充電式保冷温庫や集じん機に使用するべきバッテリでしょう。
現在のマキタは企業の方針で「充電製品の総合サプライヤー」と謳っており、今回のBL4080Fを起点に、従来家電の充電式化や全く新しい充電式製品の開発など、新市場創生に向けた動きをより強めるものと予想しています。今後の40Vmaxシリーズの製品展開次第では今回のBL4080Fの価値は大きく化ける可能性もあります。
現状の充電式電動工具については、バッテリ性能の限界から充電式化が行き詰まっている状態にある訳ですが、力づくなやり方でその壁を越えようとしているのが今のマキタの方針でしょうか。
実際に現在のマキタは家電領域の製品展開を本格化しており、最近の例では充電式ケトル KT001Gの販売、今後は40Vmax電動アシスト自転車 BY001Gの発売予定や、研究段階ではあるものの40Vmax 充電式電子レンジの設計なども進めているようです。
電動工具用途としてはキワモノなバッテリですが、電動工具メーカーの枠組みを超えるために必要な製品であると考えるのであれば、今後の40Vmaxシリーズ展開それ自体に大きな期待が持てるバッテリなのかもしれません。
個人的には、2並列構成なら1セルあたりの放電電流を低く取れるので、VTC6Aセルをそのまま採用して高出力仕様にするよりも、よりバッテリ容量が大きいSamsung 50Sの採用して高出力仕様の”F”を付けず、10.0Ah仕様にした方が若干原価が上がったとしても喜ぶユーザーは多かったのではないかな?とも考えています。