VOLTECHNO(ボルテクノ)

ガジェットとモノづくりのニッチな情報を伝えるメディア

2023年2月10日

電動工具のバッテリー・充電器 徹底解説Q&A

電動工具のバッテリー・充電器 徹底解説Q&A

電動工具のバッテリーや充電器は種類が多く、製品の違いや使い方について分からないことが多い方も多いと思います。今回は電動工具に使われているバッテリーや充電器の疑問について解説します。

Q. 電動工具バッテリーの特徴は?

A.高出力・高容量のセルを採用し、衝撃や振動に対して堅固なケースで覆われているのが特徴です。

電動工具のバッテリーは、スマホやパソコンに搭載されているバッテリーと異なり、高出力・大容量の円筒型のバッテリーセルを採用しています。

バッテリーを収めるプラスチックケースも、落下や衝撃などに強い堅牢なケースを採用しているのが特徴です。

Q. リチウムイオンやニッカドバッテリーの違いは?

A.リチウムイオンバッテリーは高出力・高寿命・軽量で現在の電動工具に採用されている主流バッテリーです。ニッカドやニッケル水素はリチウムイオンバッテリー以前のバッテリーです。

リチウムイオン現在の電動工具主流のバッテリー。
高出力で軽いので、これまでのバッテリーよりも扱いやすい。
ニッケルカドミウムリチウムイオン以前の電動工具主流のバッテリー
現在でもDIYやホームセンター向けの低価格モデルで採用される。
ニッケル水素リチウムイオン以前に採用されていたバッテリー
ニッカド電池よりも容量が多いが、自己放電量が大きく・重量も大きい。
リチウムイオンバッテリーが直ぐに実用化されたため、あまり普及しなかった。

Q. バッテリーの充電速度は充電器で変わる?

A. バッテリーの充電速度は充電器によって変わります。急速充電器にも充電時間に差があります。

製品名充電電流6Ahバッテリー充電時間
マキタ DC18RF12A実用充電27分
フル充電40分
HiKOKI UC18YDL212A実用充電19分
フル充電25分
HiKOKI UC18YDL12Aフル充電30分
HiKOKI UC18YSL39Aフル充電40分
マキタ DC18RC9Aフル充電55分

Q.充電器の「実用充電」とは?

A.バッテリー充電容量の80〜90%で完了とする機能です。

リチウムイオンバッテリーは容量が少ない時に充電電流を多くして急速充電できますが、充電完了間際には少ない充電電流でしか充電できず、充電時間が長くなってしまいます(CCCV充電)。充電完了間際にあえて充電完了の表示を行うことで、充電時間を見かけ上早くしています。

マキタの充電器は「実用充電」と「フル充電」で表示を分けていますが、HiKOKIの充電器は充電完了のLED表示後もしばらく充電を続けています。

Q. バッテリーが故障する原因は?

A.ほとんどの故障が水侵や過熱連続使用による劣化・セルアンバランス。稀にセルの初期不良も。

リチウムイオンバッテリーは通常の使用下では故障しませんが、バッテリーにダメージを与える使い方を続けると劣化が進み故障の原因となります。

例えば、水に濡れたバッテリーをそのままケースに収納して内部のセルが錆びさせてしまったり、高出力工具を同じバッテリーで使い続けて過負荷・高温状態になると劣化が急速に進行してしまいます。保管場所についても、直射日光の当たる場所を避けて温度が上がらない場所で保管します。

Q. バッテリーの容量はどうやって計算する?

A. 電圧[V]×電流時[Ah]を積算した電力時[Wh]がバッテリー容量を表します。電流時[Ah]が同じでも電圧が異なると容量が変わるので注意が必要です。

電動工具バッテリー容量の多くは電流時[Ah]で表されていますが、正しくは電力時[Wh]がバッテリー容量を表す正しい値になります。

電力時[Wh]は1時間その電力を供給し続けられる性能を表し、18V, 5,0Ahのバッテリーの場合だと90Whになり90Wの電力を1時間供給できます。この場合、18V, 5.0Ahバッテリーと36V, 2.5Ahバッテリーのバッテリー容量は同じ90Whとなります。

仮に、18V, 5.0Ah(または36V, 2.5Ah)のバッテリーを900Wの製品に使用すると6分間放電できる計算になります。

Q. 14.4Vと18Vバッテリーは相互利用できる?

A. 多くの電動工具はバッテリーの違いに対応しません。ラジオやライトなど電動工具以外の製品であればほとんどの製品が対応しています。

14.4Vと18Vの電圧の違いでも、実際の電動工具に加わる電力は大きく変化します。バッテリーや工具を加工すれば電圧の異なるバッテリーでも装着できるようになりますが、定格を大きく超えてしまうため電動工具が故障します。

電動工具 バッテリー 14.4Vに18V 18Vに14.4V

Q. 14.4Vバッテリーの展開が止まった理由は?

A. 電動工具メーカーの製品展開の都合によるところが大きいです。

最近の電動工具新製品は14.4V製品が販売されないことも多く、18V専用製品が多くなっていますが、その理由には下記の点が考えられます。

  • 元々14.4Vバッテリーはニッカド12Vの互換を想定して考えられた電圧で、14.4Vである必要性はなかった
  • 電動工具としては電圧の高い方が優位点が多く、容量・性能的に有利な方に移行したかった
  • 14.4Vと18Vの2仕様の同時販売はコスト負担になっていたため一本化したかった
  • 電動工具メーカー側が、ユーザーの手持ち電動工具は18Vに移行したと判断した

Q. 電動工具のバッテリーからスマートフォンの充電はできる?

A. USB変換アダプタを装着すれば電動工具のバッテリーからUSB電源が取れます。

マキタ(Makita)
¥3,893 (2024/11/20 02:46:03時点 Amazon調べ-詳細)

Q. バッテリーの残量が少なくなるとどうなる?

A. 残量が少なくなると電動工具の出力が低下します。

Q. 容量の大きい新バッテリーはいつ販売する?

A. リチウムイオンバッテリーの高出力・高容量バッテリーの展開は停滞が続いており、今後の展開は不明です。

電動工具向けリチウムイオンバッテリーは高出力方面に性能向上が進んでおり、容量方面では停滞が続いています。

容量の大きいバッテリーはバッテリーサイズの大型化が必要で、バッテリーセルメーカーも大型セルへの研究開発にシフトしているようです。

関連記事:10.0Ahの大容量バッテリー販売も間近か、電動工具用バッテリー今後の展開

Q. 充電器はエンジン発電機で使える?

A. 基本的に使用できませんが、HiKOKIのUC18YDLはエンジン発電機対応です。

エンジン発電機は電圧の変動が大きく、負荷によって充電器に供給される電圧が変わりインバーターを破損させてしまうため使用は厳禁です。

ただし、HiKOKIのUC18YDLはエンジン発電機に正式対応しています。(後継モデルのUC18YDL2は未確認)

Q. 車の12Vで使える充電器はある?

A. マキタからは「DC18SE」、HiKOKIからは「UC18YML2(廃盤)」が販売されています。

Q. 充電式工具をAC100Vで使えるアダプタはない?

A. HiKOKIからACアダプタET36Aが販売されています。

Q. 電動工具のバッテリーはどれくらい使える?

A.各メーカーで寿命の判断は異なるものの、概ね半分程度の容量になった時点で寿命と判定しています。電動工具の場合、1,000~1,500の充放電サイクルとしています。

Q. 電動工具のバッテリーは修理できる?

A.修理不可です。保護基板やバッテリーセルは修理部品の供給がなく、交換にも特殊な治具や工程を必要とします。

Q. バッテリーのコントローラーは交換できる?

A.市販されている互換コントローラー基板は純正品と異なるので、付け替えは推奨できません。

Q. バッテリーセルは交換できる?

A.交換できません。セル毎の特性を揃えられないのと、バッテリー間の接合ができないためセルの入れ替えは推奨できません。

電動工具のバッテリーは複数本のセルを束ねた組電池によって構成されており、組電池の製造にはセル特製の均一化工程と、スポット溶接によるセル間の接合作業が必要になります。

テスターによる測定やハンダ付けでは電動工具のバッテリー品質を満たせないため、交換できたとしても故障の再発や製品事故の原因となってしまいます。

Q. 使用していないのバッテリーが使えなくなる原因は?

A. 過放電状態での長期保管や、直射日光の当たる所での保管などはバッテリーを使用していなくても劣化を進行させます。

使用していない場合でも、リチウムイオンバッテリーの劣化は進みます。直射日光の当たる場所などでは加熱によって劣化が進み、電池残量が0の状態で長期保管すると充電できない状態になってしまいます。

また、電源ボタンが押されたままやトリガーを引いたままバッテリーが装着されていると、過放電保護が働かない場合もあるので、長期間バッテリーを使用しない場合は工具から取り外して保管します。

Q. バッテリーが出火した場合の対応は?

A.バッテリーセルが一度出火すると、発火していない他のセルに熱が伝わり、連鎖的に発火・破裂するため安全な所に避難します。

電動工具のバッテリーは、バッテリー内部に複数本のセルを内蔵しており、1本のセルが発火すると他のセルに熱が伝わり連鎖的に発火・破裂します。その際にバッテリーの中身が飛散したり、破片が飛んで周囲に被害が広がるので、まずは安全な所に避難してバッテリーの破裂が全て収まるのを待ちます。

火の勢いが落ち着いたら大量の水や消火器で消化し、119番通報して発火の状況や状況を伝えます。その後、製造メーカーや消費者ホットラインに連絡を行います。

Return Top