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2023年12月8日

RIGOL DL3031 プログラマブル直流電源負荷をレビュー、バッテリーのテストに活躍

RIGOL DL3031 プログラマブル直流電源負荷をレビュー、バッテリーのテストに活躍

本記事で紹介する製品は、専門知識を有し安全かつ適切に取り扱いできるユーザー向けに紹介しております。本記事によって生じた故障または損害等に関しては一切の責任を負いかねます。

RIGOL プログラマブル直流電源負荷 DL3000シリーズ

リチウムイオンバッテリーの放電特性やACアダプタ評価のために電子負荷装置を購入しました。

今回購入した電子負荷は、中国の測定器ブランド RIGOLのDL3000シリーズです。

RIGOLと言えば、最近何かと話題になっている多い測定器ブランドです。電子デバイス関連の展示会での出展をよく見かけるようになり、動画配信者とのコラボ企画なども積極的に行うことで頭角を現しているブランドです。

今回購入した電子負荷 RIGOL DL3000シリーズは容量と精度が異なる4仕様の製品がラインナップしており、今回の記事では最大容量 350W/精度1mA仕様のDL3031をレビューします。

製品仕様 (40Vmaxモデル AS001G比較)

製品名 DL3021 DL3021A DL3031 DL3031A
外観
最大電流 200W 350W
スタティックモード CC, CV, CR, CP
ダイナミックモード 連続, パルス,トグル
ビルトイン バッテリー, OCP(過電流保護), OPP(過電力保護)
短絡試験機能 あり
最大入力電圧 150V
最大入力電流 40A 60A
電圧分解能 1mV 0.1mV 1mV 0.1mV
電流分解能 1mA 0.1mA 1mA 0.1mA
重量 7.58kg 7.58kg 7.58kg 7.58kg
寸法 239×442×157mm 239×442×157mm 239×442×157mm 239×442×157mm
本体価格 98,000円(税別) 138,000円(税別) 148,000円(税別) 198,000円(税別)

バッテリーテストに便利な容量計測や自動停止を搭載

今回RIGOLの電子負荷 DL3000シリーズを選んだ理由こそ、バッテリーモードを搭載している点です。

バッテリーモードで放電すると自動的に電力容量や電流容量を算出してくれるので、公称容量の確認やバッテリーの劣化による容量現象度合などを簡単に計測できます。

さらに、このバッテリーモードでは色々な放電終了条件を設定でき、指定電圧への到達や電流容量、タイマーによる条件停止なども指定できます。

とあるAGV用のバッテリーを放電テストしているところ。放電容量や放電時間を自動的に表示してくれる機能は色々と助かる。指定した容量に達したら放電停止する条件も指定もできるので、特定の容量の時の充電回路の挙動再現などにも活用できる。

このバッテリー容量測定は、積算測定機能搭載のパワーメータや高価格帯の電子負荷装置を使う必要があるのですが、350Wクラスのこの価格帯の製品では珍しい機能だと思います。

放電中の波形がリアルタイムで見れる

電子負荷のLCDパネルに放電動作中の波形を表示することができます。

LCDパネルの解像度は高くないので放電波形の簡単な確認しかできませんが、それでもバッテリー放電中の電圧波形や負荷接続状態の異常の有無などを確認できるので便利です。

USB接続でパソコンからのリモート操作にも対応、LAN接続も可

DL3000シリーズはUSB/RS232-C/有線LAN端子を搭載しており、PCとの接続して使うこともできます。専用ソフトのUltra LoadをインストールすればPC上での電子負荷の操作やモニタリングを行うことができます。

ビジュアルパネル機能も搭載しており、本体をそのまま捜査しているのと同じような操作感でリモート操作することもできます。ただし、負荷ON状態でパネルを画面を閉じると強制的に負荷OFFに移行してしまうので注意が必要です。

電子負荷のフロントパネルそのままのビジュアルパネル。実際の本体を捜査しているのと同じように操作できる。リモートで操作しているときなどには便利。このフロントパネルを閉じると負荷OFF状態になるので注意。

ちなみに、リモート状態は上部のLOCALボタンを押すことで切断できますが、PC上でクライアントソフトが起動したままだと自動接続してしまうため注意が必要です。

ログ保存やCSV出力もできるが色々とクセが強い

DL3000シリーズはPC接続時やUSBメモリに放電中のレコードを記録する機能を備えています。放電電圧波形や放電レート特性図を取るのに便利な機能です。

とは言え、CSV出力するときに困っている仕様なのですが、PC接続ソフトのUltra Loadによるログ出力機能だとWhとmAhの記録が行われない欠点があります。この場合、USBメモリを使ったレコード保存ならWhとmAhが記録されるので、基本的にはUSBメモリを使って記録を取った方が良さそうです。

また1秒間に4回の頻度で記録を取る仕様のようなのですが、time列に小数点以下の記載が無かったり、Wh/Ahの記録は1秒に1回しか更新されなかったりと色々とクセの強いログ出力機能のようなので、この辺りはユーザーの工夫が必要になりそうです。正直、CSV出力周りの挙動は何とかしてほしいと思っています。

PC接続 Ultra Loadを使って取得したCSVデータ。測定の日時は記録されるが、小数点以下の記録が無くWhとmAhの表示も無くなる。
こちらはUSBメモリに記録したCSVデータ。日時は無くなり記録時間のレコードになる。WhとmAhは記録されるが4レコード中の2~3回に1回しか更新されていない。

リモートセンシング端子を搭載

リモートセンシングは、出力端子から電圧検出する部分の抵抗値による電圧降下を補償する機能です。この価格帯の製品としては珍しい機能ではないでしょうか。

原理上、電源配線はどんなに配線が太くても配線自体の抵抗値や接触抵抗の存在により、設定値と実際の数値はずれてしまうのですが、このリモートセンシング端子を接続することでその影響を補償できます。

機能も多くてコスパにも優れる電子負荷、UI周りはクセが強め

RIGOLは中国の計測機器ブランドなので色々と未知な部分もあるのですが、最近は展示会でも見かけることが多く、菊水や高砂、テクトロなどの著名メーカーの計測機器とは比較にならないほどコストパフォーマンスなので、前々から気になっているブランドでした。

昨今の中国系低価格測定器ブランドとしてSIGLENTやOWONなどもよく見かけるのですが、電子負荷を取り扱っている点や手配のし易さからRIGOLを選びました。

RIGOLのオシロスコープなどは電源端子にUSB Type-Cを採用するなど新しい試みの製品も多く、色々な意味で革新的な測定器ブランドになりつつあると思っています。

さてさて、今回購入した電子負荷についてですが、これまでバッテリーの容量測定はUSB PDテスタのAVHzY CT-3が便利に使えていたので、100W以下かつ20V-5A以下の用途であればUSB PDテスタで対応できていたのですが、電動工具向けの36Vバッテリーパックやリチウムイオンセルのハイレート放電の検証なども行いたかったので今回新しく電子負荷を新調したものでした。

実際の使用感としては、少し触っただけでもリモートソフトやファーム的な部分も含め色々とクセの強そうな電子負荷装置だと思う部分はあるものの、実用的には問題ない程度だと思っています。今後はDL3031を使ってバッテリーの評価に使う予定なので、色々と遊んでみたいと思います。

まとめ

RIGOL プログラマブル直流電源負荷 DL3000シリーズ

VOLTECHNO製品評価 4.5 out of 5 stars (4.5 / 5)

RIGOLのプログラマブル電子負荷 DL3000シリーズ

良い点
  • 多機能でコストパフォーマンスが良い
  • バッテリーモードを搭載
  • RS-232C/USB/LANの接続機能を搭載
  • 放電波形を電子負荷単体で見れる
悪い点
  • CSV出力周りが微妙

DL3021(電力容量 250W/分解能 1mV)

DL3021A(電力容量 250W/分解能 0.1mV)

DL3031(電力容量 350W/分解能 1mV)

DL3031A(電力容量 350W/分解能 0.1mV)

RIGOL プログラマブル電子負荷 DL3000シリーズ

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