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2021年5月12日

USB PDの規格(仕様)違反とは何か?問題点などを解説

USB PDの規格(仕様)違反とは何か?問題点などを解説

よくあるUSB PD規格違反例

USB PD最初の規格であるUSB PD Rev:1.0は、2012年に発表されました。

USB PDは、USB 3.1やUSB Type-Cコネクタへの対応のような大きな変更を何度も受け、現在のUSB PD Rev:3.0に至るまでにも混乱がありました。

その影響でUSB PD仕様が曖昧なまま開発が進められた製品も多く、故意または過失両方のケースで規格に適合しないUSB PDデバイスが流通しています。

USB PDとそれに関連する細かな違反例全てについて言及するとキリがないので、今回の記事では代表的なUSB PD規格違反例を紹介します。

USB PDが定めるパワールールを守っていない

USB PDの規格違反例として最も多いのが、USB PDで定められているパワールールが守られていない違反です。

USB PD供給機器は、複数の電圧出力仕様に対応するため、最大出力に応じた出力電圧/電流値についての仕様が定められいます。具体的には、下記の表・図に従った出力仕様に対応しなければいけません。

出力\電圧5V9V15V20V
15W以下(出力電圧÷5)A
15Wを超え27W以下3A(出力電圧÷9)A
27Wを超え45W以下3A3A(出力電圧÷15)A
45Wを超え100W以下3A3A3A(出力電圧÷20)A
Universal Serial Bus Power Delivery Specification R3.0,V2.0+ECNs[画像参考]

例えば、USB PD対応を謳う最大出力18Wの充電器であれば「5V/3Aと9V/2A」の2仕様の出力に対応しなければならず、45Wであれば「5V/3Aと9V/3Aと15V/3A」の3仕様の出力に対応できなければいけません。

この違反例で代表的な例としては、15Wを超えるUSB PD充電器でありながら、5V出力が2.4Aまでしか対応していない例です。また有名どころでは、Switch付属のACアダプタもUSB PDの規約違反に当たります。

任天堂switchに付属する純正ACアダプタ(39W)。このACアダプタはUSB Type-Cプラグを搭載しUSB PDのプロトコルに準じているが、この出力仕様のUSB PD充電器の場合、5V/3A, 9V/3Aの出力にも対応しなければならない。

本来、このルールがあれば、ユーザーはパワールールによる電圧や電流の存在を意識しなくても、USB PD充電器の出力電力値を見るだけで適切な機器を選べるメリットがあるはずです。しかし、このルールが守られていないと電圧や電流出力仕様まで確認しなければならなくなります。

例えば、スマホの充電時の最大受電力が15Wなら、15W以上出力できるUSB PD充電器を選べばよいことになります。

この場合、USB PDで15W受電を行うには2通りの手段があり、5V-3.0Aと9V-1.66Vのどちらかが選ばれることになります。

5V-3.0Aで15W受電するスマホに対し、USB PD充電器の出力が5V-2.4Aまでしか対応していないと、スマホ側は15W充電ができず、充電速度が遅くなるなどのトラブルが発生します。

スペック表記とPDOの内容が異なる

本体に刻印されているスペックとPDOが異なる問題です。

従来のACアダプタは、ハード的な最大出力仕様や保護停止の値を製品ラベル記載するのが一般的です。

USB PDの場合、最大出力の仕様はハードウェア側ではなく、ネゴシエーション後のPDOによってソフトウェア的に出力状態を選択する仕様になっているため、ソフトウェア仕様上のPDOを製品ラベルに記載する必要があります。

USB Type-CでUSB PD以外の急速充電規格に対応している

USB Type-Cは、USB-IFが定める方法以外で供給電圧を変動させることを禁止しています。簡単に言えば、USB Type-CコネクタはUSB PD以外で電圧を変動させることを認めていないと考えれば良いでしょう。

5Vより高い電圧を加える独自規格としては、Qualcomm QuickChargeやHUAWEI Smart Charge Protocol、Samsung AFCなどが該当します。また、これらの独自規格に同時対応するAnker PowerIQなどの給電技術もこの違反に該当します。

とあるUSB PD充電器の急速充電対応リスト。USB PD18W対応のほか、QuickCharge2.0/3.0に対応している。

USB PD以外の独自充電規格で充電を行うと、100W対応USB PDケーブルなどに搭載されているeMakerチップを破壊する可能性があります。

eMaker内蔵のケーブルでQuickChargeなどの電圧を変動させる独自規格急速充電を行うとケーブルを破壊する可能性がある。

この問題点の詳細に関しては、Nathan K氏のレポートやhanpen氏による追証で言及されています。

形状だけType-Cコネクタを採用

厳密にはUSB PDではなくUSB Type-Cの運用違反に当たりますが、USB PDに関連する違反例としては最も冒涜的な規格違反です。

先述の通り、USB Type-CはUSB PD以外の方式での給電電圧変更を認めていませんが、このACアダプタは従来の丸型プラグをType-C形状に置き換えただけで、充電制御のための通信や保護を一切入れていない製品です。

このACアダプタの実態は従来と同じ丸型のACアダプタと同等の製品なのですが、形状はUSB Type-Cなので、スマホやタブレットなどにも接続できてしまいます。誤って接続すると機器を破損します。

これはなかなか根の深い問題です。

USB PDは設計指針の扱いであり、法的拘束力はなくUSB PDに適合しないことによる罰則もありません。

本来、規格違反の責任の所在は「勝手なACアダプタを作ったメーカー」や「確認しなかったユーザー」側にありますが、このような製品がある程度まで普及してしまうと「普及品に対して、機器メーカーが対策を行わなかったことが原因」として責任の矛先が変わってしまう場合があります。

この場合、業界の暗黙として対応策を組み込むことになりますが、事情を知らない新規参入メーカーによる製品事故の再発や、規格化や法規制の適応が遅れる原因にも繋がり、結果的に製品事故の多発や人身災害、コストアップのような形でユーザーが不利益を受けることになります。

USB PDコントローラICの普及により、先述までのUSB PD違反例は少なくなってくると予想されますが、この「形状だけType-C」問題の背景は開発側による「USB PDの意義を根本的に理解していない」や「採算重視の故意的な仕様」を原因としているため、最も根の深い問題と認識しています。

USB充電規格の混沌の果てに生まれたUSB PD

USB PD以前の給電規格はメーカー毎の独自給電規格が乱立し、極めて複雑な状態でした。

USBは本来パソコンの通信規格として策定された規格ですが、広く普及したこととその汎用性によって、万能の5V電源として転用されることも多くなりました。その結果、USB給電規格は全貌が把握できない程複雑化しました。

USBの電源としての成り立ちは、1996年のUSBの立ち上げの時まで遡ります。

当時はパソコンの通信規格として策定された規格であり、バスパワーとして到底される機器はマウス・キーボード等の周辺機器に限られ給電能力は5V-500mA(2.5W)しか対応してませんでした。

その後、USBが広く普及すると想定されていた給電能力では不足することになり、メーカーが独自の方式でUSB給電能力の拡張が始まってしまいます

現在の主要な急速充電規格だけでもApple2.4A(Apple 12W)・Samsung2Aなどさまざまな独自規格が乱立しており、Qualcomm QuickChargeのような給電電圧そのものを変更する規格まで登場しているため、USB給電方式の全貌は複雑化しています。

給電規格として普及が進んでいるコネクタでありながら、メーカーが勝手に充電規格を乱立してしまったため、乱立する充電規格や製品事故回避への対応がコストになり、USB端子を給電コネクタとして使用すること自体が避けられるようになりました。

ただし、最近は機器メーカー側も開き直りの傾向があり、ネゴシエーションも行わないままVBUS端子から直接5Vを取る仕様にし、過電流検知や定電流制御も入れないままにするなど、機器側の状態も混沌としています。

このような中、USB充電規格の統一と汎用的な給電規格として期待されているのが、次世代給電規格のUSB PDです。

USB PDの登場によって、各社複雑化した急速充電規格の統一による利便性の向上と丸型プラグに代表される独自ACアダプタの撤廃など、価格・環境面などで大きな革新が起きると期待されています。

この記事を書いた人

VOLTECHNO編集部
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