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2021年4月11日

USB PDの規格(仕様)違反とは何か?問題点などを解説

USB PDの規格(仕様)違反とは何か?問題点などを解説

よくあるUSB PD規格違反例

USB PD最初の規格であるUSB PD Rev:1.0は2012年に発表されました。

ただし、USB 3.1やUSB Type-Cコネクタへの対応のような大きな変更が何度もあり、現在のUSB PD Rev:3.0に至るまでにも混乱がありました。

その影響でUSB PD仕様が曖昧なまま開発が進められた製品も多く、故意または過失両方のケースで規格に適合しないUSB PDデバイスが流通しています。

USB PDとそれに関連する細かな違反例全てについて言及するとキリがないので、今回の記事では代表的な事例や製品事故高い規格違反例を紹介します。

USB PDが定めるパワールールを守っていない

USB PDの規格違反例として最も多いのが、USB PDで定められているパワールールが守られていない違反です。

USB PD供給機器は、複数の電圧出力仕様に対応するため、最大出力に応じた出力電圧/電流値についての仕様が定められいます。具体的には、下記の表・図に従った出力仕様に対応しなければいけません。

出力\電圧5V9V15V20V
15W以下(出力電圧÷5)A
15Wを超え27W以下3A(出力電圧÷9)A
27Wを超え45W以下3A3A(出力電圧÷15)A
45Wを超え100W以下3A3A3A(出力電圧÷20)A
Universal Serial Bus Power Delivery Specification R3.0,V2.0+ECNs[画像参考]

例えば、USB PD対応を謳う最大出力18Wの充電器であれば「5V/3Aと9V/2A」の2仕様の電圧出力に対応しなければならず、45Wであれば「5V/3Aと9V/3Aと15V/3A」の3仕様の出力に対応できなければいけません。

この違反例で代表的な例としては、15Wを超えるUSB PD充電器でありながら、5V出力が2.4Aまでしか対応していない例です。また有名どころでは、Switch付属のACアダプタの出力仕様などもUSB PDの規約違反です。

任天堂switchに付属する純正ACアダプタ(39W)。このACアダプタはUSB Type-Cプラグを搭載しUSB PDのプロトコルに準じているが、この出力仕様のUSB PD充電器の場合、5V/3A, 9V/3Aの出力にも対応しなければならない。

本来、このルールがあれば、ユーザーはパワールールによる電圧や電流の存在を意識しなくても、USB PD充電器の出力電力値を見るだけで適切な機器を選べるメリットがあるはずです。しかし、このルールが守られていないと電圧や電流出力仕様まで確認しなければならなくなります。

例えば、スマホ側の受電が15Wの場合、USB PDの規格上15W以上出力できるUSB PD充電器を選べばよいことになります。例えば、18W出力のUSB PD充電器を使えば5.0V-3.0A出力を備えているはずです。

もし、この18W出力のUSB PD充電器の出力が5V-2.4Aまでしか対応していないと、スマホ側は15W充電ができず、充電速度が遅くなるなどのトラブルが発生します。

スペック表記とPDOの内容が異なる

本体に刻印されているスペックとPDOが異なる問題です。

従来のACアダプタは、ハード的な最大出力仕様や保護停止の値を製品ラベル記載するのが一般的です。USB PDの場合、ネゴシエーション後のPDOによってソフトウェア的に出力状態を選択する仕様になっているため、ソフトウェア仕様上としてのPDO上の情報を製品ラベルに記載する必要があります。

USB Type-CでUSB PD以外の急速充電規格に対応している

USB Type-Cは、USB-IFが定める方法以外で供給電圧を変動させることを禁止しています。簡単に言えば、USB Type-CコネクタはUSB PD以外の給電規格を認めていないと考えれば良いでしょう。

5Vより高い電圧を加える独自規格としては、Qualcomm QuickChargeやHUAWEI Smart Charge Protocol、Samsung AFCなどが該当します。また、これらの独自規格に同時対応するAnker PowerIQなどの給電技術もこの違反に該当します。

とあるUSB PD充電器の急速充電対応リスト。USB PD18W対応のほか、QuickCharge2.0/3.0に対応している。

USB PD以外の独自充電規格で充電を行うと、100W対応USB PDケーブルなどに搭載されているeMakerチップを破壊する可能性があります。

eMaker内蔵のケーブルでQuickChargeなどの電圧を変動させる独自規格急速充電を行うとケーブルを破壊する可能性がある。

この問題点の詳細に関しては、Nathan K氏のレポートやhanpen氏による追証で言及されています。

形状だけType-Cコネクタを採用

厳密にはUSB PDではなくUSB Type-Cの運用違反に当たりますが、USB PDに関連する違反例としては最も冒涜的な規格違反です。

先述の通り、USB Type-CはUSB PD以外の方式での給電電圧変更を認めていませんが、このACアダプタは従来の丸型プラグをType-C形状に置き換えただけで、充電制御のためのプロトコルや保護を一切入れていない製品です。

このACアダプタの実態は従来と同じ丸型のACアダプタと同等の製品なのですが、プラグはUSB Type-Cを搭載しているため、スマホやタブレットなどにも接続できてしまいます。誤って接続すると機器を破損させてしまいます。

これはなかなか根の深い問題です。USB PDの規格は設計指針のような扱いであり、法的な拘束力はなくUSB PDに適合しなかったことによる法的な罰則例もありません。

本来、規格違反の責任の所在は「勝手なACアダプタを作ったメーカー」や「確認しなかったユーザー」ですが、このような製品がある程度まで普及してしまうと「普及している製品に対して、機器メーカーが壊れないように対策を行わなかったことが原因」として責任の矛先が変わってしまう場合があります。

この場合、業界の暗黙として設計対策や検証が行われることになりますが、こうなると往々にして規格化や法規制の適応が遅れる原因にも繋がり、製品事故や人身災害、コストアップのような形でユーザーが不利益を受けることになります。

USB充電規格の混沌の果てに生まれたUSB PD

USB PD以前の給電規格は、メーカー毎に独自給電規格が乱立し、極めて複雑な状態になっています。

USBは本来パソコンの通信規格として策定された規格ですが、広く普及したことと汎用性により、万能の5V電源として転用されることも多くなりました。しかし、なぜここまでUSB給電規格は複雑になってしまったのでしょうか。

USBの電源としての成り立ちは1996年の電源規格の成立の時まで遡ります。

当時はパソコンの通信規格として策定された規格であり、給電能力は5V-500mA(2.5W)しか対応してませんでした。

その後、USBが広く普及すると当初想定されていた給電能力では不足することになり、メーカーが独自の方式でUSB給電能力の拡張を始めてしまいました。

主要な急速充電規格だけでもApple2.4A(Apple 12W)・Samsung2Aなどさまざまな独自規格が乱立しており、Qualcomm QuickChargeのような給電電圧そのものを変更する規格まで登場しているため、USB給電方式の全貌は複雑化しています。

現在では、給電規格として普及が進んでいるコネクタでありながらメーカーが勝手に充電規格を乱立してしまったため、製品事故の可能性や乱立する充電規格に対応することがコストとなり、USB端子を給電コネクタとして使用する製品は限られています。

ただし、最近ではUSB機器メーカー側も開き直りの傾向があり、ネゴシエーションも行わないままVBUS端子から直接5Vを取る仕様にし、過電流検知も入れないままUSB機器を展開するなど、機器側の状態も混沌としています。

このような中、USB充電規格の統一と汎用的な給電規格として期待されているのが、次世代給電規格のUSB PDです。

USB PDの登場によって、各社複雑化した急速充電規格の統一による利便性の向上と丸型プラグに代表される独自ACアダプタの撤廃など、価格・環境面などで大きな革新が起きると期待されています。

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