2017年8月から展開されたHiKOKI(ハイコーキ)のマルチボルトバッテリーは18Vと36Vに両対応した電動工具用バッテリーです。今回は、マルチボルトバッテリーの種類と違いについて詳しく解説します。
目次
HiKOKI 主力の電動工具シリーズ「マルチボルト」
現在のHiKOKI(旧日立工機)主力の電動工具シリーズは、36Vバッテリーで動作する「マルチボルト」シリーズです。マルチボルトシリーズに使用するバッテリーは、従来の主力製品だった18Vシリーズへの装着にも対応し、古い電動工具にも装着できる高い互換性を備えているのが特徴です。
2020年6月現在、マルチボルトシリーズに対応するバッテリーは6種+ACアダプタ1種の計7製品が展開されています。
マルチボルトバッテリーの命名は販売順アルファベット
18Vリチウムイオン以前の日立工機製バッテリーの命名規則は
「バッテリー形状」+「電圧」+「容量」+「その他機能」でしたが1、
マルチボルトバッテリーになってからは
「バッテリー形状」+「電圧1」+「販売順アルファベット」+「電圧2」+「その他機能」と容量の表記が無くなっています。
「販売順アルファベット」は製品が販売した順にA,B,C,,,と繰り上がり、一番初めに販売されたマルチボルトバッテリーが「BSL36A18」、その次に販売されたバッテリーが「BSL36B18」です。
「その他機能」には、付加機能が搭載されたバッテリーにアルファベットが追加されます。2020年6月時点ではBluetooth通信機能を搭載したマルチボルトバッテリーに「B」が追加されています。
マルチボルトバッテリーが装着できない18V電動工具
マルチボルトバッテリーは、接点端子の構造やバッテリーサイズの変更などがあり、一部の18V電動工具製品への装着を非対応にしています。
同じ製品名であっても日立工機ブランドとHiKOKIブランド(販売時期の違い)によってマルチボルトバッテリーへの装着対応が異なっている製品もあるため、マルチボルトバッテリーを18V電動工具に装着する場合には確認が必要です。
製品 | 製品名 | BSL36A18 | BSL36B18 |
高速ドリル | D18DBHL | 〇 | × |
ロータリハンマドリル | DH18DBL DH18DBDL | 〇 | HiKOKIブランドのみ |
ディスクグラインダ | G18DBBVL G18DBBAL G18DBVL G18DSL | 〇 | HiKOKIブランドのみ |
クリーナ | R18DSAL | 〇 | × |
ニブラ | CN14DSL CN18DSL | 〇 | HiKOKIブランドのみ |
シャー | CE14DSL CE18DSL | 〇 | HiKOKIブランドのみ |
マルチツール | CV18DBL | 〇 | HiKOKIブランドのみ |
チップソーカッタ | CD18DBL | 〇 | × |
集じん丸のこ | C18DYBL | 〇 | × |
丸のこ | C18DBL | 〇 | × |
丸のこ | C18DBAL C18DSL | 〇 | HiKOKIブランドのみ |
ラジオ付きテレビ | UR18DSML | 〇 | × |
ラジオ | UR18DSL UR18DSL2 UR18DSAL UR18DSDL | 〇 | × |
扇風機 | UF18DSDL | △ | ? |
高圧洗浄機 | AW18DBL | 〇 | × |
充電は従来の18V充電器でOK
マルチボルトバッテリーは従来の18V充電器による充電に対応しています。
マルチボルトバッテリーはバッテリー単体で見ると、18Vバッテリーを1つのバッテリーパック内に2つ組み込んだバッテリーなので、そのまま18Vでの充放電にも対応しています。
36Vへの切り替えは工具側の配線端子によって実現されているため、マルチボルト36V工具に装着される瞬間までは18Vバッテリーとして振舞います。
従来36V電動工具シリーズには非対応
マルチボルトバッテリーは36V電動工具と18V電動工具の装着に対応していますが、マルチボルト以前の36V電動工具に対して互換性がありません。
現在のマルチボルト36Vと旧36Vの変換アダプタなども販売されていないため、日立工機時代に販売された旧36Vシリーズの電動工具を持ってる方は注意が必要です。
「BSL36A18」 マルチボルトシリーズの主力バッテリー
マルチボルトシリーズ主力のバッテリーとして展開しているのが「BSL36A18」です。
BSL36A18はマルチボルト電動工具のセット販売品で展開されていて、マルチボルトを使用するほぼ全てのユーザーがこのバッテリーを使用しています。
最近ではマルチボルトシリーズの普及を図るべく、さまざまなキャンペーンが実施されていて2、他社メーカーの主力展開バッテリーと比較しても割安なバッテリーなのが特徴です。プロ用途ではじめて電動工具一式を買うのであれば最もおすすめできるバッテリーです。
電圧 | 18V-36V |
容量 | 18V-5.0Ah 36V-2.5Ah |
重量 | 0.7kg |
寸法 | 116×69×76mm |
定価 | 24,500円 |
販売年 | 2017年 |
特徴 | 普及バッテリー |
「BSL36B18」 大容量マルチボルト、18Vで最大容量
マルチボルトシリーズの大容量マルチボルトバッテリーとして展開されているのが「BSL36B18」です。
従来の電動工具バッテリーには18650サイズと呼ばれるセルが搭載されていますが、BSL36B18では国内初の21700サイズの大型セルを採用し、国内電動工具用バッテリーではトップクラスの容量を実現しています。
18V電動工具にも装着できるので18V動作時には8.0Ahと圧倒的な大容量を持ち、高い連続作業性と高出力性能を兼ね備えた国内電動工具市場最強のバッテリーです。
基本的には別売りの単体で購入するバッテリーですが、DH36DSA(2WP)やUV3628DA(WP)のようにBSL36B18のセット仕様で展開される製品もあります。
大型セルの搭載によってバッテリーサイズが若干大きくなり一部の電動工具では装着には非対応なので、使用する電動工具の確認が必要です。
電圧 | 18V-36V |
容量 | 18V-8.0Ah 36V-4.0Ah |
重量 | 0.95kg |
寸法 | 134×75×83mm |
定価 | 28,000円 |
販売年 | 2018年 |
特徴 | 大容量・高出力 |
「BSL36C18」 手軽な低容量バッテリー
マルチボルトバッテリーの第3段として追加されたのが、低容量・低価格なマルチボルトバッテリー「BSL36C18」です。
18V電動工具の3.0Ahにあたるバッテリーで、BSL36A18から約20%近く価格設定を抑えた普及版のバッテリーです。定価-20%に対して容量比-50%とコストパフォーマンスが悪いので、BSL36C18を購入する必要はほとんどありません。
実際の販売価格も割高で「本体セット販売が行われていない」「数が出ないため販売店価格競争が起こらない」「BSL36A18の販売キャンペーン」などさまざまな要因によって、製品展開を失敗させてしまったバッテリーです。
追い打ちをかけるように2年保証までも対象外にしており、利点が1つもないこのBSL36C18はコレクション以外の用途がありません。
電圧 | 18V-36V |
容量 | 18V-3.0Ah 36V-1.5Ah |
重量 | 0.7kg |
寸法 | 116×69×76mm |
定価 | 20,000円 |
販売年 | 2019年 |
特徴 | 低価格・低容量 |
「BSL36A18B」 Bluetooth搭載の無線連動対応バッテリー
電圧 | 18V-36V |
容量 | 18V-5.0Ah 36V-2.5Ah |
重量 | 0.7kg |
寸法 | 116×69×76mm |
定価 | 25,500円 |
販売年 | 2020年 |
特徴 | Bluetooth搭載 |
バッテリーにBluetoothコントローラを搭載して、全ての電動工具と集じん機の無線連動を実現したのが「BSL36A18B」です。
無線連動とは、コードレス電動工具と集じん機の連動運転に対応させる機能で、類似する機能ではマキタのAWSが対応します。バッテリー側にBluetoothコントローラを搭載したことによって、理論上全ての電動工具が無線連動に対応できるようになり、マキタAWSを超える無線連動シリーズラインナップが実現できました。
それ以外のバッテリー的な仕様に違いは無く、BSL36A18と同一のスペックです。
発売したばかりの2020年6月時点では、BSL36C18と同じ理由で「本体セット販売が行われていない」「数が出ないため販売店価格競争が起こらない」などの理由から、BSL36C18と同じく割高なバッテリーになっています。
出荷台数が少ないので販売店間の価格競争もなく割高なバッテリーですが、セット販売での仕様追加や販売キャンペーンで値下がりが期待されるバッテリーです。
無線連動対応 集じん機
「BSL36B18B」 無線連動対応の大容量版[販売予定]
電圧 | 18V-36V |
容量 | 18V-8.0Ah 36V-4.0Ah |
重量 | – |
寸法 | 134×75×83mm |
定価 | 29,000円 |
販売年 | – |
特徴 | Bluetooth搭載 |
Bluetooth搭載のバッテリーを大容量にした「BSL36B18B」も販売予告されています。
BSL36A18Bと同じく、既存のマルチボルトバッテリーにBluetoothコントローラを搭載したバッテリーです。容量・出力に関してはBSL36B18と同じ仕様になっています。
「BL36200(SA)」 マルチボルトに対応する背負式電源
背負い式電源「BL36200」の(SA)仕様では、マルチボルトに装着できるアダプタが付属しています。
背負い式によって大量のリチウムイオンセルの搭載が可能になり、容量は36Vの大容量21Ah(756Wh)を実現。国内他社を含めた現行36Vの単一バッテリーで最大容量のバッテリーです。
BL36200はもともと旧36V電動工具シリーズの製品なので、他のマルチボルトバッテリーと扱いが異なる部分もあり「18V電動工具に非対応」「充電器は要36V対応」などの違いに注意が必要です。
電圧 | 36V |
容量 | 36V-21Ah |
重量 | 電池本体 6.3kg アダプタ 0.5kg キャリア 1.0kg |
寸法 | 電池本体 330×250×109mm |
定価 | 172,000円 |
販売年 | – |
特徴 | 背負い式 |
「ET36A」 マルチボルト電動工具で使えるACアダプタ
マルチボルト36電動工具を、AC電源から直接動くようにできるのがACアダプタ「ET36A」です。
コンセントから電動工具へ直接給電できるので、AC電動工具と同じようにコードレス工具を使うことができます。バッテリーの再充電や需要の問題を一気に解決する画期的な製品です。ET36Aはマルチボルト36V給電専用で18V電動工具には使用できません。
バッテリー装着時とは一部動作が異なり、ブレーキ搭載グラインダはブレーキが効かなくなってしまうなどの相違点もあります。ブレーキ付きグラインダの使用が必須の現場などでは注意が必要です。
電圧 | 36V |
消費電力 | 1,050VA |
重量 | アダプタ 0.8kg ボックス 1.2kg |
寸法 | アダプタ 83×134×75mm ボックス 100×185×78mm |
定価 | 34,800円 |
販売年 | 2018年 |
特徴 | ACアダプタ |
マルチボルトシリーズ電源 機能比較一覧表
製品名 | BSL36A18 | BSL36B18 | BSL36C18 | BSL36A18B | BSL36B18B | BL36200(SA) | ET36A |
外観 | |||||||
バッテリー容量 | 36V-2.5Ah 18V-5.0Ah | 36V-4.0Ah 18V-8.0Ah | 36V-1.5Ah 18V-3.0Ah | 36V-2.5Ah 18V-5.0Ah | 36V-4.0Ah 18V-8.0Ah | 36V-21Ah | – |
出力 | 1,080W | 1,440W | – | 1,080W | 1,440W | – | 消費電力 1,050VA |
特徴 | 普及バッテリー | 大容量バッテリー | 廉価バッテリー | 無線連動対応 | 無線連動対応 大容量バッテリー | 背負式バッテリー | ACアダプタ |
セルサイズ | 18650 | 21700 | 18650 | 18650 | 21700 | 18650 | – |
Bluetooth 無線連動 | × | × | × | 〇 | 〇 | – | AC連動 |
重量 | 0.7kg | 0.95kg | 0.7kg | 0.7kg | – | 電池本体 6.3kg アダプタ 0.5kg キャリア 1.0kg | アダプタ 0.8kg ボックス 1.2kg |
寸法 | 116×69×76mm | 134×75×83mm | 116×69×76mm | 116×69×76mm | 134×75×83mm | 330×250×109mm | アダプタ 83×134×75mm ボックス 100×185×78mm |
定価 | 24,500円 | 28,000円 | 20,000円 | 25,500円 | 29,000円 | 172,000円 | 34,800円 |
ネット実売価格 | 10,000円 | 21,000円 | 18,000円 | 20,000円 | 25,000円(予想) | 130,000円 | 25,000円 |
販売年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 未定 | – | 2018年 |
購入リンク | Amazon 楽天市場 Yahoo | Amazon 楽天市場 Yahoo | 楽天市場 Yahoo | 楽天市場 Yahoo | – | 楽天市場 Yahoo | Amazon 楽天市場 Yahoo |
脚注
- 例:18V/6.0Ahバッテリーの場合「BSL1860」
- マルチボルト電池がもう一個付いてくるキャンペーン