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なぜ、日立工機は社名変更したのか。新ブランド「HiKOKI」との違い

なぜ、日立工機は社名変更したのか。新ブランド「HiKOKI」との違い

2017年に日立工機は日立グループからKKRの傘下へと変わりました。それに伴って2018年6月に正式に社名とブランドの変更が行われ、電動工具に冠するブランド名は「HiKOKI」と代わりました。しかし、1年以上経過した現在でも「日立」電動工具のブランドイメージは根強く残っています。

SNS界隈でも「日立工機の社名変更を初めて知った」と言う声が多く聞かれるので、今回は日立工機がHiKOKIへ社名変更して1年近く経過した点も含め、その経緯と現在の日立工機について解説します。

日立工機の社名変更、大きな切っ掛けは「日立再編」

HiKOKI logo

現在のHiKOKIと呼ばれる電動工具ブランドは、2018年5月まで販売されていた「日立工機」の電動工具ブランドを継承した”工機ホールディングス”の新しい電動工具ブランドです。日立工機=HiKOKIと考えてもらえば大丈夫です。

これまでの日立工機は、日立製作所の連結子会社として、日立グループで電動工具の開発・販売を行っていました。しかし、この体制が大きく崩れる事となったのが、親会社である日立製作所が2015年前後から始めた「日立再編」です。

現在の日立製作所は、製造業中心の「総合電機メーカー」から、Lumadaなどの「IoTソリューション」を代表とした情報産業へ事業をシフトしています。その日立再編の流れとして、製造部門を持つ日立子会社や本社事業は切り離される事となり、日立工機を含む数多く日立の子会社が売却される事となりました。

この「日立再編」の流れを受け、日立工機は2017年1月に日立グループから脱退と米投資会社の「KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)」の傘下となる事を表明しました。

現在でも日立再編の動きは続いており、直近では、日立建機や日立金属などの名門子会社なども売却検討に入ったと報道されています。

新生「工機ホールディングス」が目指す”独立”

2017年3月には株式の公開買い付けが行われ、日立工機は米国の投資会社「KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)」の資本下となり、東証一部の上場企業から非上場企業となりました。その後、2018年6月には「工機ホールディングス」へ社名変更を行っています。

日立工機の買収に入札した企業はいくつかありましたが、その中で最終的な合意に至ったのは「企業価値を高めた後に売却」して利益を上げるプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)と呼ばれる投資会社「KKR」です。

工機ホールディングスはKKR売却直後から売却・買収ではなく”離脱“や”自立“などのフレーズを多用しています。これは推測となりますが、あくまでも日立工機は日立製作所から売却されたのではなく、自ら進んで日立資本から脱退し、マキタのような”独立“企業となるために、独立経営路線を歩みやすいKKRをパートナーを選んだものと推測されます。

「日立」ブランドを使えなくなった影響

日立グループを離脱したことで、これまで使用していた「日立」ブランド及び「日立工機」ブランドは使用できなくなりました。その、日立グループ離脱によって策定されたのが「HiKOKI」ブランドです。

日立グループの離脱による影響はブランドに留まらず、販売ルートの1つである日立特約店も影響を受ける事になりました。販売店までのルートが変更になった店舗もいくつかあるようです。ただ、一般ユーザーはこの点について気に掛ける必要はありませんでいた。ブランド変更についても、かつての日立工機ブランドが使用できなくなっただけであり、バッテリーの互換性などは全く同じであり、修理サポートなども日立工機の時代と変わらず受ける事ができます。

新ブランドの「HiKOKI」は、日立時代を表す”HI”と日立工機の”KOKI”を組み合わせた無難なブランド名であり、これ以外の名前の候補についてはほぼ無かったものと思いますが、ユーザーからは「日立工機とは思わなかった」「HIOKIと見間違える」など、無難な名前にした割に比較的不評な意見が見られるのは非常に残念な点と言えます。

また、米国市場では「Metabo HPT」ブランドを採用していますが、DIY愛好ユーザーからは欧州市場の「Metabo」ブランドと混同してしまう点を指摘されており、metaboブランドとmetaboHPTでバッテリーの互換性がない点なども含め、こちらも否定的な意見が目立ちます。

“HiKOKI”になって、日立工機時代から変化した点

日立工機からHiKOKIにブランド変化して約1年が経過し、様々な視点から動向を観察していましたが、ブランド変更後の工機HDに、良くも悪くも大きく変化した点は見受けられませんでした。

良い点を挙げるなら、ブランド変更や流通販路の変更などに様々な苦難があったはずですが、販売店やユーザーの視点で見る限り、取扱中止や在庫切れなど目立ったトラブルに見舞われる事はありませんでした。コンシューマ市場の製品である電動工具が、ユーザーの購買に大きな影響を与えることなくブランド変更を完了させたのは驚くべき事だと思います。

ただ、HiKOKIになってからの製品展開は日立工機時代から変わっておらず、「18V電動工具のマルチボルト化」と「他社追随」を踏襲した路線を歩んでおり、積極的な製品開発や新分野への製品投入などには大きな変化がなかった印象を受けます。特に、HiKOKIデビューイベント時には「開発や生産に日立による制約がなくなった」とも発言していましたが、日立工機時代からも家電方面の製品展開自体は行われており、逆にHiKOKIになってからの製品展開は縮小している点に疑問が残ります。

一方、広報活動等の細かな点では数多くの新しい戦略が見られ、各種SNSでの広報が行われるようになった点や、マッチングアプリ「助太刀」への出資、中国への直販店展開などが進められており、新しい戦略は着実に進められているようです。

厳しい局面が続く工機ホールディングス

2018年の10月1日に華々しいデビューを飾った工機ホールディングスと新ブランドのHiKOKIですが、その後の足取りは順調とは言えないようです。非上場した事もあり詳細な業績を知ることはできませんが、官報や公告などを参照すると下記のようなネガティブ寄りのニュースが目立ちます。

  • 単体売上高763億円(前年比 -8.05%) 営業利益 ▲43億9200万円赤字転換
  • 資本金減少 -45億5166万3891円( 2019年5月9日 電子公告 )
  • エンジン機器の生産終了( 2019年7月16日 ニュースリリース )

2017年の日立離脱時には「2020年度に連結売上高1.5倍の3,000億を目指す」と強気の発言を繰り返していた工機HDですが、2018年度の決算では、売上高前年割れ・赤字転換となり、成長経営にブレーキがかかる形となりました。特に、ブランド変更や広報戦略の経費によって赤字転換となったのは差し置いても、PEファンドであるKKR資本下において、売上高が前年比割れとなってしまったのは今後の経営計画に相当な影を落としたものと推測されます。ただ、これはあくまでも単独決算であり、非公開の連結決算では売上を伸ばしている可能性も考えられます。

しかし、これは工機ホールディングスへのブランド変更から1年目の結果であり、日立工機から継承するマルチボルトシリーズの優秀さや、今後も続く工機HDの販売戦略に対しては大きな影響を与えるものではないと考えられます。

今後も、ユーザー目線に立った魅力的な製品開発や、今後予定している500億規模のM&Aの実施などによって、大きく成長を続けるであろう工機ホールディングスの動向は見逃せません。

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