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2020年11月16日

日立工機が社名変更した理由、新ブランドHiKOKI誕生の背景

日立工機が社名変更した理由、新ブランドHiKOKI誕生の背景

日立工機は2017年に日立製作所からKKRグループへと移り、2018年6月に正式に社名とブランドの変更が行われ、電動工具に冠するブランド名は「HiKOKI」と代わりました。日立工機は長年慣れ親しまれた工具ブランドを、なぜHiKOKIに変更したのか、日立製作所との資本関係はどうなるのかについて解説します。

日立工機の社名変更、大きな切っ掛けは「日立再編」

日立製作所ロゴ

現在の電動工具ブランドHiKOKIは、日立工機の事業を継承した”工機ホールディングス“が使用している電動工具ブランドです。

日立工機は、日立製作所の連結子会社として日立グループ内で電動工具の開発・販売を行っていました。そんな長年続いた日立製作所との関係が大きく変わる切っ掛けになったのが、日立製作所が経営改革で進めている「日立再編」です。

日立製作所は、製造業中心の「総合電機メーカー」から、Lumadaなどの「IoTソリューション」を代表とした情報産業へ経営改革を進めています。この日立再編の流れによって製造部門を持つ本社事業や日立子会社はグループから離脱し、日立工機を含む数多く日立の子会社の売却を進めています。

この「日立再編」の流れはいくつかの段階を経て新興しており。日立工機の売却は、投資家市場で「第二次日立再編」と呼ばれてる時期の2017年1月に日立グループからの脱退を表明しています。

日立製作所の売却以降、現在の日立工機は米投資会社の「KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)」の完全子会社となり、工機ホールディングスと社名を変えて経営を続けています。

日立工機社名変更スケジュール

新生・工機ホールディングスが目指す自立・自律路線

2017年3月に日立工機の株式の公開買い付けが行われ、日立工機は米国の投資会社「KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)」の100%子会社になり非上場化しました。その後の2018年6月には「工機ホールディングス」へ社名変更を行っています。

日立工機の買収に入札した企業はいくつかありましたが、その中で最終的な合意に至ったKKRは、企業価値を高めた後に売却して利益を上げるプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)と呼ばれる投資会社です。

工機ホールディングスは、KKR売却直後から売却・買収ではなく”離脱“や”自立“などのフレーズを多用しています。日立工機の立場は、日立製作所から売却されたのではなく、自ら進んで日立傘下から脱退し、独立経営路線を歩みやすいKKRを経営パートナーに選んだものと推測されます。

日立ブランドを使えなくなった影響

日立工機からHIKOKIへ

日立グループを離脱したことで、これまで使用していた「日立」ブランド及び「日立工機」ブランドは使用できなくなりました。日立グループ離脱によって新たに策定されたのが「HiKOKI」ブランドです。

日立グループの離脱による影響はブランドに留まらず、主要な販売ルートである日立特約店も影響を受ける事になりました。

一般ユーザーは日立ブランドからHiKOKIブランドに変わった影響を受けておらず、かつての日立工機ブランドが使用できなくなっただけで、バッテリーの互換性などは全く同じで修理サポートなども日立工機の時代と変わらず受ける事ができます

HiTACHIからHIKOKIへ

新ブランド名の「HiKOKI」については、日立時代を表す”HI”と日立工機の”KOKI”を組み合わせたブランド名であり、これ以外の名前の候補についてはほぼ無かったものと思いますが、ユーザーからは「日立工機とは思わなかった」「HIOKIと見間違える」など、無難なブランド名でありながら比較的不評な意見が見られるのは残念な点と言えます。

HITACHIからmetaboHPTへ

米国市場では「Metabo HPT」ブランドを採用していますが、DIY愛好ユーザーからは欧州市場の「Metabo」ブランドと混同してしまう点を指摘されており、metaboブランドとmetaboHPTでバッテリーの互換性がない点も含め否定的な意見が目立ちます。

HiKOKIになっても、日立工機時代から大きな違いは無い

日立工機からHiKOKIにブランド変化して約2年が経過し、さまざまな視点から動向を観察していましたが、ブランド変更後の工機HDに目立った変化を感じることはできませんでした。

良い点を挙げるなら、ブランド変更や流通販路の変更などで困難があったはずですが、販売店やユーザーの視点で見る限り、取扱中止や在庫切れなど目立ったトラブルに見舞われる事はありませんでした。プロ向け産業製品でありながらコンシューマ的な流通販路を持つ商材で、ユーザーの購買に大きな影響を与えることなくブランド変更を完了させたのは驚くべき事だと思います。

悪い点では、HiKOKIになっても製品展開や経緯戦略そのものに日立工機時代からの違いがなく、「18V電動工具のマルチボルト化」と「他社追随」を踏襲する従来通りの開発が続けられています。期待されていた新製品開発や、新分野への製品投入などに大きな変化はなく、HiKOKIブランドの知名度をを押し上げる商材の不足が続いています。

特に、この1年の間は、新製品の投入よりも過去製品のマイナーチェンジ(S)仕様の展開に力を入れており、製品ラインナップ数で先行するマキタとの差は開き続ける一方の状態が続いています。

HiKOKIブランド移行時に発表された拡充予定製品。既存18V製品のマルチボルト36V化は順調に進んでいるが、新製品開発や新分野への製品投入は停滞している。

HiKOKIデビューイベント時には「開発や生産に日立による制約がなくなった」とも発言していましたが、日立製作所グループ時代からテレビやクリーナーのような家電方面の製品展開は行われており、逆にHiKOKIになってからプロ向け製品に絞った製品が展開されています。園芸・清掃・家電分野の製品開発はほぼ行われなくなったため、当初発言していた拡充戦略に対して疑問が残ります。

広報活動等の細かな点では数多くの新しい戦略が見られ、今まで行われなかった各種SNSの広報が活発に行われるようになり、マッチングアプリ 助太刀への出資、中国への直販店展開なども進められており、新たな販促活動が進められているようです。

先行き不透明な工機ホールディングス

2018年の10月1日に華々しいデビューを飾った工機ホールディングスと新ブランドHiKOKIですが、その後の経営は順調とは言えません。

非上場企業になったため詳細な業績は開示されていませんが、日立グループ脱退以降、売上減及び事業撤退に関する動向・報道が目立ち、売上高の減少に歯止めが効かない状態が続いています。

2017年度(96期) 2018年度(97期) 2019年度(98期)
単体売上高 830億 763億円 693億円
連結売上高 1,912億円 1,891億円 非開示
単体営業利益 15億 ▲44億 ▲4億円
資本金 180億 180億 134億
従業員数 連結 6,446名
単体 1,370人
(2018年3月31日時点)
連結 6,839名
単体 -名
(2019年3月31日時点)
連結 6,254名
単体 1,446名
(2019年12月31日時点)
その他動向 東証1部上場廃止 エンジン機器の生産終了・工場閉鎖1 遠心分離機事業を独エッペンドルフ社へ売却2

2017年の日立離脱時に「2020年3月期には連結売上高1.5倍の3,000億を目指す」と強気の発言と共に事業構造改革をスタートさせた工機HDですが、KKR資本下経営の初年度とも言える2018年(97期)の連結決算では売上前年割れ・単体赤字を計上。続く2019年(98期)単体決算でも売上前年割れ資本金の減資100億の特別損失による赤字決算を計上しています。

当初見通していた経営計画に対し、工機HDの掲げる経営戦略は売上減を招き経営上の大きな問題に直面することになりました。

ブランド変更や広報戦略の経費によって赤字転換となったのは差し置いても、売上高の前年比割れが続くのは致命的な失態で、工機HDの経営計画に相当な影を落としているものと推測されます。

売上高3,000億の目標額は当初報道の「500億円規模のM&A」を伴って達成する目標値だったものと見込んでいますが、現在まで工機HD主導による企業買収の報道はありません。

最新の工機HDの会社概要。日立製作所離脱以降、工機HDは売上減・資本金減・従業員減が続いている。この情報は公式のものだが、公式HPの企業情報欄には反映されていない。
参考:Company Profile | koki-holdingsパソナ採用ページ

日立製作所の資本下ならこの状態であっても経営悪化との評価には至りませんが、現在の工機HDはPEファンドによる、売上増を前提としたLBOスキームで買収3されており、企業価値を減少させる売上高の減少は、企業体制に大きな影響を与える可能性があります。

2024年3月にはmetabo買収と上場廃止時の特別配当に使われた貸借契約の返済期限を迎えます。4この処理方針によってはこの2~3年のうちに再び大きく動かざるを得なくなるでしょう。

工機HD動向 参考リンク

脚注

  1. 工機ホールディングスは電動工具および空気工具に注力します|工機ホールディングス
  2. 工機ホールディングスの遠心分離機事業と“himac ”ブランドをエッペンドルフ社へ譲渡に合意|工機ホールディングス
  3. 買収資金を銀行から借り入れ、その借金をM&A対象会社に背負わせる
  4. 資金の借入に関するお知らせ|工機HD
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