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2023年12月27日

電動工具メーカー・ブランド徹底解説&業界動向ガイド【2021年版】

マキタ

企業名株式会社マキタ
本社所在地愛知県安城市
設立1938年(昭和13年)12月10日
売上収益連結:6,083億3千1百万円(2021年3月期)
時価総額1兆7千億円(2021年8月時点)
資本金242億561万円
事業電動工具、園芸用機器、エア工具、家庭用機器等の製造・販売
従業員数連結 17,090名
単独 2,958名
企業戦略幅広い製品の充電式化・新市場開拓に強み

マキタの製品開発指向性

プロ向け電動工具5 out of 5 starsDIY向け電動工具3.5 out of 5 stars
プロ向け園芸機器5 out of 5 stars家庭向け園芸機器4 out of 5 stars
空気工具4 out of 5 stars充電式清掃機器5 out of 5 stars
アウトドア製品5 out of 5 stars家電製品5 out of 5 stars

マキタは「充電製品メーカー」を掲げ、ありとあらゆる製品の充電化によって「1つの分野に依存しない」事業拡大を進めています。

園芸機器や清掃機器の分野においても電動工具に匹敵するブランド成長を成し遂げており、今後も新市場の開拓による盛業が見込まれます。

充電式園芸機器に関しては、電動工具で培ったバッテリー・モーター技術によって他社の充電式園芸機器に対して2歩も3歩も進む高性能で信頼性の高いシリーズラインナップを揃えており、充電式園芸機器においては造園・農業界のスタンダードメーカーになりつつあります。

充電式電動工具に採用しているバッテリーは価格が高く、企業体質的にアフターサポート体制などの高コスト要因を数多く持つため、DIYや家庭向けグレードのような低価格製品は苦手としていますが、それでも十分に他社と渡り合える製品ラインナップとブランド力を有しており、他の追随を許さないトップメーカーと言えるでしょう。

画像引用:2020年3月期 決算説明会

主力の18Vシリーズと次世代40Vmaxの2シリーズ展開

マキタが主力とする製品シリーズは充電式18Vシリーズです。

国内最多の311モデルを揃える圧倒的なラインナップと2本挿しで36Vで動作できる高い汎用性を備えており、プロユーザーに寄り添った営業体制によって、圧倒的なユーザーシェアを獲得し業界トップクラスの地位を獲得をした国内不動の電動工具シリーズです。

2019年から展開が始まった40Vmaxシリーズについては、既存18Vシリーズから買い替える必要が薄く、36Vバッテリーを必要とする製品も少ないため、18Vからの完全置き換えには約10年程度の時間を要すると予想します。プロ向け電動工具市場においては苦戦するシリーズになるでしょう。

40Vmaxはシリーズ発表以降も継続的に製品投入を行っている点に対しては好感を持っており、園芸機器のようなエンジン製品の受け皿として高いポテンシャルがあります。園芸機器を中心に長い時間をかけてマキタの次世代シリーズとして主力製品置き換わっていくと予想しています。

製品展開力と営業力に強みを置くトップメーカー

マキタの持つ大きな強みこそ、業界トップクラスの製品展開力と圧倒的な営業力です。

先述した通り、マキタはありとあらゆる製品の充電式化を模索しており、電動工具から園芸・清掃・アウトドア・家電に至るまで充電式製品のリーディングカンパニーとして業界を先導する存在です。

その製品展開力を常に支えてきた原動力こそ、マキタの営業力です。

マキタ営業は、昭和33年1月のマキタ初の電動工具 携帯用電器鉋の発売から、常に販売店制度の確立、宣伝、実演、情報収集、アフターサポートなどを重視してきた歴史があり、国内の電動工具販売において先駆者とも言える存在です。1

現在においても、プロ向け電動工具を取り扱うプロショップや金物屋でマキタ製品を置いてない店舗はほとんど存在しません。最近では、カタログよりも先に新製品が店舗に並んでいることも珍しくなく、マキタ営業のフットワークの軽さと物流網に驚きを隠せません。

奇抜な製品展開やイメージキャラクターで話題になることも多いマキタですが、それらを支える「どこにでも製品を置いている」マキタの営業力こそ本来評価するべきポイントになるでしょう。

日本で培ったマキタの営業力は海外市場でも十分発揮されており、DeWALT・Milwaukeeなどの名だたる世界的なブランドとも並ぶ電動工具ブランドに成長している

成長を続け世界に名を連ねるメーカーへ

マキタは主力商材が建設業ユーザーを中心とした電動工具なので、特定のユーザー以外に知名度があまり知れ渡っていない「知る人ぞ知る」企業です。しかし、企業としては上場時価総額トップ100内にも名を連ねる大企業です。

マキタを企業として最も評価できる点は、その経営判断にあります。

2005年以降リチウムイオンバッテリーをいち早く市場に投入し、それを起爆剤とした製品展開を継続的に続けることで早くからユーザー囲い込みとシェアの拡大を実現しており、2020年以降のコロナ経済下でも順調に売上高を伸ばしています。

兼ねてよりマキタは園芸工具市場の進出も進めており、1991年には同社初のM&Aとなる独ザックス・ドルマ―社の買収をはじめ、2007年には富士重工子会社の富士ロビンの完全子会社化なども進められましたが、2020年11月にはマキタ売上構成比の約2%(100億円前後)を占めていたエンジン製品の撤退2を表明するなど柔軟な方向転換を実現しており、環境意識の高まりや脱エンジンの時流を捉え、充電式の園芸・造園機器市場においてもエンジン市場の新たな受け皿としてシェアの拡大を進めています。

マキタの売上高は常に前年比増を続けており、この10年で製造業としては驚異的の売上高2倍を達成している。
画像引用:バフェット・コード

マキタの場合は、主要な顧客の声だけでなく、多様な地域の顧客の声を開発に進めてきており、その結果として「イノベーションのジレンマ」を回避できていると考えられています。3

ただし、優秀過ぎる故にアナリストからは経営目標が「保守すぎる」 4 と声も上がり、DeWALTやMilwaukee・BOSCHのような電動工具事業以外の事業を抱え先進国市場で肩を並べる海外電動工具メーカーと比べると技術開発の面で及ばない点も目立ち、特にITやIoTに関連する技術開発への取り組みは消極的です。

脱日立で攻勢をかける「工機ホールディングス(旧日立工機)」

脚注

  1. 出典 マキタ電機製作所70年史|マキタ電機製作所社史編集委員会
  2. マキタ、エンジン製品の生産終了を発表|VOLTECHNO
  3. 出典 資本財企業による先進国の需要開拓-電動工具企業のマキタの事例研究-|林隆一|神戸学院経済学論集 第49巻第3号
  4. 電動工具のマキタ、利益率「優等生」の物足りなさ|日本経済新聞
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